鹿児島県薩摩川内市の中学校に勤務していた女性教諭が少なくとも2006年以降、常習的に「体罰」・暴行を繰り返した上、「体罰」で市教委から注意処分を受けた直後の2007年に教頭に昇進していたことが明らかになった事件。鹿児島県議会の議会質問でとりあげられて明らかになった。
事件発覚
2009年3月2日の鹿児島県議会で松崎真琴県議(日本共産党)が、当該教諭・Xの「体罰」問題を取り上げた議会質問をおこなった。
議会質問によると、Xは当時勤務していた中学校で、学校に隣接する畑に男子生徒を正座させた上で棒や平手で殴るなどした(2006年5月頃)、生徒4人を平手打ちした(2007年2月頃)などの行為が指摘されている。
保護者らは2007年2月、学校所在地の教育委員会にXの「体罰」を告発した。教育委員会は2007年2月にXを口頭注意処分にしたが、鹿児島県教委には暴行の事実を報告しなかった。それどころか教育委員会は鹿児島県教育委員会に対してXを教頭に推薦した。
Xは2007年4月に教頭に昇進して県内の別の中学校に異動した。Xは教頭として赴任した学校で2007年11月、当時3年生の女子生徒に「お前は邪魔だ」「学校に害になる」などと暴言を吐いた。女子生徒は暴言のショックで不登校になった上、精神的に不安定になって自傷行為を繰り返しているという。Xは2008年度も同じ学校に在籍していた。
鹿児島県教育委員会が確認したところ、Xは教諭当時の暴行や口頭注意を受けた事実を認めたものの、教頭就任後の暴言については否定したという。
鹿児島県教育委員会は、Xの2009年時点での勤務地の教育委員会と、2006年当時に勤務していた地域の教育委員会を通じて事実関係を詳細に調査するとした。
松崎議員・鹿児島県教委とも質問直後の2009年3月時点では、具体的な事件発生地域名や学校名については「被害者の特定につながる」として公表していなかった。のちに報道などで、事件のあった地域は薩摩川内市だと明らかにされた。
被害者側の訴え
被害生徒の母親は2009年3月4日、鹿児島市内で記者会見をおこない、Xの「体罰」被害の実態を訴えた。
母親によると、子どもが2006年9月に「授業中に私語をした」と疑われてXから平手打ちで4回・拳で2回殴られたうえ1回蹴られ、胸にあざができたという。また別の生徒に対するものも含めて少なくとも2006年5月からの暴行・「体罰」被害を確認しているという。
「体罰」被害を訴えた直後にXが教頭に昇進したことについて、地元教育委員会は母親らに対して「人事は既に決まっていた。話を聞いたのが遅すぎた」などと釈明したという。
この母親をはじめ被害者の保護者らは2009年2月、鹿児島県教育委員会に対して、Xへの処分・再教育や地元教育委員会への指導などを求めた要望書を提出していたことも明らかにした。
被害者側の手記
鹿児島県議会で2009年3月16日、桐原琢磨県議(県民連合)が議会質問の中で被害者の証言手記を公開し、Xの行為を「常軌を逸した体罰・暴力」などと批判した。桐原県議によると、同年3月9日に被害生徒に面会して話を聞いたのち、手記を書いてもらったという。
鹿児島県教育委員会は、Xが3月9日に入院していたことを明かした上で、「適切に対処したい」とした。
当該教師は教頭昇進後も生徒に暴言、人権救済申し立て
Xが教頭として異動した中学校では、女子生徒の保護者が2009年2月、教頭の暴言被害にあって不登校になったとして法務局に人権救済の申立をおこなっている。
保護者の訴えによると、Xは生徒に対し「あんたは一生だれからも信用されんで生きていく」などと発言するなどした。またXは保護者に対し「児童自立支援施設に入れるしかない」と言ってパンフレットを持参したという。
当該者への処分
鹿児島県教育委員会は2009年4月、Xを教頭職から外し、学校関連以外の教育施設職員として異動させた。鹿児島県教育委員会はXの「体罰」を計25件認定し、2009年6月17日付でXを訓告処分にした。鹿児島県教育委員会は2009年6月20日、県議会の答弁で訓告の事実を明らかにした。