福岡県筑前町立三輪中学校いじめ自殺事件

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福岡県筑前町立三輪中学校2年だった男子生徒が2006年10月、いじめを苦にして自殺した事件。

学年主任で、生徒の1年時の担任でもあった教師が、いじめに関与していたと指摘された。

また、いじめに加担した教師は部落解放同盟の影響を受けた「解放教育」を推進する教師で、他にも人権侵害を繰り返していたこと、学校側がいじめ事件のもみ消しを図ろうとしたこと、別の生徒へのいじめ行為などもも明らかになった。

事件概要

福岡県筑前町立三輪中学校2年の男子生徒が2006年10月11日、自宅で首吊り自殺しているところを発見された。生徒はいじめを訴える遺書を残していた。

事件当日、同級生7人がこの男子生徒を取り囲み、ズボンを脱がそうとさせ、自殺を迫るなどするいじめがあったと指摘された。

当日のいじめに関与した7人のうち5人については、2007年2月19日付で暴力行為法違反で書類送検された。14歳だった3人が福岡家裁送致となったが、いずれも少年審判では不処分となった。また残る2名は13歳だったとして児童相談所に送致した。

教師がいじめの原因を作り加担

いじめの調査の過程で、2年生の学年主任で、この生徒の1年時の担任でもあった教諭・T(47)が生徒へのいじめに加担していたことが、2006年10月15日に発覚した。

Tは自殺した生徒に対して、悪質な発言を繰り返していた。Tのいじめ言動は、今まで以下のようなものが明らかになっている。

  • 母親から教諭への相談内容について、生徒の名誉を傷つけるような内容に一部捏造した上、クラスの生徒の前で捏造した内容を話し、その結果自殺した生徒に不名誉なあだ名が付くなどいじめ誘発行為をした。
  • 同級生が落とした文房具を自殺した生徒が拾った際、「偽善者」などと中傷した。
  • 生徒がけがをした際「仮病」「嘘つき」などと中傷した。
  • 生徒が小学生時代、一部の同級生から本人が嫌がっているあだ名で呼ばれていたことを知ったTはそのあだ名を、笑いながら「呼ぶなよ」などとしてホームルームで暴露した。その結果、嫌なあだ名が多くの同級生に知れ渡り、それをネタにしたいじめも激化した。

またTは2006年春、自殺した生徒が2年生に進級した際、この生徒を2年生で担任することになった別の教諭(同教諭は2006年度に三輪中学校に転任してきた)に対して、生徒のことを「嘘つき」などとして申し送りをおこなった。

Tは、自殺した生徒に対してだけでなく、別の生徒に対しても「豚」などと暴言を吐いたり、生徒をイチゴの品種のランクに例えて序列化する発言をするなど、暴言や不適切発言を繰り返していた。またTは、自分の担当する国語の授業で、「忘れ物をした」として生徒を花瓶で殴る「体罰」を加えたこともあったという。

2006年10月15日、学校側は遺族の指摘に対して、これらの事実関係をおおむね認めたという。またTは、自殺した生徒に対するいじめを認め、動機について「からかいやすかったから」などとしているという。

学校側は10月15日の時点では、Tによるいじめと自殺との因果関係について認めていたが、翌日10月16日になって「因果関係は認められない」と発言を撤回した。

学校や地域のもみ消し工作と思われる言動

三輪中学校は2006年10月16日に全校集会を開催し、校長が事件について説明した。しかし校長の説明は、「マスコミやインターネット・新聞でいわれている三輪中学校ではないことを知っているのは君たちと我々です…」と発言するなど、まるで事件を問題視する世論が悪いかのようにとれる、責任逃れの態度をとった。また集会後、教室で「マスコミの報道はすべてウソだ。信じるな」と生徒に話した教師もいたという。

しかし学校側の言い分には、マスコミ報道やインターネットでの批判について、「どこがどのように間違っているか」という説明は一切ない。それにもかかわらず、感情的に「ウソだ」と一方的に断定している。

結局、学校側の論理は、

  • 「自分たちの気に入らない、もしくは自分たちにとって都合の悪い報道や批判がされている」ということを「学校への不当な攻撃」とすり替える
  • 「具体的にどこが間違っているか、どこが不正確か」という根拠をあげずに、報道内容を「嘘」と印象づける一方的な物言いで学校内の結束を固める
  • 事件の事実関係をあたかも「落ち度のある自称“被害者”が、マスコミや外部の批判者と結託して学校を攻撃している。こういうややこしい人に絡まれた学校側こそが真の被害者」という風にすり替える。

――という典型的な工作であると断言できる。

すなわち、マスコミや批判者を「敵」に仕立て上げて、自らの落ち度をもみ消そうとした上自らを「世間からのいじめ被害者」かのように描こうとして、すべてをマスコミ報道や批判者のせいにしようという工作である。

また、三輪中学校の父母教師会(PTA)は2006年10月18日、報道機関に対して取材自粛を申し入れるという行動をとった。また生徒に対しては「取材拒否カード」なるものを作成して配布し、マスコミ関係者が近づいてきたときにカードを見せるよう指示していることも判明している。

父母教師会は表向きは「マスコミ取材が子どもたちの精神状態に大きな動揺を与えている」ということを理由にしているが、実質的には「事実関係が明らかになること・真実が世間に広く知られることを恐れている」と判断せざるを得ないだろう。

いじめ調査委員会、Tのいじめ認めず

筑前町の調査委員会は2006年12月28日、調査報告を公表した。Tの行為について「いじめをあおった事実はないが、不適切な言動がからかいや冷やかしの要因となったことは否定できない。自殺の直接的要因と考えるには無理がある」などと、Tをかばいたてるような認定をおこなっている。

いじめ問題全体にしても、自殺した生徒へのいじめがあったことや学校の責任については不十分ながらも否定できなかったものの、認めたくない・できるだけ小さく描こうという意図があるような調査結果と断じざるを得ない代物である。

別の女性教師による暴言事件も発覚

三輪中学校では2004年、別の女子生徒(当時2年生)が、女性教諭から「バカ」「頭がおかしい」などと暴言を受ける事件が発生した。この女性教諭は、生徒の抗議に対しても「転校してくる前の学校でも頭が悪かったらしいね」「茶髪に染めていたんでしょ」とさらに暴言を重ねたうえ、「本当のことを言っただけ」と開き直った。

保護者の抗議に対しても、女性教諭は無視を決め込んだ。また校長は「私にそういうこと言われても分からないですね」などと、事件を問題視しないという発言をおこない、まともに対応しなかったという。

女子生徒はこの事件の後、卒業まで不登校状態が続いたという。

教頭はこの事件について、「事実かどうかを含め、一切コメントしない」と黙殺を決め込む発言をしたという。

事件の遠因:部落解放同盟による教育介入と「解放教育」

事件の発生した福岡県筑前町立三輪中学校では、部落解放同盟(解同)による「解放教育」が持ち込まれる不正常な状況となっていることが明らかにされている。

「解放教育」とは、暴力・糾弾や人権侵害などの解同の運動を学校に持ち込むものである。国や福岡県の方針にすら反する教育内容で、また人権尊重の態度とは全く相容れないものである。全国で「解放教育」による人権侵害の被害も多数出ている。

  • 兵庫県では1974年、「解放教育」に従わない教師が解同から集団リンチされる事件が発生した(八鹿高校事件)。
  • 大阪府八尾市では、いじめ被害にあって抵抗した生徒に対して、いじめへの抵抗の内容に対して解同系教師が「差別」と言いがかりを付け、いじめを放置した上でいじめ被害生徒をつるし上げて不登校に追い込んだ(1995年)。
  • 滋賀県野洲町では、解同系の教師が勤務校の校内で差別落書きを自作自演し、「差別」をでっちあげることで「解放教育」を導入する口実にしようとした。
  • 解同の糾弾で校長が自殺に追い込まれた事件も、三重県・広島県などで複数発生している。

解同の教育介入と「解放教育」の押しつけによって学校の自主性と自浄能力が失われていることが、三輪中学校で複数の教師が人権侵害を日常的に繰り返していることや、いじめ自殺事件発生後は学校や地域ぐるみでいじめを正当化して事件を闇に葬り去ろうとする動きが強まった要因となったとする指摘もある。

2006年11月の福岡県議会では、同校では「解放教育」がおこなわれて「ものいえない学校」がつくられ、教職員集団の自浄作用が働かなかったと指摘する議会質問がおこなわれている。

また問題の教諭・T自身についても、三輪中学校赴任以前にも「解放教育」を推進する学校に複数校勤務した経験がある。そのうちの1校の久留米市立中学校に勤務していた1987~89年には、同和教育推進教員を3年連続でつとめている。当時を知る人によると、Tは当時から問題発言を繰り返していたという。Tは「解放教育」を推進してきた教師、ないしは解同の息のかかった教師とみて差し支えないといえる。

本来「人権」を標榜するものならば人一倍人権を大切にすべきものだが、「解放教育」では人権は守れず、むしろ人一倍人権侵害行為をおこない、しかも行為に対して全くの無反省になるという最悪の実例のひとつが、Tの今までの行動であるといえる。

福岡県教育委員会の責任も問われる

問題を起こした教諭・Tは1997年度に、福岡県教育センターで生徒指導に特化した長期研修を受講している。これは「問題教師の再教育のための研修」ではない。この研修の目的は、生徒指導の分野で優れた実績が見込まれる教員を校長が推薦して福岡県教育界の最高水準の内容を受講させる研修だということである。2万数千人いる福岡県小中学校教員の中で年間あたりたったの数十人しか受講できない研修だという。

生徒に暴言や「体罰」・いじめ行為を繰り返した教師が、福岡県教育界の、しかも生徒指導分野におけるリーダー格の教師と見なされていたことに、福岡県教委の責任が少なからず問われることになる。

教諭らへの処分

福岡県教委の形だけの処分

福岡県教育委員会は2007年3月6日、この問題に関する教職員の処分を発表。いじめ加害教師・Tを減給処分にした。また、「いじめを発見できなかった」として2年次の担任教諭を戒告処分、管理責任を問い合谷智校長を減給処分・教頭を戒告処分にした。

しかしこの処分は、きわめて軽すぎるものだといわざるを得ないだろう。

福岡県教委は2007年4月の人事異動で、合谷智校長と2年次の担任教諭をそれぞれの職から解任し、1年間の教育センターでの研修を受けさせる措置をとった。一方でいじめ加害者教師・Tは、2007年11月までの休職手続きをとっていると発表された。

警察は刑事事件としての立件を見送り

Tの行為について、「保護者からの相談内容を、事実をゆがめてクラスの他の生徒の前で脚色して話したことは、地方公務員法の守秘義務に違反する疑いがある」「『偽善者にもなれない偽善者』などの暴言が繰り返されたことは名誉毀損の疑いがある」などとして福岡県警が捜査を続けていた。しかし福岡県警は2007年4月24日までに、Tの行為を刑事事件として立件することを断念した。

福岡法務局の説示措置

福岡法務局は2007年5月までに、この事件を「重大な人権侵犯事件」と認定した。いじめ教師・Tに対して「自殺した生徒への重大なプライバシー侵害をおこなった」として、説示の措置をとった。また合谷智前校長にも説示。筑前町教育委員会と2007年時点の校長には再発防止の要請をおこなった。

Tは事件後、別の学校に転任

加害者教師・Tは、休職期間が切れたあとの2008年4月、うきは市立浮羽中学校に転任した。「事件の事実関係について詳しく事情を聴きたい」と遺族が希望し、浮羽中学校を通じて申し入れたものの、Tは逃げ回っているという。

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