七生養護学校事件

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東京都日野市の東京都立七生養護学校(現・七生特別支援学校)で2003年、学校でおこなっていた性教育の取り組みに対して、極右派都議3人が問題視して介入した事件。

経過

同校は知的障害児を主な対象とする養護学校である。学校側は知的障害児の実態にあわせて、わかりやすい教材を独自で工夫して性教育を実施していた。

しかし2003年7月、極右派都議が取り組みを問題視した。7月2日は都議会で「アダルトショップのよう」などと問題視する質問がおこなわれ、7月4日に都議ら3人が産経新聞記者を伴って視察をおこなった。産経新聞は、都議の主張に同調し学校側の取り組みを否定すると受け取れるような新聞記事を書いた。

都教委はそれまでは同校の性教育を評価していたが、都議の意向に同調し、教材を没収するなどした。都教委はその後学校側に注意を出し、不適切な性教育として、教職員21人を厳重注意などの処分にしたうえで配置転換するなどの措置をおこなった。

また当時の校長については、停職1ヶ月と教諭への降格の処分とされた。性教育での処分を図ったものの、「性教育での処分は公権力の介入と見なされかねず、処分理由として通用しない」と判断し、「学級編成の不適正」など別件での処分とした。しかし別件については、事前に都教委と協議の上で、都教委が柔軟な学級編成を容認していたことなどの経緯があり、でっちあげでの処分だと指摘された。

民事訴訟

教職員・保護者の訴訟

教職員や保護者らは「政治への不当介入」として、3都議や東京都を相手取って訴えた。

この訴訟では、東京地裁で2008年3月、都議と東京都に対して210万円の損害賠償を命じる判決を出した。都議3人が視察の際に一方的な批判をおこなったことを教育への不当介入と位置づけました。また東京都教育委員会が教諭らを厳重注意処分にしたことも「社会通念上著しく妥当性を欠く」と判断し、教員計12人に対する賠償を認めた。一方で、都教委に没収された教材の返還が認められなかったことなどの点もあった。

二審判決でも一審判決を踏襲した。双方とも最高裁に上告したが、最高裁は2013年11月18日、双方の上告を棄却し、都議と都教委の行為を不当な政治介入・教育支配と認定して、原告側に約210万円の損害賠償を命じる判決が確定した。

校長の処分取消訴訟

また当時の校長は、処分の取り消しを求める訴訟を起こした。

校長への処分については、2008年3月に東京地裁で取り消しが認められた。2009年4月の二審東京高裁でも一審判決が支持されている。東京都は上告したが、最高裁は不受理を決定し、校長の処分を取り消すよう命じる判決が確定した。

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