福岡県北九州市・私立高校いじめ自殺事件(2017年)

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福岡県北九州市内の私立高校に通っていた2年の女子生徒が2017年4月、同級生の名前を挙げていじめ被害を示唆するようなメッセージを残して自殺した事件。

経過

北九州市内の私立高校2年だった女子生徒は2017年4月17日午前10時頃、通学路のガードレールで首を吊っているところを発見され、病院に搬送されたが死亡した。

女子生徒は当日、通常通りに家を出たが、学校には登校していなかった。生徒が自殺直前、同級生3人の名前を挙げて「もし私に何かあったらこの人たちのせい」「後悔してもしらんけ」などとする内容のメッセージを「LINE」に送っていた。

生徒の遺族は、「仲間外しなどのいじめがあった」と訴えた。

第三者委員会の設置

学校側は第三者委員会を設置して調査した。学校の第三者委員会は2018年6月28日、「2017年3月の3学期終業式の日、同級生グループ4人が、この生徒をだけを外して記念撮影したこと」など、女子生徒が受けた行為の一部をいじめと認定した。しかしいじめと自殺との因果関係については認めなかった。

遺族は再調査を求め、福岡県は2018年11月までに、再調査委員会での調査をおこなう方針を決めた。

県の再調査委員会は2019年8月16日、写真撮影の件や、「昼食の時に仲間はずれにしたこと」「LINEでのやりとり」などをいじめと指摘したが、自殺との因果関係については「家庭問題や部活動での悩み」などを指摘して、いじめが原因とは認めなかった。

民事訴訟

第三者調査委員会の調査結果を受け、学校災害共済の給付業務をおこなっている日本スポーツ振興センターは、学校の教育活動に関連する災害で生徒が死亡した場合に支払う死亡見舞金を給付しない決定をおこなった。

遺族はそのことを不服として、死亡見舞金の給付を求めて福岡地裁に提訴した。

福岡地裁は2021年11月25日、遺族側の訴えを認め、センター側に死亡見舞金約2800万円全額を支払うよう命じる判決を出した。判決では、学校・福岡県いずれの第三者委員会も認定しなかった「いじめと自殺との因果関係」について、「友人関係を含む学校生活に絶望感を募らせていた女子生徒が、いじめに対する抗議などを示すメッセージを残して自殺を図ったと考えられる」として、明確に認定した。

日本スポーツ振興センターは控訴せず、一審判決が確定した。

同級生への民事調停

生徒の両親は2020年3月、いじめに関与したとされる同級生の女子生徒4人のうち3人に対して、謝罪と一定の慰謝料の支払いを求める民事調停を、小倉簡裁に申し立てた。なお、対象から外れた1人については、それ以前に謝罪を受けて和解していたという。

生徒らは当初は謝罪に応じず、争う意向だった。しかし日本スポーツ振興センターに対する民事訴訟でいじめが認定されたことなどがあり、方向転換したとされる。

生徒のうち2人について2023年2月10日付、残る1人についても2023年2月22日付で、小倉簡裁で調停が成立した。いずれも、加害生徒らがいじめの事実関係を認めて謝罪し、遺族側は慰謝料などを求めないとする内容となった。

遺族側は2023年3月17日、福岡市内で記者会見し、和解の事実関係を公表した。代理人弁護士は、「いじめをめぐる争いで、遺族側も納得した形での和解は珍しい」と言及した。

 

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