大阪市における市立小中学校の学校選択制は、当時の大阪市長・橋下徹の強い意向によって2012年に提案され、2014年度より順次実施された。
大阪市での実状
大阪市では、各行政区単位で学校選択制が実施されている。
24行政区各区ごと、また同じ区でも小学校と中学校の校種別で細かい方式は異なるものの、居住地域の隣接区域の学校区から選択できる方式、ないしは行政区内全域の学校から選択できる方式などが取り入れられている。
導入までの経過:反対多数
しかし、学校選択制導入に先立って各行政区ごとにおこなわれた説明会では、強い反対の声や懸念の声が上がった。どの地域でも反対の声が、賛成意見を大きく上回った。
反対の声としては、主に以下のようなものがあがった。
- 地域とのつながりが失われる。
- 学校ごとに学校間格差を生じる可能性。公立の学校で、ある地域の学校と、隣の校区の学校で、教育内容に差があってはおかしい。
- 学力テストなどとの関係で、「選ばれる学校」のための一面的競争になりかねない。
- 競争と格差を目的とするよりも、保護者・学校・地域が手を取り合う学校運営を進めるべき。
- 大阪市ではかつて、特定の有名校へ通学したり、校区に同和地区のある学校を忌避しての越境入学が常態化し、越境入学根絶の取り組みを強力に進めた歴史がある。その歴史との整合性は?
賛成意見も一部あったが、その賛成意見は「いじめなどへの対策」「隣の学校の方が近い場合」など、学校選択制に頼らずとも、就学区域弾力化制度でも十分に対応できる観点からのものが大半となっていた。
当時の市長・橋下徹や大阪市政与党の大阪維新の会が主張するような「学校間競争」を前提とした導入賛成の意見は、ほとんどなかった。
また有識者や市民代表などで構成した諮問機関「熟議『学校選択制』」でも、学校選択制導入には否定的な見解をまとめた。
実施後の状況
2014年の導入後は、学校選択制の利用者こそ全体の5%程度だが、選択理由としては、「学力テストの学校平均点が高い」など学校間競争などのものが指摘されている。また「選ばれる学校」も固定化している傾向もみられる。
全国的な動向から逆行する大阪市
全国的には、2003年に通学区域の弾力化が打ち出されて、それ以降全国各地で学校選択制が導入された。
しかし弊害が現れたとして、早くもわずか数年後の2007~2008年前後から学校選択制の中止・撤退や縮小を打ち出す自治体も相次いだ。
2012年時点では新規導入を検討する自治体は完全に下火になっていたものの、大阪市では導入が打ち出されたことになる。