大阪市教育委員会は2018年度より、吉村洋文大阪市長の意向を受け、教諭の職階に「主務教諭」制度を設ける人事制度を導入する。
維新市長でもある吉村市長は「頑張っている教員を評価する」として導入の意向を表明した。
しかしその一方で、評価の過程が不透明などとして強い疑問・反発がもたれている。
指摘された問題点
37歳基準で給与据え置き?
大阪市の人事制度案では、初任者の給与を上げる代わりに、「主務教諭」の職階を導入し、37歳までに「主務教諭」に合格しなかった場合は定年まで37歳基準の給与に据え置くとしている。
また「頑張っている教員」の評価基準も不透明となっている。
そもそも、教育の評価は、特定の個人の実績だと明確に切り分けられるものではない。学校組織の集団的な活動の成果になる。
何をもって「頑張っている」と判断するのか、そこには主観的な要素が入らざるをえない。
また学力テストの点数・いじめ件数・部活動成績などの数値は、数値だから客観的だと勘違いされがちだが、教育活動のほんの一面でしかなく、数値を絶対視することで逆に、都合の悪い数字の操作(テストの点数競争での不正、いじめ隠蔽、数値を下げかねない生徒の排除など)につながるなど主観的になるという側面もある。
主務教諭の受験資格には、勤務評定がA以上という条件もあるという。
その結果、教職員間の疑心暗鬼と分断を生み、管理職にとって受けがいい教員ほどよく評価されるという結果につながりかねない。
育児休業や介護休業で不利に?
主務教諭の受験については、年間45日以上の休職・欠勤をした教員は受験資格から除外されるという規定がある。
除外規定については、育児休業や介護休業も含まれていることで、子育て世代の教員が不利になるのではないかという指摘が出された。
これでは、家庭生活の設計にも悪影響が出ることになる。育休によって不利になるということになると、女性教員が出産・育児をためらう大きな要因になる。また近年は男性にも育休取得を含めた子育て参画がいわれているにもかかわらず、男性教員の育休収得をも阻害する要因にもなる。
大阪市会でも2018年2月の市会委員会で問題視され、市教委側は「2018年度については時限的に適用しない。次年度以降は改めて制度設計の見直しを図る」と答弁した。
他業種からの転職者は不利に
主務教諭の受験資格については、教員経験年数の規定も定められている。大卒で8年・大学院修士課程修了で6年などとなっている。
このことで、30代半ば以上になって他業種から教員に転職した社会人経験者が不利になるという指摘もされている。
37歳を過ぎていても教員の経験年数が不足して受験資格が得られず、受験資格を得られるまでの間昇給が据え置かれることもあるということになる。
市会委員会での質疑
2017年2月の大阪市会教育こども委員会では、主務教諭制度の問題点について、各会派より質疑がおこなわれた。
維新・自民・公明・共産の4会派とも、育児休業などを評価からの除外対象にすることはおかしいという主張をおこなった。なお、育児休業の問題に限らず、主務教諭の制度や、教員の評価制度自体がおかしいと主張した会派もある。
大阪市は育児休業については、2018年度は除外対象に含めない時限措置をとるが、次年度以降制度を再検討するとした。