神奈川県茅ヶ崎市立小学校で2015年、当時2年の男子児童がいじめを受けて不登校になった事件。担任だった教諭は、いじめを認知・把握していながら見て見ぬふりをして放置していたことが指摘された。
事件の経過
被害児童は2015年5月頃から、同級生5人から「羽交い締めにされて殴られる」「押さえつけられてズボンを脱がされる」など、一方的な暴行を伴ういじめを繰り返し受けた。
担任だった女性教諭(当時28歳)はそれらの事実関係を把握しながら放置していた。
2年の学年末の2016年3月、保護者がいじめを学校に相談して発覚した。この時点では担任教諭は、学校側の聴き取りに対して「けんかになっていた認識はあるが、いじめとして気付けなかった」と回答し、保護者側にもそのように説明した。
被害児童は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、3年進級後の2016年に不登校になった。2年以上不登校状態が続いたのち、5年時の2018年に別の小学校に転校したという。
担任教諭が「いじめ放置」認める
2年時の担任だった女性教諭は2017年12月頃、学校の聴き取りに対して、「いじめだったと認識していたが『遊びの延長だ』と思い込むことで、いじめを見て見ぬふりをして何事もなかったかのように過ごしていた」「同級生たちが一方的にたたく、蹴る、追い掛ける、時には殴るなどを繰り返していたが、だんだん注意することが面倒になった」などと話し、これまでの発言を変え、いじめを知りながら放置していたことを認めた。
茅ヶ崎市教育委員会は、問題を速やかに報告しなかったことや、保護者らには学級経営がうまくいっているかのような発言をしていたことなどを問題視し、2018年2月2日付で教諭を文書訓告処分にした。
第三者委員会での調査
茅ヶ崎市教育委員会は2016年11月、第三者委員会を設置して調査にあたった。
第三者委員会は2018年2月13日、いじめの存在を認定する調査報告書を出した。
教諭が発言を翻して「いじめ放置」を認めたことについては、教育委員会から第三者委員会には口頭のみで伝えられただけで、また教育委員会が持っていた資料の大半が第三者委員会に提出されないままとなっていた。担任が発言内容を変えたことについては、この時点での調査報告書には反映されないままになっていたという。
市長は「担任の証言が反映されていないことは、調査に重大な疑義が生じている。追加調査が必要」と判断し、追加調査を求めた。
それを受けて追加調査がおこなわれたのち、2018年12月19日付で、「担任がいじめとして認識していながら必要な対応を怠ったことにより、被害児童がより深く傷つけられる一因になった」「教職員の適切な指導や支援が十分におこなわれなかったことで、事態の長期化・重大化につながった」などと新たに指摘する最終報告書が出た。
事態を重くみた神奈川県教育委員会が改めて懲戒処分を検討し、2019年3月26日付で「いじめへの不適切対応」「調査に対する虚偽回答」の問題を主に問い、教諭を停職1ヶ月の懲戒処分にした。教諭は同日付で依願退職した。
民事訴訟
被害児童と保護者は2019年10月11日、加害児童5人の親権者と茅ヶ崎市を相手取り、計3600万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。