東京都中野富士見中学校いじめ自殺事件

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東京都中野区立中野富士見中学校(2009年南中野中学校に統合し閉校)2年の男子生徒が1986年、いじめを苦にして自殺した事件。いじめの一環として「葬式ごっこ」がおこなわれ、教諭らも葬式ごっこに加担していたことが明らかになり大きな社会問題となった。

事件概要

中野富士見中学校2年の男子生徒が1986年2月1日、岩手県盛岡市の国鉄盛岡駅ビルに隣接するデパートのトイレの個室で首をつって自殺しているところを発見された。生徒は同級生2人の実名を名指しし「このままでは『生きジゴク』になっちゃうよ」などといじめを苦にしていると訴える遺書を残していた。

その後の調べで、この生徒が少なくとも1985年2学期頃から使い走りをさせられたりカバンを持たされるなどのいじめを受け続け、不登校気味になっていたことが判明した。家族は生徒の異変に気づき、学校側に対処を要請していた。

1985年11月には、「葬式ごっこ」と称して、この生徒の机に花をおいたり多数の生徒がこの生徒への追悼の寄せ書きを送るなどのいじめをおこなった。学級担任の男性教諭・F(当時57歳)ら4人の教諭が、葬式ごっこの寄せ書き色紙にサインしていたことも明らかになった。

関連事件

自殺事件発生直後には、2年生の別のクラスで理科の授業中、生徒Xが別の生徒に対して「お前は○○(自殺した生徒の名前)2世だ。○○のように自殺しろ」などと言いながら別の生徒を数十回殴る事件が発生した。

暴力被害を受けた生徒は、授業担当の男性教諭・S(当時29歳)に助けを求めた。しかしSは生徒Xの暴力を止めようとせずに放置し、そのまま授業を続けた。たまりかねた被害生徒が「生徒Xを殺してやる。刃物を買ってくる」と言い残して教室を飛び出し、近くの金物店に駆け込もうとしたところで、初めてSは被害生徒を追いかけて制止しようとした。路上でSと被害生徒が言い争っている様子を目撃した警察官が事情を聴き、一連の経過が発覚した。警察は生徒Xを暴行容疑で逮捕した。

授業を担当していた教諭Sは、葬式ごっこの色紙に書き込みをおこなった4教諭のうちの1人だった。

関係者への処分

東京都教育委員会は1986年3月21日付で、葬式ごっこに加担した教諭らの懲戒処分を決定した。担任・Fは、クラスのほかの生徒に対して葬式ごっこの事実の口止めを図ったことや、約25年にわたって民間学習塾での無届けアルバイトをおこなっていたことが発覚したことも加味され、諭旨免職処分となった。

また理科教諭・Sは、授業中の暴力放置問題も加味されて減給2ヶ月の上1年間の研修措置となった。

このほか「葬式ごっこ」の寄せ書きに加担した男性教諭・K(当時57歳)は減給10日、男性教諭・U(当時58歳)は戒告処分となった。K・U両教諭は同日付で依願退職した。

管理職の責任も問われ、校長は減給、教頭は戒告処分となった。校長は依願退職し、教頭は1年間の研修措置に付された。

警察は1986年4月1日、自殺した生徒へ暴力を加えた2人を含む生徒16人(1986年3月卒業者も含む)を書類送検した。自殺した生徒へいじめをおこなっていた生徒については、その後保護観察措置となった。

民事訴訟

自殺した生徒の家族は1986年6月、加害者2人と東京都・中野区を相手取り、約2200万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提訴した。

東京地裁では1991年3月27日、一部の暴行に対する苦痛として400万円の賠償を認めたものの、事件は「いじめではない」と判断し、葬式ごっこは「一つのエピソードにすぎない」とする判決を出した。事件と自殺との因果関係は否定している。

二審東京高裁では1994年5月20日、一審の判断を変更して、生徒への継続的ないじめを認定し約1150万円の損害賠償を命じる判決を出した。学校側については「自殺は予測できなかったとはいえ、いじめを防止できなかった過失がある」と指摘した。

原告・被告側とも上告せず、二審判決が確定した。

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