八重山教科書問題

沖縄県八重山教科書採択地区で2011年に実施された中学校教科書採択で、社会科(公民的分野)の採択結果について、地区としての採択結果と、当時地区を構成する一自治体だった竹富町での採択結果が異なった問題。

「同一採択区域では同一の教科書を使用する」という規定と、「採択権限は各教育委員会にある」という規定が衝突した形になった。

背景には、一部の採択地区協議会委員が、強引な方法で右派系社会科教科書を採択させようとしたことが挙げられる。

経過

八重山地区採択協議会では2011年の中学校教科書採択に際して、会長主導で、直前に協議会の規約を唐突に全面改定したり、委員を入れ替えるなど、強引な組織運営をおこなった。

このことで、教育関係者や保護者の間では、育鵬社や自由社の極右系社会科教科書の採択に向けた動きではないかという懸念が広がった。

2011年8月23日の採択協議会では、中学校社会科公民的分野で育鵬社版を選定した。

当時採択地区を構成していたのは、石垣市・竹富町・与那国町の3自治体。石垣市と与那国町の各教育委員会では、協議会での答申通り育鵬社版を採択することにした。その一方で竹富町は2011年8月26日の教育委員会で、町教委の判断として東京書籍を採択することにした。

採択区域管内では同一の教科書を採択することが定められているため、再協議が必要になり、9月6日には管内3自治体の全教育委員が参加した協議会が開かれ、育鵬社を不採択として東京書籍版を採択することを賛成多数で決定した。

一方で採択地区協議会での採択決定も別にあり、また別の法律によって教科書採択権限は各自治体にあることもあり、ねじれが生じる状況が続いていた。

中川正春文部科学相は2011年10月26日、東京書籍版を採択した竹富町に対し、国としては教科書の無償給与をしない方針を表明した。

竹富町は町費での教科書購入も検討したが、「町費を支出すると、教科書無償給与の原則を放棄した文部科学省の不当行為を追認するような形になる」と判断し、町民有志からの寄付で教科書を購入することになった。2012年度には、公民教科書を使用する中学校3年について、7校分23冊が寄付でまかなわれた。

この間に国では政権交代し、安倍晋三内閣が発足した。国からの竹富町への圧力がさらに強まった。2013年になると、文科省は義家弘介政務官(当時)を竹富町に派遣し、竹富町の行為を「違法」として指導に乗り出した。

下村博文文部科学大臣は2014年3月14日、竹富町教育委員会に対し、育鵬社版の中学校社会科公民的分野教科書を使用するよう是正要求をおこなった。

一方で竹富町は、2014年の教科書無償措置法の改正において、教科書採択地区の単位が「市・郡」から「市町村」に改正されたことから、これまで「町」独自では認められなかった単独採択地区に移行することを沖縄県教委に求めた。沖縄県教委も2014年5月21日の教育委員会で、採択地区の分離を決定した。

竹富町では2014年8月、地区分離後初めての教科書採択を実施し、東京書籍版を採択した。