大阪市立小学校いじめ事件(2019年)

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大阪市立小学校に通っていた男子児童が、少なくとも5年生だった2019年度、6年生だった2020年度にかけていじめを受け、心身症を発症した問題。児童が外国にルーツを持っていることでの周囲からの差別的な発言があったと指摘され、また学校側の対応が十分ではなかったことも指摘された。

経過

児童は父親が外国出身だという。当該の小学校には1年の入学時から在籍していたが、低学年の頃は外国と日本を行き来する生活で、日本での在籍校である当該校には通えていない時期もあった。児童の日本語力については、細かいニュアンスを表現したり伝えることに難があると指摘されていた。

児童が4年になった頃から、年間を通して日本で生活するようになった。児童は4年の頃にも「いじめを受けた」と、学校が実施したいじめアンケートに回答したと訴えているが、学校側ではいじめの具体的な内容は「確認できなかった」としたという。

4年から5年の進級時には、4年担任から5年新担任への引き継ぎの際に、当該児童については、いじめなど生徒指導上特に注意を要する点については特別の引き継ぎはなかったという。

5年だった2019年12月、当該児童は別の児童X1から「○○(国名)に帰れ」などと暴言を受けた。事態を把握した担任教諭は児童X1を指導するなどしたが、当該児童は暴言にショックを受け、事案発生直後から計5日間欠席した。

ほかにも、5年時には、「ほかの児童に故意にぶつかられるなどしてトラブルになる」「バスケットボールのスローインをめぐってトラブルになる」などの行為があり、状況を把握した担任教諭が指導していた。

また2019年度中には、ほかにも、同じクラスの児童や、所属していた校外の運動クラブで、「黙れ外国人」「○○(国名)帰れ」「ウザイ」などと侮蔑される行為が複数回あった。

保護者から校長に、2019年12月の「○○に帰れ」発言の件で相談・訴えがあり、校長が保護者と面談した。保護者は「日本語教室が設置されている別の小学校に転校させてほしい」と訴えた。

その後は、校長は大阪市教委の国際理解担当と相談しながら対応するなどしていたが、「転校希望の訴え」などについてはその後の進展がないまま、対応が立ち消えになった。

校長は、児童が5年修了時の2020年3月末、児童の保護者と面談を持った。保護者は、児童が同級生から「アホ」「ボケ」「カス」などの暴言を受けるなど、いじめを受けていると訴え、いじめに関与しているとした特定の複数の児童とは、6年進級時に別のクラスにしてほしいと訴えた。

学校側は6年進級時のクラス替えに際して、当該児童と5年時にトラブルがあった児童は別のクラスに分けるなどした。また児童の担任についても、5年時とは別の教員を充てる対応を取った。5年担任から6年新担任への引き継ぎでは、5年時のトラブルや、当該児童がほかの児童から悪口を言われているなどの申し送りがされた。

2020年11月20日には、算数の授業中に、隣席の児童X2から「耳鼻科に行ったら」「きしょい」などと罵倒された。児童はX2から、それ以前からも悪口など嫌なことを言われていたとも訴えている。

さらに同日、児童は、算数の時間の直後の休み時間にも、別の児童X3から、「死んできたら」といわれたと訴えた。一方で児童X3は「そのような発言は一切していない。そもそも、その休み時間には、当該児童と話をしていない」と訴えた。

またほかにも、6年時には、「日本だけの国籍の外人」 と侮蔑されるような発言も受けた。

担任教諭は、当該児童に対して不適切指導を繰り返したとも指摘された。2020年7月には、担任教諭が、当該児童とほかの児童X4がトラブルになった際に、当該児童をクラスの前で一方的に吊し上げるような対応を取った。また2020年12月には、卒業文集での当該児童の下書きについて、児童が「イヤな人達に『死ね』、『さっさと○○(外国都市名)に帰れ』、と言われ、いじめられました」「死にたいと思う日もあった」などといじめを訴えたことに対して、担任が原稿用紙に大きく×印をつけて返却する案件が生じた。

児童はこれらの経過が重なり、チック症状を発症し、また心因性の身体痛を訴える心身症と診断されたという。

6年時の途中からは、副校長が中心となって対応するようになったが、状況は好転しなかったという。

児童は2021年3月に小学校を卒業した。

第三者委員会

保護者は2021年2月、大阪市教育委員会事務局に電話していじめ被害を訴え、いじめと教員の指導について、第三者委員会の設置を要望した。大阪市教育委員会は2021年3月11日、いじめ重大事態として市長への報告をおこなった。

その後第三者委員会が設置された。第三者委員会は2023年7月25日、調査報告書をまとめ、大阪市教育委員会に手交した。

調査報告書によると、5年時の2019年12月の「○○(国名)に帰れ」発言を、いじめと認定した。また、具体的な時期や期間までは特定できないとしながらも、当該児童がほかの児童から、「外国人」「だから外国人は嫌やねん。」「○○(国名または外国都市名)に帰れ。」など、差別的な発言を継続的に受けていた可能性が高いと判断した。

いじめによる欠席日数が少ないことから、第三者委員会としては当該いじめ案件を「重大事態」とまでは判断しなかった。このことについて、第三者委員会は「いじめでの欠席日数が、不登校の定義に該当する日数よりも少なかったので、このような形にはなった。しかし、決して、いじめを軽微だと判断しているわけではない」としている。

学校側の対応についても、対応に問題があったと指摘した。「児童が4年だった2018年度・5年だった2019年度には学校のいじめ対策委員会そのものが開かれていなかったこと」「当該児童へのいじめ事案が発覚しても場当たり的な対応に終始したこと」「6年担任の指導が不適切だったこと」「学校側は保護者に対して誤った説明をおこなったこと」「学校側は、安易に保護者間での話し合いの場を設定したことで、被害児童保護者が『相手方児童の保護者から一方的に吊し上げられる二次被害を受けた』と受け取ったこと」などが、問題だと指摘した。学校側の不適切対応によって、児童の苦痛が長引いたとも指摘している。

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