指導死

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生徒指導が引き金となった生徒の自殺は「指導死」という概念で定義されている。「指導死」の定義は以下のようになっている。

【1】一般に「指導」と考えられている教員の行為により、子供が精神的あるいは肉体的に追い詰められ、自殺すること。
【2】指導方法として妥当性を欠くと思われるものでも、学校で一般的に行われる行為であれば「指導」と捉える(些細な行為による停学、連帯責任、長時間の事情聴取・事実確認など)。
【3】自殺の原因が「指導そのもの」や「指導をきっかけとした」と想定できるもの(指導から自殺までの時間が短い場合や、他の要因を見いだすことがきわめて困難なもの)。
【4】暴力を用いた指導が日本では少なくない。本来「暴行・傷害」と考えるべきだが、これによる自殺を広義の「指導死」と捉える場合もある。

この定義によると、狭義の「体罰」を苦にして自殺した事件にとどまらず、直接的な暴力・有形力行使の有無を問わずに、生徒を精神的に追い詰めることで自殺に追い込んだ事例も含まれることになる。

「指導死」に該当すると考えられる主な事例

個別事例は「タグ:指導死」も参照

東京学芸大学附属世田谷中学校(1952年4月)

図画(現在の美術)担当教師が、2年の授業開始時、「1人の男子生徒が始業時の礼でくしゃみをした」として殴り、廊下に連れ出して立たせた。生徒は直後に校舎から飛び降り自殺。

茨城県立取手第二高校(1955年12月)

服装検査の際、2年の女子生徒が、着ていた制服のボタンが外れなかったとして「畜生」と独り言をつぶやいた。男性教師が「自分に暴言を吐かれた」と勘違いして殴る蹴るなどした。生徒は帰宅後、この教師の実名を名指しし「呪ってやる」と記した遺書を残して自殺。

福岡県立田川東高校(1962年9月)

当時3年だった男子生徒が、担任教諭から「体罰」を受け、その直後に「教諭を恨む」とした遺書を残して自殺した。

福島県三春町船引町学校組合立要田中学校(1976年12月)

1976年6月、職員室に保管していた通帳が紛失した事件に関し、3年の男子生徒が盗んだと決めつけて複数の教師がこの生徒をつるし上げて自白を迫る。生徒は無実だった。同年12月には、この生徒が教科書を忘れたことを口実に、教科担当教師が通帳紛失事件を蒸し返して生徒を攻撃。生徒は直後に自殺。

横浜市立並木第三小学校(1985年2月)

5年の男子児童が団地高層階の踊り場から飛び降り自殺。階段の踊り場の消火栓には、「s60.2.16 12.24.32(児童の名前)死去 (担任教諭のあだ名)のバカ」と書き殴られていた。数字は「昭和60年(1985年)2月16日 12時24分32秒」と読め、自殺を決意した児童が決行日時を記したとみられる。

当日、学校での発言を担任教諭から注意されていた。

北海道名寄農業高校(1999年11月)

学習研究発表会に向けて課題研究の指導をしていた教諭が、「生徒寮でテレビを見た」として生徒を殴りつける。生徒は翌日に自殺を図り死亡。

埼玉県新座市立中学校(2000年9月)

2年の男子生徒が「校内で菓子を食べていた」として教諭から指導を受けた。その日の帰宅後、指導を苦にしたと受け取れる遺書を残して自宅マンションから飛び降り自殺。

長崎市立小島中学校(2004年3月)

2年の男子生徒がライターを持っていたとして教師から事情を聴かれた直後、校舎から飛び降り自殺。訴訟では指導と死亡との因果関係を認定した。

埼玉県立所沢高校(2004年5月)

カンニングを疑われた男子生徒が、教師からの事情聴取の直後に自殺。

北海道遠軽町立小学校(2008年4月)

5年時の担任教諭から、算数の宿題で図形の書き直しを2ヶ月以上にわたって命じられる、楽器の居残り練習をさせられるなどした。児童は6年進級時、この教諭が6年でも持ち上がりで担任になると知った直後に自殺。

岡山県立岡山操山高校(2012年7月25日)

野球部員だった2年男子生徒が自殺。野球部監督が、普段からの別の部員への「体罰」を含む威圧的な指導・激しい叱責を繰り返し、生徒はそのことを苦にしていたと指摘される。生徒は一度退部したが、その後同級生に要請されてマネージャーとして部に復帰していた。

新潟県立高田高校(2012年7月31日)

3年の男子生徒が自殺。生徒は自殺直前、所属する部活動に関して批判的とも受け取れる内容をブログに書き込み、状況を把握した顧問教員から当該記事を削除するよう指導を受けていた。

広島県東広島市立中学校(2012年10月)

2年の男子生徒が自殺。1年の頃から、学年担当や部活動顧問など複数の教員から威圧的指導を繰り返し受けていた。当日も「嘘をついた」などと決め付けられて教員から威圧され、部活動顧問からも部活動参加を禁じられるなどした。

北海道立高校(2013年3月)

1年の男子生徒が自殺。所属する吹奏楽部で、顧問教諭から理不尽な叱責を受けたり、顧問教諭がこの生徒について「連絡を取るな」などと部員に指示していたことなどが指摘された。

大阪府立東住吉総合高校(2015年5月)

1年の男子生徒が、授業中に立ち歩き私語をしていた同級生を注意したところ、相手の生徒が逆上してもみ合いになった。その際に学校側は「この生徒が先に手を出した」として約8時間にわたり別室指導をおこなった。生徒は帰宅を許されてから約30分後に自殺。

鹿児島県奄美市立中学校(2015年11月)

1年の男子生徒が、担任教諭から「同級生へのいじめに加担した」と誤認されて執拗に叱責されたのちに自殺。いじめの事実は確認されず、当該生徒が地元の方言で話しかけたことを、同級生が方言の意味を理解できず「悪口を言われた」と誤認したことで行き違いがあったもの。のちに誤解が解けて和解しているにもかかわらず、教諭が叱責した。当該校では「ゼロ・トレランス」に基づく生徒指導をおこなっていたことも指摘された。

広島県府中町立府中緑ヶ丘中学校(2015年12月)

3年の男子生徒が進路面談の際、「1年の時に万引きした」と誤った情報に基づいて、「推薦基準を満たさない」として、志望していた私立高校の専願推薦入試の受験を担任から拒否された。生徒は身に覚えがないと否定したが、担任はその後も繰り返し「万引きをした」と決めつけて対応し、「万引きのことを親に報告する」などと追い詰めた。生徒はその直後に自殺。

生徒は万引きには関与しておらず無実だった。

福井県池田町立池田中学校(2017年3月)

2年の男子生徒が、担任の男性教諭と副担任の女性教諭からの度重なる叱責などを苦にして、校舎から飛び降り自殺。

兵庫県尼崎市立中学校(2017年12月)

2年の女子生徒が自殺。かねてからクラスや所属していたソフトテニス部でいじめを受けていたが、いじめに関連する部活動内でのトラブルの際、学校側は「トラブルの内容は口外しないように」と関係生徒に指導したが、「この女子生徒がトラブルの内容を言いふらした」と誤認した学年担当の教諭がこの生徒を激しく叱責。生徒は叱責直後に自殺。

東京都板橋区・私立中学校(2017年12月)

同校に通っていた1年の男子生徒が自殺。自殺直前の数日間に、「所属していた水泳部で、顧問とのトラブル」「前述水泳部顧問を含む複数の教諭から、校外での盗難事件に関与したと決め付けられて威圧的な対応を受ける」という複数事案があったと指摘され、自殺につながったと指摘される。第三者委員会は、生徒の自殺と指導との因果関係を認定。

岩手県立不来方高校(2018年7月)

バレーボール部員の3年の男子生徒が自殺。バレーボール部顧問の40代の男性教諭が部活指導中にチームを厳しく指導したり、主力選手だったこの男子生徒に対して「自覚が足りない」などと言い立てるなどの行為があったことが確認された。

宮城県工業高校(2018年8月)

1年の男子生徒が自殺。担任教諭から徹夜をしなければ終わらないほどの膨大な量の課題提出を命じられる・罵声を浴びせられる・部活動への参加を禁じられるなどの「指導」が背後にあったと指摘される。

さいたま市立南浦和中学校(2018年8月)

2年の男子生徒が自殺。所属していたバドミントン部で、顧問教諭の指導が威圧的だったなどと指摘された。

鹿児島市立中学校(2018年9月)

3年の男子生徒が自殺。担任教諭から直前に、威圧的な指導を受けたとされる。

茨城県高萩市立中学校(2019年4月)

3年の女子生徒が自殺。所属していた卓球部で、顧問教諭の指導が威圧的だったなどの指摘がある。

熊本市立小学校(2019年4月)

小学校を2019年3月に卒業し中学校に進学したばかりの男子生徒が自殺。2018年度(2019年3月まで)担任だった小学校6年時の担任教諭の暴言や暴行などの不適切指導が自殺の背景にあるのではないかと指摘された。

福岡県・私立博多高校(2020年8月)

剣道部員だった1年女子生徒が、顧問教員からの指導を苦にする書き込みをSNS上に残した直後に自殺。暴力や暴言をともなう指導があったと指摘された。学校側とは訴訟外で和解が成立。

沖縄県立コザ高校(2021年1月)

2年の男子生徒が自殺。当該生徒は所属する部活動で主将を務めていたが、顧問教諭から日常的に暴言をともなう指導があったなどと指摘された。

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