新潟県新発田市立中学校いじめ自殺事件

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新潟県新発田市立中学校2年だった男子生徒が2017年に自殺し、背後にいじめが指摘されている事件。第三者委員会は生徒へのいじめがあったと認定したが、新発田市は「個人情報保護」を理由に、加害者の氏名を被害者側に非開示にするなどの異例の対応があった。

経過

新潟県新発田市立中学校2年だった男子生徒は2017年6月25日早朝、自宅で自殺しているところを発見された。

当該生徒は、1年の頃から、消しゴムを投げつけられるなどのいじめを受けていたと指摘された。生徒は自殺の2日前、「自分がいるとクラスの雰囲気が変わる」「クラスではぶられている(仲間はずれにされている)」などと、学校でいじめを受けていたことを家族に訴えていた。

その後の学校側の聴き取りで、複数の同級生が、この生徒を嫌なあだ名で呼ぶ、悪口を言うなどのいじめをおこなっていたことを目撃したと訴えた。いじめは生徒は1年だった2016年秋ごろから続いていたとされる。

自殺した生徒は2017年5月、担任教諭にいじめを訴え相談していた。しかし担任は「深刻ではない」と判断したとしている。

また別の教員も、この生徒が加害生徒から追いかけられるなどしていた様子を目撃していた。しかし「遊び」と認識していたという。

第三者委員会は2018年11月5日、生徒へのいじめがあり、自殺の原因はいじめだと推定できるとする報告書をまとめた。学校側は背景にある事情調査をおこなわず、いじめを見逃したと指摘した。

教育長が「お前」発言で引責辞任

事件対応にあたった教育長は、生徒の父親とは「父親が小学生だった頃の担任教師と教え子」という関係でもあったという。

2018年10月、教育長が事件対応で生徒の父親を訪問した際、保護者説明会を開催するとして遺族側の参加意向を聞くという話になったときに「保護者説明会に俺も行くから、お前も来るか」と発言した。

この発言に父親は「この場でこの発言はありえない。息子の自殺が軽くみられているのではないか」と不満を示し、市教委に苦情を申し入れた。

教育長は2018年11月、「教え子という当時の関係が頭をよぎり、そのように呼びかけてしまったが、その場では不適切だった。遺族の気持ちを傷つけた責任を取る」として辞職願を出し、受理された。

加害者氏名の非開示

遺族側は新発田市教育委員会に対して、加害者とされる生徒の氏名を開示するよう要請した。しかし市教委は2019年3月18日、「開示しない」とする決定をおこなった。

民事訴訟

遺族側は2020年1月24日、新発田市を相手取り約3000万円の損害賠償と加害生徒の氏名開示を求める訴訟を新潟地裁に提訴した。学校側の対応の遅れを指摘し、また氏名開示については「遺族の知る権利を狭める。非開示にすることで『いじめ加害者は守られる』という間違った考え方が根付きかねない。加害生徒個人を責めるのではなく真実を話してもらうことが目的」と訴えた。

しかし新潟地裁は2022年5月30日、請求を棄却した。学校側の対応について「局面に応じた措置をとっていた。注意義務違反はなかった」と判断し、また氏名開示についても認めなかった。

遺族側は一審判決を不服として控訴した。しかし二審東京高裁は2023年7月19日、一審判決を支持し、遺族側の控訴を棄却した。

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