北海道札幌市立小学校の男子児童が1988年、給食のそばを食べてそばアレルギーで死亡した事故。
経過
札幌市北区の札幌市立新琴似小学校6年生だった男子児童は、そばアレルギーと気管支喘息の持病を持っていた。担任教諭は5年生からの持ち上がりで、児童の持病の事実関係を把握していた。
1988年12月8日の学校給食では、五目そばが給食メニューとして出された。五目そばは一般には中華麺を使うことも多いが、この日に出た給食ではそば粉を使ったそば(いわゆる和そば)での提供だった。
給食の時間、担任教諭は児童に対し「家庭からそばを食べても良いという連絡が来ていないので、そばを食べないように」と指導した。しかし児童はそばを食べてアレルギー症状を発症した。
担任教諭は児童の異変に気付き、児童の自宅に電話をかけた。電話に出た母親が「早退させてください」と答えたことから、教諭は児童を早退させることにした。その際に担任教諭は養護教諭に相談せず、一人で判断した形になった。
児童は一人で自宅に帰宅しようとしたが、帰宅途上の路上で嘔吐し、その際に嘔吐物が気管をふさぐ形になって窒息死した。
訴訟
児童の両親は札幌市を相手取り、約4000万円の損害賠償を求めて提訴した。一方で札幌市は「そばアレルギーは当時一般には知られていなかったので、危険性を知るのは難しかった」などとして争った。
札幌地裁は1992年3月30日、両親の主張をほぼ認め、札幌市に1560万円余りの支払いを命じる判決を出した。判決によると、札幌市教育委員会はそばアレルギーの危険性を知ることは可能だったと判断して市の過失を認め、また担任教諭についても持病を事前に把握していたことや養護教諭に相談して付き添いを付ける義務があったなどと判断して過失を認めた。
一方で、母親は事前に給食のメニューに五目そばが出ることを把握していながら、代替食を持っていくなど の具体的対策をとらなかったことや、児童の異変の連絡を受けても迎えに行く義務を怠ったとして、過失相殺を認めた。
札幌市は控訴したが、1993年2月に札幌高裁で和解が成立した。