沖縄県立コザ高校生徒自殺事件

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沖縄県立コザ高校(沖縄市)で運動部主将だった2年の男子生徒が2021年1月に自殺し、背後に部活動顧問の男性教諭からの不適切な指導があったと指摘された事件。

経過

生徒は小学生の頃から当該競技に取り組み、好成績を修めていた。競技を通じてかねてから顔見知りだった顧問教諭が勤務するこの高校に「部活動特別推薦」で入学した。

しかし入学後、顧問教諭は部活動で厳しく指導するような言動を繰り返した。主将になった2020年7月以降、教諭は生徒に対して「主将を辞めろ」「部活動をやめろ」などと繰り返し追及する対応を取った。さらに生徒が大会で好成績を修めると「まぐれだ」・プレーミスに対して「死ね」などといった暴言もあったと指摘されている。

また部活動では、「顧問教諭から頻繁に連絡が来て、迅速に対応しないと叱責されるとして携帯電話を手放せない状態になっていた」「夜中までほかの部員に連絡させられる」「部活動費用を得るために、顧問教諭から古紙回収作業を命じられる。その影響で文化祭のクラス行事に参加できなくなった」など、生徒に負担がかかる状況となっていた。

生徒は2021年1月29日、家族宛の遺書を残して自殺した。自殺前日にも顧問教諭からの叱責があったと指摘された。

生徒の死後、家族から「顧問教諭からの指導が厳しかったのではないか」と指摘があり、また部員からも「この生徒が暴言を受けているのを見た」などと証言があった。

学校・教育委員会の聴き取りに対して教諭は、「部活動を強くしたかった」などとして、「部活動をやめろ」などと生徒に厳しい声かけをしたことを認めたという。一方で「死ね」などの暴言があったと指摘されたことについては「そういう生命にかかわるような発言はしていない」として否定した。教諭は生徒自殺後、部活動顧問を外れて休職したという。

調査委員会の報告書

沖縄県教育委員会は2021年2月、調査委員会を設置して調査にあたった。2021年3月19日付で調査をまとめ、公表した。

生徒の自殺原因について「部活動がストレスになった」「部活動以外のストレス要因は見当たらなかった」と指摘し、部活動での顧問教諭の一連の対応が自殺の引き金になったと指摘した。生徒は入学時に「活動継続確約書」を提出していたことから、部活動を退部すると学校も退学になるという不安から追い詰められ、ストレスが高まったとも指摘された。

顧問教諭の指導についても不適切だったと指摘し、勝利至上主義が背景にあり生徒に過度のプレッシャーを与えたと指摘した。顧問教諭は、生徒とのLINEのやりとりを一部削除していたことも判明した。

顧問教諭は以前にも別の生徒に対して、▼2018年度、教諭が担当する保健体育科の授業中、特定の生徒に対して不適切な声かけをおこない、当該生徒が不登校に追い込まれた。▼2017年度、顧問を務める運動部で、女子部員の鼻の穴に指を入れたり、突然技をかけるなどの行為をおこなった。――など不適切な指導を複数おこなったと指摘され、学校側はその事実関係を把握していたことも指摘された。

生徒の遺族は、「まだ事実関係がわからない部分がある」と訴え、県教委から独立した第三者委員会を設置しての再調査を求めた。沖縄県議会では2021年7月26日、生徒の遺族が出した再調査を求める陳情が全会一致で採択された。玉城デニー知事は「教育委員会と相談しながら対応を検討したい」とした。

沖縄県は2021年8月27日、知事部局で再調査委員会を設置することを発表した。

教諭への処分

沖縄県教育委員会は2021年7月29日付で、「不適切な指導によって生徒を自死に追い込んだ」と判断し、顧問教諭を懲戒免職処分にした。

民事訴訟

生徒の遺族は2023年2月9日、「生徒の自殺は顧問教諭のパワーハラスメントが原因」だとして、沖縄県を相手取り、約1億3900万円の損害賠償を求める民事訴訟を那覇地裁に提訴した。

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