森友学園問題

国有地問題

森友学園が新設小学校の予定地としたのは、大阪府豊中市の国有地だった。

当該土地は歴史的には1960年代くらいまでは農地や沼地で、その後住宅密集地になっていることが、国土地理院発行の地図から読み取れる。

1970年代以降、大阪国際空港(伊丹空港)の着陸経路の真下付近にあたるこの界隈では、騒音対策として当時の運輸省が民有地を買い上げて補償する施策をとっていた。

個別に買い上げて虫食い状になっていた土地を、1990年代の豊中市の土地区画整理事業によって換地処分で1ヶ所の広大な土地にまとめた。

一方で航空機の性能改善により、騒音補償などの対策で買い上げた土地が不要となり、国土交通省大阪航空局や財務省近畿財務局は土地の処分を検討していた。

豊中市は区画整理事業の中で、国有地を買い取って防災公園として整備したいという構想を持っていた。しかし国から提示された額が高すぎて、国有地の半分しか購入できなかった。当時豊中市が購入できなかった部分が、のちに森友学園問題の舞台になる土地となる。

豊中市が購入を断念したのち、近隣にある大阪音楽大学が学園の拡張用地として購入したいとする申し出をおこなった。しかし大阪音大と国との交渉では、国は土地の価格について「7億円程度になる」として、音大側は資金不足で断念した。

一方で2015年頃、「小学校建設予定」とする看板が現地に出た。「以前に豊中市が購入を断念した国有地なのに?」などと不思議に思った地元の市議や市民が調べたところ、この土地の売買額が「非公開」になっていたことに気づいた。

国有地の売買額は原則公開となっているが、同時期の取引のうち非公開だったのはこの1ヶ所だけだった。市民らは開示請求をおこなったが拒否された。2017年2月、開示を求める訴訟を起こした。

開示訴訟と前後して、朝日新聞が2017年2月、「自分たちも開示請求したが拒否された。しかし周辺取材によると、売買額は1億3000万円前後と推定され、相場よりも大幅に安い」とする記事を出した。朝日新聞の記事により、森友学園問題が大きく動き出すことになった。

国はのちに、売買額は1億3000万円と認めた。根拠については「敷地内からゴミが出てきたので、ゴミ除去費用相当額8億円を差し引いた」としている。しかしゴミの撤去費用は8億円もかからない、過大に見積もられている、値引きありきで額を決めたのではないかという疑惑が浮上している。

森友学園問題・関連年表

朝日新聞2018年3月18日付や大阪府議会の議事録などを元に作成

2006年

  • 7月 森友学園が運営する塚本幼稚園や系列の南港さくら幼稚園で、教育勅語暗唱などを取り入れた教育がおこなわれていると、共同通信経由で全国に配信される。
  • 11月 第一次安倍晋三内閣のもとで「改正」教育基本法が可決。12月より施行される。「愛国心」が強調される。

2007年

  • 森友学園の籠池泰典理事長、教育基本法「改正」を受け、かねてから構想していた小学校設置構想の具体化を検討し始める。
  • 9月26日 安倍晋三氏、1期目の首相を辞任。麻生太郎氏が首相に就任。

2009年

  • 8月30日 総選挙で民主党が大勝。9月に民主党政権になる

2010年

  • 4月 大阪維新の会が結成される
  • 秋頃 籠池諄子氏、南港さくら幼稚園の前を通りかかった小学生に暴行を加えたとして刑事事件となる。

2011年

  • 夏頃 籠池泰典理事長、私立小学校設置基準の緩和を求め、大阪府私学・大学課(当時は知事部局の府民文化部所属)に要望。
    畠成章前大阪府議(故人)、東徹大阪府議(当時、のち維新参議院議員)が関与したとされる。当時の大阪府知事は橋下徹。
  • 11月 大阪府知事選挙・大阪市長選挙で、籠池理事長夫妻は淀川区内の商店街で、維新から出馬した松井一郎大阪府知事候補・橋下徹大阪市長候補が合同でおこなった「桃太郎宣伝」に同行。
    野次馬的な「追っかけ」ではなく、明らかに宣伝参加者のような形での動きをしている籠池夫妻の行動がテレビ局の取材映像に残され、その様子が放送されている。
  • 11月26日 松井一郎大阪府知事が就任。

2012年

  • 2月26日 「日本教育再生機構大阪」の主催で、安倍晋三氏と松井一郎知事をパネリストに招いた「教育再生シンポジウム」が大阪市内で開催される。安倍氏は「教育基本条例」など大阪の教育改革を絶賛。安倍氏サイドと維新がつながるきっかけとなったと指摘された。
  • 4月 大阪府、私立小学校の参入基準を緩和
  • 9月 自民党総裁選挙で安倍晋三氏が総裁に返り咲き。安倍晋三氏が総裁選挙で敗れた場合は、安倍氏一派が自民党を割って維新に合流し、安倍氏を維新党首に迎える構想もあったと伝えられるが、幻に終わる。
  • 12月 総選挙で自民党政権に交代。安倍晋三氏が首相に返り咲き。

2013年

  • 7月8日 森友学園が大阪府豊中市の国有地の取得要望を出す予定と、近畿財務局に連絡
  • 8月13日 鴻池祥肇・元防災担当相の秘書が近畿財務局に電話。土地を購入するまで貸し付けを受けたいとの龍池理事長の希望を伝える

2014年

  • 4月28日 籠池理事長、近畿財務局との打ち合わせ時に、安倍晋三首相の妻昭恵氏と一緒に写った写真を提示。
  • 6月2日 近畿財務局が森友学園に対し、売り払いを前提とした貸し付けに協力すると伝える
  • 9月下旬~10月 通常時は1~2ヶ月に1回程度の知事と私学・大学課との打ち合わせが、森友学園の学校設置認可申請の直前に回数が激増。週数回、日によっては1日2回の頻度で打ち合わせを実施。
    打ち合わせ内容に関する記録は「不存在」として開示されていない。
  • 10月30日 森友学園、学校設置認可申請書類を正式に大阪府に提出。
    学校設置の意向を大阪府に伝えてから、私学・大学課の担当者と必要な書類などについて内々での打ち合わせを重ねて正式提出に至った。
  • 12月1日 豊中市のタウン情報を扱うブログに「野田町に新しい小学校ができるらしい」とする記事がアップされる。(http://www.toyo-2.jp/archives/41587688.html)
    森友学園の学校建設予定地に、同日までに「(仮称)M学園小学校」の「建築計画のお知らせ」看板が掲示されたと、看板の写真付きでブログに掲載。
  • 12月 大阪府私学審議会。森友学園の小学校設置認可について審議。委員からは財政面や土地所有の問題、教育方針などに危惧を示す意見が出て一度保留
  • 12月 私学審での保留の連絡を受けた籠池理事長、旧知の松浦正人山口県防府市長(日本会議・日本教育再生機構に近い教育再生首長会議会長)の紹介で、維新の中川隆弘大阪府議(豊中市選出)に面会。中川氏は学校設置認可状況について私学課に問い合わせ。

2015年

  • 1月8日 産経新聞、森友学園が小学校「瑞穂の國記念小學院」設置を目指していることを記事で紹介。教育勅語暗唱などの学園の教育方針を肯定的に紹介したうえ、安倍昭恵氏がその方針に感銘しているという内容。
  • 1月9日 近畿財務局が森友学園を訪問、土地貸し付けの概算額を伝える。
  • 1月27日 大阪府私学審議会、森友学園の小学校設置について「条件付き認可相当」と答申。
  • 1月27日 平沼赳夫・維新国会議員団代表の秘書が、財務省に対して、森友学園への土地の貸付額が高いから何とかならないかと相談。
  • 2月4日 近畿財務局、10年間の契約で貸し付けをする特例を財務省本省に申請
  • 7月7日 財務省、迫田英典理財局長が着任。土地売買に関する「特例」を中心となって進めたとみられる。
  • 9月3日 安倍首相と迫田理財局長が会談。
  • 9月4日 近畿財務局(大阪市)で、森友学園の建設業者が近畿財務局・大阪航空局と会談。
  • 9月4日 安倍首相が日帰りで大阪入り。読売テレビの番組で安保法制について説明したのち、大阪市内で冬柴鐵三元国交相(故人)の次男(飲食店経営者兼コンサル。りそな銀行勤務経験あり)が経営する飲食店で食事。
  • 9月4日 国土交通省、「平成27年度サステナブル建築物等先導事業」(木造先導型)として、森友学園に校舎建設費用として6200万円の補助金交付を決定。可能な限り木材を使用する方式での校舎建設を図る。
  • 9月5日 安倍昭恵氏が森友学園・塚本幼稚園で講演。小学校の名誉校長就任を発表。

2016年

6月 土地売買契約成立。約8億円の値引き。

2017年

  • 2月 木村真豊中市議らが、土地取引に関する文書が黒塗りになっていたことを不服として、開示を求めて提訴。前後して朝日新聞が一連の疑惑を報道。
  • しばらくは土地問題という角度だったが、学園での児童虐待問題、教育勅語、大阪府の学校設置認可の不審さなどが相次いで発覚。