大阪府立懐風館高校「黒染め強要」訴訟

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大阪府立懐風館高校の女子生徒が2017年、「生まれつき茶色い髪の毛を黒く染めるよう教師から繰り返し強要され、授業出席を禁止された」などとして大阪府を訴えた訴訟。

事件の経過

この生徒は2015年度に懐風館高校に入学した。生徒は生まれつき髪の毛の色が茶色っぽかった。生徒は中学校時代にも髪染めを強要されていたこともあり、保護者は学校に対して配慮を求めていた。

しかし教師らは生徒に対して、髪の毛を黒く染めるよう繰り返し強要した。入学後は1~2週間ごとに指導し、その後頻度が4日前後になった。

生徒は髪の毛を黒く染めたものの、繰り返しの髪染めにより、染髪料が合わずに頭髪や頭皮が傷むなどの健康被害が出た。また教師の指導の際に、過呼吸で倒れたこともあった。

教諭らは生徒に対して、「母子家庭だから茶髪にしているのか」と差別的とも受け取れる暴言を吐いたとも指摘されている。

2年生だった2016年9月には、「髪の毛の色が黒に染まっていない」として、教師から授業や行事への参加を禁じられた。生徒はそれ以降登校できなくなり、修学旅行や文化祭にも参加できなかった。

生徒は2017年度に3年生に進級したが、事前に知らされていた所属クラスでは、クラス名簿から生徒の名前が抹消され、席も用意されていなかったという。生徒は登校できない状態が続いた。

生徒側の弁護士が学校側に問い合わせたところ、「たとえ金髪の外国人留学生でも規則で黒染めさせることになる」と説明したという。

生徒は、弁護士事務所などに教員を派遣してもらう形で授業を受け、2018年3月に卒業した。

生徒側は2017年10月までに、大阪府を相手取り、約220万円の損害賠償を求めて大阪地裁に民事提訴した。

事件の反響

この訴訟のニュースは反響を呼び、日本国内だけでなく、海外メディアでの外国語での配信も含めて、大きく報じられた。

芸能人がツイッターで「自分も生まれつき髪の毛の色が茶色いが、学生時代に黒く染めるよう強要された」と発言したり、同じような経験をした人がネットメディアで経験談を語りニュースになるなどの事例もあった。

国会質問でもこの問題がとりあげられるなどもした。文部科学省は黒染めの強要については「個別の事例については係争中になるので答えを差し控えるが、一般論としては生徒の自主性を尊重する生徒指導が重要」としたものの、大阪府が生徒の名前を出席名簿から抹消していたことは「不適切」として、大阪府に対して是正指導をおこなったことを明らかにした。

民事訴訟

大阪府は、訴訟で争う方針を示した。

大阪府は、生徒の名前をクラス名簿から抹消した理由については「不登校になっている生徒への配慮」と主張した。しかし文科省からの指導を受け、2017年11月に生徒の名前を当該クラスの出席簿に加える措置をとった。

大阪地裁は2021年2月16日、大阪府に対して約33万円の損害賠償を命じる判決を出した。頭髪指導については「校則は学校の裁量の範囲内」「黒染の強制などはない」と判断し、また教師の対応についても「生徒の髪の毛を確認した際、根元が黒色だと認識していた」と判断して、違法性を認めなかった。一方で生徒の氏名をクラス名簿から削除したことなど、生徒が不登校になってからの学校の対応については違法と判断した。

原告側弁護士は一審判決について「裁判での事実認定は教師側の主張をそのままなぞったもの。教師だというだけで証言内容に疑問が抱かれないのは納得できない」「原告の受けた被害と比較して被害認定が少なすぎる」として、対応を検討する意向を示した。

原告側は2021年3月1日付で大阪高裁に控訴した。しかし大阪高裁は2021年10月28日、一審判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。

原告側は二審判決を不服として、2021年11月11日付で上告した。しかし最高裁第一小法廷は2022年6月15日付で上告を棄却し、指導は違法ではなかったと判断した一審・二審判決が確定した。

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