埼玉県大宮市立小学校「教師の児童いじめ」事件

埼玉県大宮市(現・さいたま市)の市立小学校で1992年、5年生の女子児童が、担任だった女性教諭(50代)からいじめを受け、教師のいじめが原因で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した問題。

訴訟では教師のいじめを認定する一方、PTSDとの因果関係は否定した。

事件の経過

当該教諭は1992年度、この女子児童の5年生のクラスの担任になった。しかし1992年5月頃より、教諭はこの女子児童へのいじめを繰り返すようになった。

教諭はこの女子児童を名指しし、クラスの他の児童の前で「暗い」「ブスくれた顔見せるな」「顔も見たくない」「私は(該当の女子児童以外の)36人だけ見てればいい」「(児童の頭を指さしながら)ここが足りない」などと中傷発言を繰り返した。

また教諭は、同じクラスの児童に対して、この女子児童としゃべるな・遊ぶななどと指示した。「あいつとしゃべるのは人間のクズのすることだ」といった暴言もあった。

被害児童と保護者は1992年8月までに学校側に被害を訴えた。校長は事実関係を認めて児童側に謝罪し、学校は1992年9月に担任を交代させた。

しかし担任交代後も、いじめ加害者の教諭の言動に影響を受けたとみられる同級生が、この児童へのいじめを繰り返した。他の児童がこの女子児童を「問題児」と罵ったこともあったという。そのため被害児童は精神的に不安定な状態になった。

教師のいじめが原因のPTSDと診断、民事訴訟へ

被害女性は卒業後も長い間、幻聴や自傷行為などに苦しめられてきた。7年後の2000年になり、「教諭のいじめが原因で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した」という診断が下った。

被害女性は2000年、大宮市と当時の担任教諭を相手取り、総額1000万円の損害賠償を求める民事訴訟を浦和地裁に起こした。

さいたま地裁(審理中に浦和地裁から改称)は2005年4月15日、教諭の発言は「人格や存在意義を否定されたとしか受け取れない」として、教諭の一連の言動をいじめだと認定し、さいたま市(2001年に大宮市と周辺市の合併で発足)に100万円の賠償を命じる判決を出した。一方で教諭個人への賠償請求は棄却された。またPTSDとの因果関係については、卒業から7年経ってから診断されたことを理由にして認定しなかった。