兵庫県姫路市立中学校柔道部いじめ隠蔽事件

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兵庫県姫路市立中学校の柔道部で2015年にいじめが発覚した際、顧問教諭がいじめを隠蔽するような対応を取った問題。

当該顧問教諭は停職6ヶ月の懲戒処分を受けたが、処分を不服として提訴した。

いじめ事件の経過

当該校の柔道部は全国大会の常連校で、越境通学で下宿して通学する生徒も多数いる状況だった。

2015年7月7日、柔道部員の1年の男子生徒が早朝練習中にケガをしている様子に、副顧問の教員が気づき事情を聴いた。生徒は「上級生2人から何十発も殴られたり蹴られるなどの暴行を受けた。物差しで喉を突かれるなどもした」などと訴えた。加害者は当時3年と2年の男子生徒の2人だった。

副顧問は被害生徒を病院に連れて行くことになった。しかし柔道部顧問の男性教諭・H(当時57歳)が、副顧問や被害生徒に対して、「病院では暴行の事実を伏せろ、階段から転んだことにしろ」と口止めを強要した。副顧問は指示に従ったという。生徒は病院で、胸骨の骨折と診断された。

顧問教諭はこのような指示をおこなった理由について、「いじめ・上級生からの暴力の事実が明らかになると、病院から警察に通報されて面倒なことになるかもしれないからと考えた」としたという。

その後の学校の調査で、加害者2人は2015年4月から、骨折した生徒を含む当時1年生の生徒3人に対して、悪質ないじめ行為を繰り返しおこなっていたことが発覚した。加害者も被害者も全員、越境通学で県外から私設寮に下宿していた生徒だという。

いじめの具体的な内容として、以下のような行為が指摘された。

  • エアガンで撃つ。
  • 揮発性の香水を被害生徒の体にかけて火を付ける。
  • プールや海に沈める。
  • 下宿で出た食事について、上級生にとって自分たちの嫌いな食材が出たときや、上級生が食べきれなかった場合は、下級生に無理やり食べさせる。

またいじめの調査の中で、部活動目的での不正な越境通学の問題についても指摘された。同部では当時、全部員約50人中少なくとも18人が、不適正な越境入学だと指摘された。

いじめ加害者を大会に出場させる

校長はいじめを把握し、加害者の一人の3年男子生徒について、2015年8月4日の柔道部の近畿大会に出場させないように指示した。

しかし顧問教諭は校長の指示を無視して加害生徒を大会に出場させ、当該中学校柔道部は大会で優勝した。加害生徒は部の主力選手だったという。

停職処分

兵庫県教育委員会は2016年2月23日、いじめを隠蔽した対応と、校長の指示を無視して加害生徒を大会に出場させた行為を主に問題視し、顧問教諭を停職6ヶ月の懲戒処分にした。

またいじめ隠蔽の他にも、「柔道部で使用する目的で保護者から寄付された洗濯機・乾燥機・トレーニング器具などを、家庭科室などに長期間にわたって置く」などの、部の備品の不適切管理も対象となっていたという。

顧問教諭は2016年6月に退職した。

「処分不当」と訴える訴訟

しかし元教諭は処分を不服として、処分取り消しと慰謝料約1320万円を求めて兵庫県を提訴した。

一審神戸地裁(平成28年(行ウ)第66号)では、元教諭の訴えは棄却されている。

しかし二審大阪高裁(平成30年(行コ)第51号、田中俊次裁判長)で2018年11月9日、元教諭の訴えを一部認め、兵庫県に対して処分の取り消しと慰謝料55万円の支払いを命じる判決を出した。判決では、病院に対しては隠すように指示したものの、学校に対しては、いじめの報告が校長などに届いていたことを指摘し「隠蔽したとは評価できない」などと結論づけている。

兵庫県は2018年11月26日付で、県側が一部敗訴となった二審大阪高裁判決を不服とし、最高裁に上告した(平成31年(行ヒ)第97号)。

最高裁第1小法廷は、双方の意見を聞く上告審弁論を開くことを決定した。

上告審での口頭弁論が2020年3月19日に開かれ、兵庫県は「二審判決は、元教諭の行為の悪質性の評価を誤っている」、元教諭側は「(いじめ隠しの)指示は一時的な判断の誤りだった。懲戒免職の次に重い停職6カ月は異常だ」とそれぞれ訴えた。

判決期日は2020年4月27日に指定された。しかし2020年4月7日に新型コロナウイルスによる「緊急事態宣言」が出されたことに伴い、最高裁は2020年4月8日、判決期日を取り消し延期する措置をとった。その後改めて判決期日が指定された。

最高裁は2020年7月6日、二審判決を破棄し元教諭側の請求を棄却する判決を出した。

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