宮城県仙台市泉区の仙台市立館中学校1年だった男子生徒が2014年9月、いじめを苦にして自殺した事件。自殺の事実関係は1年後の2015年に明らかにされた。
事件の経過
仙台市立館中学校1年だった男子生徒は2014年、同級生からのいじめを受けていた。テストの点数が振るわなかったことを馬鹿にされたり、学校を休んだ際には「ずる休み」「仮病」と中傷されるなどした。
学校側はいじめに関係した生徒を指導したが、その後もいじめが続いた。生徒の顔写真を合成したコラ画像がLINEで流されたり、同級生と一緒にショッピングセンターに行ったときには一人だけ置き去りにされるなどした。
生徒は2014年9月21日に自殺を図り、1週間後の9月27日に死亡した。
生徒の遺族は当初は事件の公表を望まなかった。そのため学校側は自殺の事実を伏せ「生徒は転校した」と説明していた。
約1年後に仙台市教委が公表
仙台市教育委員会は11ヶ月後の2015年8月21日、学校名を伏せながら、「市内の中学校でいじめ自殺事案があった」と発表した。
遺族の意向に配慮したとして学校名は匿名で発表されたものの、インターネットなどを通じて事件のあった学校が特定された。
また自然発生的に、学校近くの公園にテーブルで「献花台」を設けるなどの動きも出た。公園を管理する仙台市の担当部署(区役所の公園担当)は「公園に無断で設置するのは法令違反にあたる。自主的な撤去を望む」とする声明を出すなどした。
遺族は公表以降の動きをみて、当初の意向を変え、自殺の事実を公表してほしいと2015年9月に要望した。
仙台市教育委員会はそれを受け、2015年10月、事件のあった中学校は仙台市立館中学校だと明らかにし、学校では生徒や保護者への説明会をおこなった。
第三者委員会の調査
仙台市教育委員会は第三者委員会を設置して調査をおこなった。いじめに関与した加害生徒は11人と判断した上で、2016年3月に提出した答申ではいじめと自殺との因果関係を認定した。
民事訴訟
遺族側は民事調停を申し立てたが不成立となった。
2016年6月、仙台市と加害生徒のうち特に関与の度合いが高いと判断された8人を相手取り、約5500万円の損害賠償を求めて仙台地裁に民事提訴した。日常的ないじめが自殺の原因で、また教員はいじめを把握しながら放置したと訴えた。
仙台地裁では和解を勧告し、2020年3月23日に和解が成立した。和解内容は非公表とされている。
仙台市は2020年6月9日、市が和解金200万円を専決処分で遺族側に支払ったとする報告を、市議会におこなった。
献花台
事件が報道された2015年、学校そばの公園に自然発生的に献花台が設けられ、住民有志が管理する形になっていた。
仙台市は2020年6月、遺族との和解が成立したことを一つの区切りとして、献花台の撤去を求める方針を改めて表明した。2020年6月に通知文書を地元町内会に配布し、2020年7月7日に郡和子市長の記者会見で報道発表した。市長は「生徒への哀悼の念は変わらないが、公園の日常性を回復してほしいという地域からの要望もある」「5年が経った今が一つの節目」と話した。
献花台に供えられている花などの供え物の撤去期限は2020年7月13日とし、14日以降に撤去されていない場合は市が片付けて別の場所で保管するとした。
献花台に花を供えるなどしてきた住民らは2020年7月13日、「仙台市の方針には同意していないが、市が強制的に撤去して倉庫などに片付けられることは耐えられない」として、自主的な撤去をおこなった。住民らは代替案として、いじめ再発防止を訴えるモニュメントの設置を要望している。