埼玉県川口市立中学校いじめ自殺事件(2019年)

埼玉県川口市立中学校に2016年度に入学した男子生徒が入学当初からいじめを受けて3度にわたって自殺未遂を図り、卒業後の2019年9月にいじめを苦にする遺書を残して自殺した問題。

経過

川口市立中学校に2016年度に入学した男子生徒は、サッカー部に入部した。しかし直後の2016年5月頃から、サッカー部員の同級生や上級生複数名からいじめを受けるようになった。

生徒はサッカー初心者だったこともあり、「下手くそ」「ちゃんと取れよ」などと罵声を浴びせられたり、仲間はずれにされるなどのいじめがあったという。

生徒と保護者はサッカー部顧問教諭や担任教諭に相談したものの、いじめは激化した。生徒は担任教諭に対して、加害生徒の氏名を記した上で「いじめを受けている」と訴える手紙を複数回渡した。しかし担任は取り合わなかったとされる。

1・2度目の自殺未遂(2016年9月・10月)

生徒は2016年9月19日、首つり自殺を図って意識不明になっているところを発見されたが、一命を取り留めた。

自殺未遂の一報を聞いて駆けつけた校長は保護者に対して、生徒の容態を聞く前に「報道には何も話さないように」と発言した。また保護者が「(いじめを訴える手紙を複数回出した)息子のSOSはどう受けとめていますか」と問うと、校長は「あれがSOSですか」と返答したという。

生徒は1度目の自殺未遂後、登校できない状態になった。引き続きいじめ被害を学校側に訴えていた。

生徒は約1ヶ月後の2016年10月26日、「ぼくは、学校のじゃまものなんだ。いじめられたぼくがわるい。学校の先生たちはなにもしてくれない」とするメモを残して、首つり自殺を試みた。一時意識不明になったがその後回復し、一命を取り留めた。

2回目の自殺未遂の際には警察から教育委員会に連絡が行った。そのことを受けて、学校がいじめを調査したが「いじめはなかった」と結論づけた。

3度目の自殺未遂(2017年4月)

2年進級直後の2017年4月10日、生徒は「2年になってもいじめが解決しない。学校も先生も許さない」とするメモを残し、自宅近くのマンションから飛び降りて3度目の自殺を試みた。このときも一命は取り留めたが、頭蓋骨骨折や足の骨折などの重傷を負い、5ヶ月間入院した。足に後遺症を負い、一時は車椅子生活を余儀なくされていたという。

当該校では2017年度に校長が交代し、学校側は3度目の自殺未遂のあとにやっといじめを認めた。しかし被害生徒にとっては、いじめへの対応やその後の学習支援などのケアがないことに対して、対応は相変わらず不十分だと感じていたという。

川口市教育委員会は3度目の自殺未遂から約半年後、1度目の自殺未遂からは1年2ヶ月後の2017年10月になり、いじめを重大事態と認定して第三者委員会を設置した。しかし第三者委員会の設置や調査の事実は被害者側の生徒・保護者には知らされず、直接の聴き取りなどもおこなわれなかったとしている。

一方で川口市教育委員会は、第三者委員会の立ち上げが遅れたことについて、「学校から『保護者から、ことを大きくしないでほしいと要望があった』と報告を受けた」「生徒が聴き取りをおこなえるような状態ではないと判断した」と主張した。

学校側の対応

2018年6月に加害者側の生徒・保護者、学校との話し合いの場が持たれた際には、加害生徒の保護者が「大けがをしたことを他人のせいにするな」と被害生徒の保護者に暴言を浴びせた。立ち会った学校関係者は誰もその発言を制止・注意しなかった。

2018年7月に生徒が学校側にいじめへの対応を問い合わせた際、担任教諭は「いじめは解決できない」と話したという。

これらの経過から、被害生徒は学校や教育委員会への不信感を強めていた。

生徒が自殺

生徒は2019年3月に当該中学校を卒業し、特別支援学校高等部に進学した。進学先の学校については「学校が楽しい」と話し無欠席だった。一方で、いじめの後遺症とみられる形で、精神的に不安定な様子も見せていたという。

生徒は2019年9月8日未明、川口市内のマンションから飛び降りて死亡した。生徒の自宅からは、中学校時代のいじめでの教育委員会の対応を苦にしていると受け取れる内容が記されたメモが見つかった。

メモには「教育委員会は大ウソつき。いじめた人を守って嘘ばかりつかせる。いじめられたぼくがなぜこんなにもくるしまなきゃいけない。僕は、なんのためにいきているのか分からなくなった。ぼくをいじめた人は守ってて、いじめられたぼくは、誰にも守ってくれない。くるしい、くるしい、くるしい、つらい、つらい、くるしい、つらい、ぼくの味方は家族だけ」などと記されていた。