福島県いわき市立小川中学校で1985年、3年の男子生徒がいじめを苦に自殺した事件。遺族側が起こした民事訴訟では、学校側の安全配慮義務が広くとらえられる判決が出た。
経過
福島県いわき市立小川中学校3年の男子生徒は1985年9月26日に自殺した。生徒のカバンからは、「1万5000円とバイク1台を明日までに持ってこい。そうしなければ殴る」などと書かれた脅しのメモが見つかった。
この生徒に対しては、1年の頃からいじめがあり、学校側も認知していたとされている。生徒は同級生からいじめを継続的に受けていた。
生徒は加害生徒から日常的に暴力を振るわれ、金銭を恐喝されるなどした。理科室の掃除中には、水酸化ナトリウム溶液をかけられやけどさせられた。雑草を無理に食べさせられるなどもした。
自殺直前の1985年9月21日には、盗みを強要されて教室を物色中に教師に見つかり、その際にいじめ被害を訴えていた。
生徒が1・2年時の校長(1985年度に他校に転任)は、少なくとも生徒が2年だった時点でいじめの状況を把握していたとされるが、自殺事件発生後の聴き取りに対しては「なかった」と報告をおこなっていた。
3年進級時の担任教諭は、当該生徒の給食費が未納になっていたことに気づいて家庭に問合せ、給食費が恐喝されていたことなどのいじめを把握したが、家庭に対しては「(加害生徒に)気をつけるようにいう。和解させる」などと話していたという。
いじめ加害グループの生徒7人は1985年10月1日、恐喝や暴行の容疑で補導され、書類送検された。いじめの首謀者格だった生徒は少年院送致の処分を受けた。
民事訴訟
遺族側は1986年8月12日、いわき市と加害生徒保護者を相手取り、約8390万円の損害賠償を求める民事訴訟を福島地裁いわき支部に提訴した。
訴訟の際、教員側はいずれもいじめを否定するような証言をおこなった。しかし複数の同級生がいじめの実態を証言した。
加害生徒側とは、1990年8月に和解金500万円を支払う内容での和解が成立した。
福島地裁いわき支部は1990年12月26日、いわき市に対して約1110万円の損害賠償を命じる判決を出した。学校の対応について、保護監督義務責任を広く認定する形で、「いじめの行為者に対する学校側の及び腰の対応がいじめを増長させた」と指摘した。
双方とも控訴せず、一審判決が確定した。