埼玉県北本市立北本中学校1年の女子生徒が2005年に自殺し、背後にいじめがあったと指摘された事件。
経過
女子生徒は埼玉県北本市立小学校6年だった2004年から、同級生から「キモイ」「うざい」「死ね」などと悪口をいわれるなどのいじめを受けていた。当時の担任教諭が加害児童を指導したものの、加害者は逆恨みし、加害児童2人からトイレに連れ込まれて「便器に顔を突っ込め」と言われるなど、いじめは深刻化した。
生徒は小学校卒業後の2005年、北本市立北本中学校に進学した。しかし中学校進学後もいじめが続いた。悪口や無視、靴を隠されるなどがあったとされる。
生徒は2005年10月11日、自宅近くのマンションから飛び降り自殺した。「生きるのに疲れました。本当にごめんなさい。死んだのはクラスの一部に、勉強に、テストのせいかも。楽しいこともあるけどつらい。いやな事は何億倍もあるから」などと記されたメモを残していた。
家族はメモを受けて、いじめではないかと学校に相談した。しかし学校側は当初、いじめの調査をせず、生徒が自殺した事実関係についてもうやむやにしようとしたとされる。
家族が北本市の市長宛に陳情をおこなったことを知って初めて、市教委と学校が動いた。しかし調査内容は「学校に来るのは楽しいですか」「何か心配なことはありますか」などと、自殺した生徒に関係するいじめの事実関係というよりも、同級生の生徒自身のことを問う内容となっていたと指摘されている。
生徒の自殺後、「いなくなってせいせいした」と話す生徒がいたと指摘された。また生徒の机に「see you,the end」と落書きがされていたという。
訴訟の経過
生徒の両親は2007年2月、北本市と国を相手取り、約7700万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提訴した。国の責任については「成果主義の導入や不登校政策などの文部科学省の施策により、いじめ自殺や隠蔽を助長した」と指摘した。いじめ問題で政府の施策を問い、国を被告にした国賠訴訟は初めてだとされる。
東京地裁は2012年7月9日、「不愉快に感じることはあったと思われるが、一方的・継続的でなく、いじめではない」「遺書の内容から自殺を決意した原因を特定するのは困難」などとして、両親の請求を棄却した。
両親は東京高裁に控訴した。控訴審では、同級生がいじめの状況について証言したという。
東京高裁では和解を勧告したが、まとまらなかった。東京高裁は2013年4月25日、「友人関係の一時的な悪化はあったかもしれないが、いじめはなかった」と判断し、両親の請求を棄却した。
両親は最高裁に上告したが、最高裁では2014年9月25日付で上告を棄却した。