兵庫県立高校いじめ自殺事件(2012年)

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兵庫県川西市内の兵庫県立高校に通っていた2年男子生徒が2012年に自殺し、同級生からのいじめが背後にあったと指摘された事件。学校側の不適切対応も指摘された。

経過

当該生徒は2012年4月、2年進級後、加害生徒らと同じクラスになった。2012年4月下旬頃、この生徒と近い座席に座っていた加害生徒の1人がこの男子生徒に声をかけたが無視されたと思い込み、「無視」の意味で「虫」と呼び始めた。近くの席だった別の2人の男子生徒も一緒になって「虫」と呼び、蛾の死骸をこの生徒の机に置くなどした。

加害生徒は2012年6月上旬、この生徒を別の生徒にぶつけようとして「エキスが付く」などと馬鹿にする行為をおこなった。

生徒は2012年9月2日、自宅で自殺した。2学期の始業式の前日だったという。遺書などはなかった。家族は最初は「思い当たる節はない」としたが、同級生から届けられた追悼の手紙にいじめをうかがわせる内容が記載されていたことで学校に連絡した。

家族によると、そのときはいじめの兆候だと気づかなかったものの、生徒の自殺後に振り返ってみれば異変があったという。生徒は2年進級直後から「学校へ行きたくない」と漏らすなどしていた。また2012年8月中旬の深夜、寝ていた男子生徒が突然飛び起きて、「虫がいる。ムカデみたいなやつや」と泣き叫んだことがあったという。家族が部屋を探したが、虫は見つからなかった。

その後学校が調査し、いじめがあったことを認めた。学校が設置した第三者委員会は2013年5月2日、同級生3人がこの生徒に侮辱的な暴言を吐いたことなどのいじめの存在は認定しながらも、自殺との因果関係を結びつけることは困難とする報告書を校長に提出した。

学校側の対応

同じクラスの女子生徒は2012年6月、「自殺した生徒の机がわざと違う場所に動かされている。自分の机にも同じことをされた」と担任教諭に相談した。担任教諭はいたずらをした生徒を指導したとしているが、その一方で生徒への聞き取りについては「本人からの訴えがなかった」として放置した。

校長は生徒の自殺翌日、遺族に対し、「学年集会で説明する際には不慮の事故ということにしてくれないか」と打診していた。遺族側は打診を断った。

学校側は2012年9月19日に保護者説明会をおこなった。しかし担任や2年学年担当教員は全く出席しなかった。校長は「デリケートな問題だから校長判断で参加を見送った」と伝えた。しかし別の教諭は「責められるのを防ぐためだ」と話したとも指摘された。事件の経過も学校側の一方的な説明に終始した。一方的な運営に、参加者からは怒号が飛ぶなどして紛糾したとも報じられた。

生徒指導担当教諭は2012年9月20日、自身が担当する教科の授業で、「遺族は学校を潰そうとしている」「体育祭や修学旅行があるが、それもどうなるかわからない」「遺族には申し訳ないが、同情する気はない」などと中傷発言をおこなった。

事件やその後の不適切対応が相次いでマスコミで報じられたことで学校への批判が高まった。学校名は報じられなかったものの、テレビ番組で校舎や生徒の制服などがモザイク越しに放映されたこともあったことで学校が特定され、無関係な生徒が通行人から言いがかりを付けて中傷されるなどの状況が生まれたとして、学校側は生徒に対して「当面の私服登校」を指示したという。

刑事処分

兵庫県警は2013年5月1日、自殺した生徒に「菌」「虫」などと悪口を繰り返したなどして、同級生3人を侮辱容疑で書類送検した。神戸家裁は2013年12月、侮辱の非行事実で3人を保護観察処分とした。

民事訴訟

生徒の遺族は2013年12月4日、兵庫県および担任教諭・生徒指導担当教諭・校長と、いじめに関与したとされる同級生3人を相手取り、約8860万円の損害賠償を求めて神戸地裁に民事提訴した。

神戸地裁は2016年3月30日、「いじめの結果として自殺した」として、兵庫県と加害生徒3人に計約210万円の支払いを命じる判決を出した。

加害生徒の行為は「悪質ないじめ」だとしたうえで、「人格を深く傷つけ、大きな精神的苦痛を生じさせた」と指摘した。担任や校長がいじめを放置したことも認定した。一方で「激しい暴行などを長期間に継続し、重大な苦痛を与え続けたものではない」として、自殺の予見可能性を否定し、いじめと自殺は賠償責任が生じるほどの因果関係は認められないと判断した。

原告側、および被告側の兵庫県・加害生徒側ともに双方とも控訴せず、一審判決が確定した。