福島県要田中学校生徒自殺事件

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福島県田村郡三春町の三春町船引町学校組合立要田中学校(現在は三春町立三春中学校に統合)で1976年、職員室に保管していた通帳が紛失したことに対し、「学校の通帳を盗んだ」と同校3年の生徒に一方的に言いがかりをつけて当該生徒を自殺に追い込んだ事件。生徒は通帳の紛失に関与しておらず無実だった。

事件の経過

同校で1976年6月、職員室から郵便貯金通帳が紛失する事件があった。

教師らは、1人の3年生男子生徒が犯人だと一方的に決めつけた。当該生徒は授業についていけない傾向があったという。

教師らはこの生徒を校長室に呼び出し、男性教頭(当時47歳)や3年学年主任の男性教諭(当時41歳)ら数人の教諭が生徒を取り囲み、自白を迫った。その際に学年主任が生徒を殴り、生徒は鼻血を出した。また生徒の父親が不在の時間帯を見計らい、別の教諭らがこの生徒の自宅に上がり込んで家宅捜索するなどした。

生徒は脅されたことなどから一度は嘘の自白をさせられてしまったものの、事件の経過や生徒の自白を不自然に感じた家族が学校側に抗議した。そのため一度は、事件の事実関係については曖昧となったまま示談となった。

その後、この生徒とは別人とみられる人物が、紛失した通帳を使用して隣町の郵便局窓口で預金を下ろしていたことが判明した。窓口担当者は「預金を下ろした人物の記憶はない」としたが、窓口に提出された書類の筆跡は生徒の筆跡と異なっていたという。

通帳紛失事件から約半年後の1976年12月1日、社会科担当の教諭が「この生徒が社会科の教科書を忘れた」という口実でこの生徒を図書室に呼び出し、事件を蒸し返して「通帳を盗んだ犯人を知っているだろう。犯人の名前を書け。書かなければ卒業できない」などと恫喝した。

帰宅した生徒の様子を家族が不審に思い、社会科教諭の対応が発覚した。家族は翌日から生徒を欠席させていたが、生徒は1976年12月7日朝、「学校が怖くなった。行きたくない」などと遺書を残し、自宅近くの葉たばこ乾燥小屋で首つり自殺した。

生徒は通帳紛失事件には関与しておらず、無実だったという。

警察は1977年1月31日付で、学年主任を暴行容疑で書類送検した。学年主任は「殴れば本当のことをいうと思った」などと容疑を認めたという。また同日付で、「職員室からなくなった郵便貯金通帳を使い、郵便局から預金を下ろした」として卒業生の県立高校1年生徒を有印私文書偽造と詐欺の容疑で書類送検した。

福島県教育委員会は1977年3月25日、校長の引責辞職を認めた。また同日付で、教頭と学年主任を戒告処分、取り調べに関与した教諭3人を文書訓告処分にした。

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