群馬県桐生市立新里東小学校6年の女子児童が2010年に自殺した事件。いじめがあったと指摘された。
経過
群馬県桐生市立新里東小学校6年の女子児童は2010年10月23日に自殺した。遺書などはなかった。
当該児童は4年時に愛知県からこの小学校に転入したが、直後よりいじめを受けていたという。
仲良しのグループ数人ごとで食べる給食の時間に一人で給食を食べていたことなどが指摘された。児童の母親が外国人ということで、人種差別的な内容も含めた嫌がらせ発言もあったとも指摘された。
また学校では「(願いがかなうなら)学校を消したい。復讐したい」などと書かれた課題カードを提出していたとも指摘された。
女子児童はいじめ被害を訴え、家族は児童の小学校卒業・中学校入学にあわせて校区外に転居する計画を立てていた矢先だった。
児童のクラスでは学級崩壊状態が背景にあり、児童へのいじめに対する対応が十分ではなかったと指摘された。
児童の死後、児童のアルバムからは、38人中15人の児童の顔に×印がつけられたクラス集合写真が見つかった。×印がつけられていた児童の中には、この女子児童が生前『いじめ加害者』と名指ししていた児童も含まれていた。また、転校前の小学校の同級生にあてて「中学になったら、大阪に行くんだ」などと転校を心待ちにする内容が書かれた未投函の手紙も見つかった。
桐生市教育委員会は第三者委員会を設置して調査をおこなった。しかし調査委員会では2011年3月29日、「いじめが自殺の原因」とは断定できないなどとする報告書をまとめた。
民事訴訟
桐生市・群馬県への訴訟
児童の保護者は2010年12月27日、桐生市と群馬県を相手取り、計3200万円の損害賠償を求めて前橋地裁に提訴した。自殺した児童への継続的ないじめがあり、学校がいじめを放置していたことが自殺の原因だと訴えた。
群馬県・桐生市は争う方針を示した。
前橋地裁は2014年3月14日、児童へのいじめがあったと認定し、またいじめと自殺との「事実的因果関係」を認定し、桐生市と群馬県に約450万円の損害賠償を命じる判決を出した。
桐生市は控訴したが、東京高裁は和解を勧告した。市側が解決金約150万円を支払い、いじめの対応の不備を謝罪することなどを条件に、2014年9月30日に東京高裁で和解が成立した。
元同級生への訴訟
児童の保護者は、加害者とされた元同級生の女子児童とその保護者に対して約330万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。
この訴訟は2014年12月1日、元同級生らが「遺影と位牌に頭を下げること」を条件にするなどの内容で和解が成立した。慰謝料などの支払いはなかったという。
死亡見舞金訴訟
独立行政法人日本スポーツ振興センターはこの案件について、いじめ自殺で学校共済制度による死亡見舞金を支給するのに必要な「いじめと自殺の相当因果関係」を満たしていないと判断し、死亡見舞金給付を拒否した。
児童の保護者はそのことを不服とし、独立行政法人日本スポーツ振興センターに対して、学校共済制度による死亡見舞金2800万円の支払いを求める訴訟を、宇都宮地裁に起こした。
宇都宮地裁では2016年10月20日、自殺の主因はいじめだと認めた上で、「学校管理下で発生した事件に起因する死亡」に該当するとして、センターに対して、死亡見舞金2800万円全額に遅延損害金相当額を上乗せして給付するよう命じる判決を出した。
センター側は東京高裁に控訴したが、控訴審では一審判決をほぼ全面的に踏まえた形での和解を提示した。センターが死亡見舞金2800万円を支払い遅延損害金は免除する内容で、2017年2月17日に東京高裁で和解が成立した。