神奈川県津久井郡津久井町(現在の相模原市緑区)で1994年7月、津久井町立中野中学校2年の男子生徒がいじめを苦にして自殺した事件。いじめによる自殺の予見可能性が裁判で初めて認定された。
経過
男子生徒は中学校2年に進級した1994年4月、自宅新築に伴って一家で相模原市から津久井町に転居し、町立中野中学校に転校した。
しかし転校直後から、ノートや教科書に「バカ」「うざい」などと落書きをされるなどのいじめを繰り返し受けた。1994年5月下旬、母親が落書きに気付いて担任に相談していた。
1994年7月15日には、生徒の机や教科書にマーガリンが塗られたり、いすに画鋲が置かれチョークの粉が塗られるなどのいじめを受けた。生徒は同日に自殺した。遺書などはなかった。
学校側の調べで、生徒への嫌がらせをしていた同級生を特定したものの、学校や町教委はいじめではないと主張した。
民事訴訟
生徒の両親は1997年、加害者とされた同級生10人と津久井町・神奈川県教委を相手取り、横浜地裁に提訴した。
横浜地裁は2001年1月15日、同級生10人のうち9人に計200万円、町と県教委に計4000万円の損害賠償を命じる判決を出した。判決ではいじめを認定し、また「偶発的トラブル」扱いした担任の対応は不備であると認定した。さらに生徒の自殺予見可能性も認定した。いじめ自殺事件で自殺の予見可能性を認定した判決は、初めてであるとされる。
被告側は判決を不服として控訴した。
東京高裁は2002年1月31日、一審判決を支持し、計2165万円あまりの損害賠償を被告側に命じた。一方で「生徒側にもいじめの原因となる行為があった」「両親の注意監督義務もあった」と指摘して賠償額を減額した。