佐賀県鳥栖市立中学校いじめ事件

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佐賀県鳥栖市立中学校で2012年、当時1年の男子生徒に対するいじめがあり、被害者が精神的な後遺症を負った事件。

経過

鳥栖市立中学校に2012年度に入学した男子生徒は、入学直後からいじめを受けるようになった。

被害生徒は加害生徒13人から、腹を殴られ足を蹴られる、エアガンで撃たれる、カッターの刃を体に押しつけられる、ノコギリの刃を顔の前に突きつけられる、持ち物を隠されたり壊されたりする、「死ね」「金づるやけん、生殺しにせな」「お前の親や妹も殺せる」などの暴言、現金100万円以上を脅し取られるなどの悪質ないじめ・暴力行為を受けた。

さらに加害生徒は、被害生徒の自宅に集団で押しかけて被害生徒を外に連れ出していじめ・暴力行為を繰り返していた。

脅し取られたお金は、当時体調を崩していた家族の入院費用として家庭で貯めていたお金だったという。加害生徒は被害生徒に対して「親に言うと、体調がもっと悪化するぞ」などと恫喝し、口止めを図っていた。

被害生徒は重度のPTSDを発症した。

いじめは7ヶ月近くにわたって続いた。担任教諭らはこの間、被害生徒への暴行を目撃していながら放置したとも指摘されている。

2012年10月23日に学校側がいじめを認知し、加害生徒への聴き取りをおこなった。

2013年3月下旬に事件がマスコミ報道された。教育長は2013年3月、事件をいじめと認定した上で、「いじめではなく犯罪行為に等しい」と発言した。

民事訴訟

被害生徒側は2015年、加害者の同級生8人とその保護者、鳥栖市を相手取り、計約1億2800万円の損害賠償を求める訴訟を佐賀地裁に提訴した。

原告側は約150件について加害者側の加害行為を示し、「拷問および恐喝行為」と指摘した。さらに学校側は、担任教諭が暴行の様子を目撃していながら放置したことでエスカレートした「学校側の安全配慮義務違反」とも指摘した。

提訴後鳥栖市は態度を一転させ、「いじめ調査やその結果は、被害者保護者側の強い態度によって従わされたもの。原告側が主張するいじめの内容は過大」と受け取れる主張をおこない、「学校や教育委員会に安全配慮義務違反は認められない」とした。

また加害者側は大半の加害行為を否定した。一部認めた加害行為についても「ちょっかい、悪ふざけの範囲でいじめではない」「お金は受け取ったが脅していない」などと主張した。

佐賀地裁は2019年12月20日、加害者の行為の一部が「不法行為」にあたると認定し、加害者8人に約410万円の支払いを命じた。エアガンで撃った行為と被害者から金銭を受け取った行為について認定し、PTSD発症との因果関係を指摘した上で、エアガンで撃った2人について連帯して約380万円、また金銭を受け取った8人全員について連帯で約30万円の支払いを命じた。

その一方で、被害者が被害を訴えた行為の大半については証拠不十分として認定しなかった。認定された行為については、加害者側が自ら「その行為はあった(が、いじめではなく悪ふざけ)」と認めた範囲に限られていた。さらに認定した行為についても「悪ふざけ・遊びのたぐい」だとして、いじめとは認定しなかった。

鳥栖市と保護者への請求は棄却した。

学校側の対応については、「行為の多くは学校外や長期休業中のもので、教諭が認識したものとはいえない。いじめの被害申告や相談をしていなかった」として、安全配慮義務違反はないと判断した。

原告側は一審判決を不服として、福岡高裁に控訴した。

二審福岡高裁は2021年7月12日、加害生徒の行為を「悪ふざけ」と判断した一審判決を一部変更する形で、加害生徒8人に対して計400万円の損害賠償を命じた。加害生徒8人中5人の行為を「継続的ないじめ」と認定して、5人が連帯して計300万円の支払いを命じるなどした。その一方で残る3人については「継続的ないじめ」とは認めなかったものの、いじめに該当する行為があったとして損害賠償を命じた。また保護者と鳥栖市への賠償請求については、一審に引き続いて認めなかった。

原告側は「鳥栖市の安全配慮義務違反を認めなかったのは法解釈の誤り」「加害者のいじめ行為を認めたものの、いじめとPTSDとの関係を検討していないのは、PTSDの理解に重大な誤認がある」などとして、二審判決を不服として2021年7月21日付で最高裁に上告した。

しかし最高裁は2022年7月12日付で上告を棄却し、いじめの一部を認定したものの鳥栖市の賠償責任を認めなかった二審判決が確定した。

被害者側の申し入れ

被害に遭った元生徒と代理人弁護士は2022年9月7日、「訴訟の結果とは別に、教育的な見地からの検証が必要」として、鳥栖市教育委員会に対して再調査を求める要望をおこなった。

いじめによって元生徒が不登校に追い込まれた重大事態について、いじめの全体像を解明することと、再発防止策の検証を求めた。

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