鹿児島市立中学校生徒自殺事件(2018年)

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鹿児島市立中学校3年だった男子生徒が、2018年9月に自殺した事件。背後には、直前の担任教諭からの叱責があったと指摘された。

経過

当該生徒は2018年9月3日、「夏休みの宿題を提出していない」として、担任の女性教諭(40代)から大声で叱責されるなどの指導を受けた。

当該生徒はほかの生徒ともに教室の前に立たせられた。担任が「いつ提出するのか」などと大声で叱責した。

その後同日午後1時半頃、当該生徒は、担任教諭から職員室に呼び出された。担任教諭は宿題のことを引き続き大声で叱責し、さらに進路のことなどについても触れたという。

担任は約20分にわたって生徒を大声で叱責した。その際に生徒は、涙を流すなどしていた。

生徒はその直後、「家に宿題を取りに帰る」と同級生に話し、カバンを学校に置いたまま学校を飛び出した。

しかし生徒は学校に戻ってこなかった。約4時間後の午後5時半頃、担任教諭は生徒の母親に「生徒が学校にカバンを残したままいなくなった。宿題を提出していないが、家で宿題をしていますか」と電話連絡した。

母親は仕事に出かけていて家にはいなかったので、生徒に連絡を取ったが、つながらなかったという。

午後6時頃に母親が帰宅して家に入ると、生徒が室内で首を吊っていたところを発見した。遺書などはなかったが、生徒は携帯電話で自殺の方法などを検索していたことがわかったという。

生徒が3年に進級した直後、この生徒が母親に「担任教諭が嫌だ」などと話し、母親はそれに対して「社会に出ると馬が合わない人もいるし、今年は友だちと思い出を作ることを重視した方がいいのでは」などと話したことがあったことを、母親が思いだしたという。

またその後も、生徒は同級生とのSNSで、担任に対する不満を投稿していたこともわかったという。

第三者委員会

事件発生直後に学校側が調査をおこなったが、目撃した生徒と教員らの証言に食い違いが見られるなどしたことで、遺族側は第三者委員会を設置しての調査を求めた。

そのことを受け、鹿児島市教育委員会は第三者委員会を設置して調査をおこなった。第三者委員会は2021年6月30日、調査報告書をまとめた。

担任教諭の行為について、「担任の声が大きく威圧的で、『普通の生徒でも萎縮するほどの声量だった』」「大声で責め立てるだけで、改善策を指導したような痕跡は見当たらなかった」などとして、「担任の叱責が自殺の引き金になった可能性は否定できない」と判断した。

大声で威圧して恐怖感を与える指導や、宿題を家に取りに帰らせたなどは、不適切だとした。

また当該校では「スタンプラリー」といわれる、「指導対象となった生徒が、ある教員からの指導を受けた後、別の教員のところに出向いてサインをもらい、別の教員からも次々と指導を受けるシステム」があったことも、生徒に影響を与えたとも指摘された。

さらに、担任教諭の行為とは直接的には別件だが、この事案の直前に、当該生徒が所属していた部活動で問題が生じたことで、部活動の顧問が、部の「連帯責任」として、問題には関与していない当該生徒にも掃除などの罰を科したことも指摘され、その指導も不適切だとした。

保護者によると「第三者調査委員会の報告書では記載されていない内容」として、担任教諭が、校内行事の合唱コンクールで1位を取らないと許さないとばかりに、このクラスだけ朝練をさせるなどして威圧することでクラスの統率を取っていた厳しく居残りをさせるなどの厳しい指導をしていたとも指摘された。

教諭への処分

鹿児島県教育委員会は2021年7月14日付で、担任教諭を戒告処分にした。

当該生徒への当日の行為が対象になったほか、事案発生前の2018年度の夏休み前の職員会議で「夏休み明けには生徒の自殺が起こりやすくなすくなるので、課題提出などについては個人ごとにていねいに指導してほしい」と校長から注意があったにもかかわらず、当該生徒にそのような指導をしていたことが加味された。また、当該校に勤務していた2013年~18年度、大声をだす・机をたたくなどして生徒を威圧する不適切指導をたびたびおこなっていたことも指摘された。

第三者委員会では「指導と自殺との因果関係は否定できない」としたが、弁護士への問い合わせでは、法的に明確な因果関係があるとまでは判断できなかったという事情もあり、「総合的に判断した」として、処分のうちもっとも軽い措置の戒告処分にとどめた。

また当時の校長については、処分決定時点ではすでに退職していたために、管理監督責任を問えないとして、処分対象にしなかった。

民事訴訟

遺族は2023年12月14日、「担任教諭が大声で恫喝するなど不適切な指導をおこなった」などとして、鹿児島市を相手取り、約6800万円の損害賠償を求めて、鹿児島地裁に提訴した。

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