愛知県豊田市立小学校熱中症死亡事故

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愛知県豊田市立梅坪小学校で2018年7月、校外学習から学校に戻ってきた1年男子児童が校内で意識不明になり、直後に熱中症で死亡した事故。学校での熱中症事故や教室でのエアコン設置に関する問題がクローズアップされた。

事故概要

同校では2018年7月17日午前10時頃から、生活科の学習の一環として、学校から約1km離れた公園で校外学習を実施した。学校から公園までの道を片道約15分で移動し、公園で遊具で遊ぶ・花を摘む・虫を捕るなどの活動をおこなっていた。

事故当日の気候は、豊田市の観測地点で午前8時の時点で29.6度、午前9時の時点で30.4度を観測していた。11時には33.4度となり、12時には34.8度まで上昇した。最高気温は37.3度(14時4分)を記録している。

児童は出発時から、校外学習への行き道では他の児童の列から遅れるなどの状況がみられ、「疲れた」と訴え、担任教諭が手を引くなどしていたという。

その後11時30分頃に学校に戻ってきた。児童は教室にいたが、教室にはエアコンはなく、天井設置型の扇風機のみだった。

担任教諭は、椅子に座っている児童の様子がおかしいことに気づき、教室内の風通しのよい場所に移動させて様子を見ていた。しかし児童の状態が悪化したことで、養護教諭に連絡し、11時50分ごろに119番通報をおこなった。救急隊の到着時点で児童は心肺停止状態で、病院に搬送されたが死亡した。児童は熱中症を発症したとみられている。

校長と教育委員会担当者は事故を受け、同日夕方に記者会見し、事故の概要を公表した。

校長は記者会見で、担任教諭は教員2年目の若手だったことを明らかにした。また校外学習は学年(4クラス)で実施したが、当日は他にも、熱中症のような体調不良の症状を訴えて早退した児童が学年全体で数名いたことも明らかにした。

教育委員会としては、高温注意情報が出たときの学校側の対応については、特に決めていなかったとしている。

また学校側が実施した温度計測では、事故発生後の13時45分の時点で、教室の室温および運動場の温度はともには37度だったという。

専門家からの指摘

小児科医など医療の専門家からは、死亡した児童が校外学習に出発する際に「疲れた」などと訴えていたと報道されたことについて、これは熱中症での体調不良を示すサインだったのではないかと推測する見解が出された。幼い子どもは語彙が少なく、自分の体調への異変をしっかりと訴えられず、「疲れた」という表現になったのではないかと指摘している。

事故の影響

2018年は7月半ばから8月にかけて、気温が平年と比較して異常に高い状況が全国的に続き、命に関わるほどの記録的な猛暑と指摘された。

7月半ばにはこの学校だけではなく、全国的に学校での熱中症事故が相次ぎ社会問題化した。このため、学校での教室や体育館などへのエアコン設置は必須だと指摘された。

学校でのエアコン設置状況については自治体ごとに大きな差があり、教室にエアコンが完備された自治体もあれば、ほとんど設置されていない自治体もある。

文部科学省は2018年8月7日、都道府県教育委員会に対し、必要に応じて夏休みの延長や臨時休業日の設定を検討するよう求める通知を出した。

豊田市では2018年時点では、市立小中学校ともに普通教室へのエアコン設置率はゼロだった。当初は、市立中学校では2019年度中にエアコン設置を目指し、市立小学校については2019年度より順次着手して2021年度に完了する計画となっていた。しかし熱中症死亡事故を受け、当初の実施計画を前倒しし、2019年度までに市立小中学校全校にエアコンを設置することにした。

豊田市は2019年8月までに、暑さと児童の死亡との間に関係があったと認め、また学校現場に注意義務違反があったことを認め、遺族側に損害賠償金(金額非公表)を支払った。

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