愛知県弥富市立中学校3年の男子生徒が2021年11月、校内で同級生の男子生徒を殺害した事件。加害生徒は事件の動機について、被害者となった生徒からのいじめがあったと訴えた。
事件の経過
事件は2021年11月24日午前8時頃に発生した。この学校では8時10分から朝の読書活動に取り組むことになっていて、大半の生徒が登校していた。
加害者となった男子生徒A(以下「A」と表記)は、被害者となった男子生徒B(以下「B」と表記)を教室前の廊下に呼び出し、自宅から持ち込んだ刃物でBを刺した。Bは血を流しながら教室に逃げ込むような形で倒れ、教室にいた担任教諭や生徒らが異変に気付いた。担任教諭は職員室に異変を通報して救急車を要請した。担任教諭と、職員室から駆けつけた数名の教員がBの手当てに当たるとともに、教室にいた生徒を別室に移動させる、加害生徒Aに対して包丁を手から離すように説得するなどした。
被害生徒Bは病院に搬送されたが、その後死亡が確認された。
加害生徒Aは駆けつけた警察官に身柄を確保され、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。その後生徒の死亡によって殺人容疑に切り替わり、翌11月25日朝に殺人容疑で送検された。
「いじめ」と受け取れるトラブルも一因?
事件にいたる経過として、AとBとの間でトラブルがあり、Aが苦痛を感じていて、Bの行為を「いじめ」と認識していたことがうかがわれると報道された。
当該の中学校は小規模校であり、2つの小学校から進学する。AとBは同じ小学校出身で、小学校では1学年1クラスだった。中学校は1学年40人を少し超える規模で2クラス編成となり、2年時にはAとBは同じクラスだった。
2年時、AとBとの間に「Bが生徒会役員選挙に立候補する際、Aに対して応援演説を半強制的に依頼した」「Aが別の友人といるときに、Bが割って入ることがあった」「Bが給食当番の際、Aに箸を渡さなかった」などの行為があったとされ、そのことをAが苦痛に感じていたとも指摘された。
2年だった2021年2月には、AはBからの行為を「いじめアンケート」で学校側に訴え、学校側はいじめと認識してBを指導していたという。学校側は3年進級時のクラス編成の際、AとBとを別のクラスにした。一方で学校側は「指導後にいじめが収まったと判断した」として、教育委員会への報告はしていなかった。3年進級後は、事件直前の2021年10月のいじめアンケートでは、AとBとの間でいじめをうかがわせるような記述はなかったとされる。
弥富市教育委員会は2021年11月29日、加害生徒Aが2021年2月に「いじめアンケート」で被害生徒Bからの行為を「いじめ」として訴えていたことを公表した。
加害生徒Aは警察の捜査に対して、被害生徒Bとの間で起きた行為を「いじめ」と認識していたと訴えた上で、「(Bの行為は)卒業まで我慢できなかった」などと話したとされる。また事件10日前には、修学旅行で携帯電話を持ち込んでいたことを教員に注意された別件の事件などもあり、「全部どうでもよくなった」と話したともされる。
加害生徒への処分
加害生徒Aは殺人などの非行事実で名古屋家裁に送致された。
名古屋家裁は2022年3月23日の少年審判で、第一種少年院送致が相当とする決定をおこなった。事件は極めて重大な結果を招いた事案で非難に値すると指摘した上で、加害生徒に発達特性があったことなどを指摘した。事件当時14歳だったことや、必ずしも深い非行性に基づくものではなかったと判断したことなどを勘案し、5年程度の少年院での矯正教育が相当だとした。