福岡県太宰府市の私立筑紫台高校に通っていた3年の男子生徒が2013年11月、同級生からのいじめを苦にして自殺した事件。
経過
筑紫台高校3年だった男子生徒は2013年11月14日未明、自宅から数キロ離れたマンションの9階から飛び降り自殺した。生徒は同級生の名前を挙げて「絶対に許さない」なとと記したタブレット端末を残していた。
学校の調査で、この生徒に対して「あごに固いパンをたたきつける」「家庭科の調理実習の時間に、わざと調味料を多めに入れた激辛麻婆豆腐を作り、無理やり食べさせる」などの暴力行為が確認された。学校側は当該生徒への暴力行為を確認したとして、同級生9人を停学処分にした。
いじめは1年の2学期頃から始まり、身体的特徴をからかわれるなどしていた。2年進級後は粘着テープで縛られるなどの暴力もあったあったという。
遺族側によると、生徒が1年だった頃から制服が破れるなどの異変があったが、家族が本人に聞いたところ「いじめではない」と返答したとされる。
学校側が設置した第三者委員会では2015年3月、当該生徒へのいじめを認定し、またいじめと自殺との因果関係を認定する報告書を出した。
刑事処分
福岡県警は2014年3月6日、同級生の男子生徒7人を、暴力行為法違反(集団暴行)の容疑で書類送検した。警察では、同級生から自殺した生徒への行為はいじめに相当するとしたが、いじめと自殺との因果関係については「不明」とした。7人は2014年3月18日に福岡家裁に送致されたが、同年8月14日から15日にかけていずれも不処分となった。
民事訴訟
遺族は2016年10月、加害者の同級生8人と、学校を運営する学校法人を相手取り、計9500万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁に起こした。
元同級生側とはいずれも、賠償に応じ謝罪するなどの内容で和解が成立した。しかし学校側は「いじめはなかった」として争った。
福岡地裁は2021年1月22日、いじめの存在、およびいじめと自殺との因果関係を認め、学校側の安全配慮義務違反を指摘して約2600万円の損害賠償を命じる判決を出した。
学校側はこのことを不服として控訴した。遺族側も控訴した。
福岡高裁は2021年9月30日、いじめの存在、およびいじめと自殺との因果関係を改めて認めた上で、損害賠償金額を約3000万円に増額する判決を出した。生徒が以前に自殺未遂をした際の首のアザを担任教諭が確認していたことを指摘し、学校側がいじめ対応マニュアルに従って情報収集や教職員間での情報共有、生徒への心理的ケアなどすべきだったのに怠っていたとして、学校の安全配慮義務違反を認定した。また生徒が卒業後に公務員養成の専門学校に入学することが決まっていたことで、生涯収入としての相当額を増額したとされる。
参考事案
同校ではこの事件から3年前の2010年7月にも、剣道部に所属していた当時1年の男子生徒が、「いじめを受けているので死ぬ」としたメールを残して校内で自殺を図って意識不明の重体になり、数日後に死亡する事案が発生している。この案件では、部活動で上級生からのしごきがあったと判明した。