山形県飯豊町で2006年5月、民家に男性(当時24歳)が押し入り、この家の長男(当時27歳)とその父親(当時60歳)を殺害し、母親(当時54歳)に重傷を負わせた事件。犯行動機として、男性は幼少時代、長男からいじめ・性的虐待を受けていたことが指摘されている。
事件経過
山形県飯豊町で2006年5月7日未明、長男を殺害するために男性はこの家に侵入した。長男一人だけを狙っていて家族に危害を加えるつもりはなかったものの、侵入した際にこの家の父親と母親に気づかれて声を上げられたため、2人も刃物で襲った。父親は死亡し、母親は重傷を負った。長男が騒ぎに気づいて別室から駆けつけたところ、男性は長男を刺殺した。この家には当時祖母(当時93歳)もいたが、別室にいて無事だった。
男性は同日夕方に逮捕された。その後の調べで、男性は「長男から幼少時にいじめを受け、恨みに思っていた」と話した。男性は被害者一家と約50メートル離れた近所に住み、被害者の遠縁にもあたる。
長男とは年齢が近いこともあり幼なじみだったが、男性は小学生時代に長男から性的ないじめを受け、その後PTSDのような症状を発症したという。
男性は長年にわたって長男を殺害することを考え、事件から約5年前の2001年頃には凶器となった刃物を購入してい る。
長男は当時独立して山形市に住んでいたが、この日は泊まりがけで帰省していた。男性は長男の車が被害者宅の庭に駐車されていたことを確認して犯行に及んだという。
男性は2006年5月31日、殺人と殺人未遂の容疑で起訴された。男性は長男への殺意は認めたが、父母への殺意はなかったとした。検察側は死刑を求刑したが、山形地裁は2007年5月23日、男性に性的暴行被害によるPTSD様の症状があったことを認定し、無期懲役とした。
検察側は控訴した。一方で弁護側は「判決には不満はない」としたが、検察の控訴を受け、弁護側が控訴せずに検察だけが控訴すると二審では「死刑にするか否か」だけに争点が狭まってしまうとして、事件の全体的な審理を求めるために弁護側も控訴した。
二審仙台高裁は2013年1月25日、一審判決を支持し、被告を無期懲役判決とした。被告が性的いじめでPTSDを発症した点については、一審以上に踏み込んで認定した。
民事訴訟
被害者一家(母親・祖母と、独立して別の場所に住んでいたために難を逃れた次男)は2007年12月、男性とその両親を相手取り損害賠償を求める民事訴訟を山形地裁に起こした。男性の両親は賠償に応じる意向を見せていたが和解は成立しなかった。山形地裁は2009年1月29日、男性に約2億7360万円の支払いを命じる判決。一方で男性の両親への請求は棄却した。