兵庫県宝塚市立長尾中学校柔道部顧問教諭暴行事件

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兵庫県宝塚市立長尾中学校で2020年9月、顧問教諭が部員の生徒2人に暴行を加えケガをさせた事件。

経過

宝塚市立長尾中学校の柔道部顧問教諭・U(50)は2020年9月25日夕方の柔道部の指導中、部活動OBからの差し入れとして届けられて部の冷蔵庫で保管していたアイスクリームがなくなっていたことに激怒し、部員を問い詰めた。

1年の男子部員2人がアイスクリームを食べたことを認めたとして、Uはこの2人に対して、部員約10人の前で暴行を加えた。

Uはまず生徒Aに対して、執拗に投げ技や寝技をかけるなどの暴行を繰り返した。生徒Aは絞め技をかけられて失神したが、Uはさらにビンタを加えるなどして投げ技をかけ続けるなど、約30分にわたり暴行を加えた。

生徒Aは隙を見て逃げ帰るような形で帰宅した。

次にUは生徒Bにも、同生徒のかけていたメガネを無理やり外し、同様に投げ技などの暴行を加えた。

生徒Aは背骨の圧迫骨折で全治3ヶ月の重傷と診断され、また生徒Bも首など7か所の挫傷と診断された。いずれの被害生徒も、中学校に入ってから柔道を始めた初心者だという。

その場には副顧問の男性教諭もいたが、Uのあまりの剣幕に止めに入れなかったと話している。

学校側はその日のうちに事件を把握し、学校を通じて宝塚市教育委員会にも一報が入ったとされる。Uは学校側の調査に対し、当初は「普段よりきつめの練習をした」と話したが、保護者から問い詰められて「体罰」を認めたという。

被害生徒は事件翌日「顧問教諭が怖い」として学校を欠席した。翌日以降は、生徒A・生徒Bとも、体調をみながら登校しているという。事件以降、部活には参加していない。

加害教諭の背景

Uは数学科の教科担当で、柔道三段でもある。同校には2016年度に着任し、生徒指導を担当していた。

Uは2013年までに、当時勤務していた宝塚市立宝塚中学校で、「体罰」・暴力行為による処分を計3回受けた前歴がある。

「2011年10月、柔道大会で部員へのビンタをおこない、対戦相手にも暴言を吐いた」「2012年11月、柔道部の指導中に部員へのビンタをおこなった」「生徒指導の際に生徒の胸ぐらをつかむなどし、押し倒すなどして、口の中を切るなどのケガを負わせた」として、それぞれについて、計2度にわたって訓告処分を受けた。さらに2013年10月には、「生徒指導中に生徒に頭突きをし、鼻を骨折させた」として減給10分の1(3ヶ月)の懲戒処分を受けた。

学校側や教育委員会は「事件から時間が経過しているし、アンガーマネージメント研修も受けている」などとして、Uの長尾中学校着任と同時に、柔道部顧問に就任することを容認したという。

教諭を懲戒免職に

兵庫県教育委員会は2020年11月24日、教諭の懲戒免職処分を決定した。大けがをさせた事態を重くみたことで、「指導から大きく逸脱するもので情状酌量の余地がない。免職は免れない」と判断した。過去にも3度にわたって「体罰」・暴力行為で処分を受けていたことも加味された。

また副顧問教諭についても同日付で、教諭の暴行をみていながら制止しなかったとして減給10分の1(3ヶ月)の懲戒処分とした。

教諭の逮捕・起訴

被害生徒の保護者は警察に相談し、被害届を出した。兵庫県警宝塚署は2020年10月12日、Uを傷害容疑で逮捕した。警察の取り調べに対しUは、「指導として寝技をかけたが、殴っていない」「生徒が失神したから意識を取り戻すため」などと供述したという。

神戸地検伊丹支部は2020年11月2日、Uを傷害罪で神戸地裁伊丹支部に起訴した。

2021年1月21日に初公判がおこなわれた。Uは「生徒がアイス菓子を無断で食べたことを強く指導しなければいけないと思い、感情のコントロールがきかなかった」などとして起訴内容を認めたうえで、「懲戒免職になるなど社会的制裁を受けた」として執行猶予付の判決を求めた。検察側は懲役2年を求刑して結審した。

神戸地裁は2020年2月15日、Uに対して懲役2年・執行猶予3年の有罪判決を出した。「事件への反省の意を示している」「懲戒免職などの社会的制裁を受けた」と判断し、執行猶予をつけた。

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