福島県須賀川市立第一中学校柔道部暴行事件

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福島県須賀川市立第一中学校で2003年10月18日、当時1年生だった柔道部員の女子生徒が柔道部部長の男子生徒(当時2年生)との練習中、意識不明の重体になった事件。練習を装った暴行があった疑いも指摘された。

経過

生徒は2003年4月に同校に入学し、柔道部に入部した。2003年5月頃には、柔道部を辞めたいという意向が示されたが、生徒と保護者・顧問教員を交えた話し合いで、継続することになっていた。顧問教諭は、部内でのいじめの可能性についても疑って生徒側に聞いたが、その時点ではいじめは把握できなかったと判断したという。

生徒は2003年9月12日、練習中に後頭部を打ってケガをしていた。顧問教員はそれらの様子を見て、当該生徒に受け身などの技能が十分についていないと判断したものの、練習に際して配慮するなどの様子はなかったとされる。

そして2003年10月18日、当該生徒は土曜日の朝9時からの練習中、柔道部部長の上級生の男子生徒から「練習」として一方的に投げられるなどし、その後午前11時55分頃に意識を失った。

その際、「加害男子生徒が、この生徒を壁にぶつけるなどの暴力行為をしていた」などの複数の証言があったが、学校や教育委員会などは「そのような証言があったということは把握しているが、事実関係を断定するに至らなかった」などとした。

顧問教諭は、練習開始当初に参加者の確認をしただけで、その後は職員室に戻っていて、練習には立ち会っていなかった。正午頃、生徒の異変に気づいた別の柔道部員が、顧問教員を呼びに行ったことで発覚した。午後12時7分に学校から119番通報し、生徒は救急搬送されたが、意識不明の状態が続いた。

学校側は事件隠蔽と責任逃れに動き、被害生徒への事実無根の中傷もおこなわれたという。加害生徒は当時13歳だったため刑事責任を問えなかった。顧問教諭は業務上過失致傷容疑に問われたものの不起訴処分となった。

民事訴訟

生徒側が福島県・須賀川市・加害者の生徒を相手取って訴えた民事訴訟では、福島地裁郡山支部は2009年3月27日、福島県・須賀川市・加害者が連帯して総額約1億5554万円を支払うよう命じる判決を出した。

判決では、事件当時顧問教諭らが練習に立ち合っていなかったこと・事件の前にも女子生徒が部活動中にけがをしていたことなどをあげ、学校側が安全対策に配慮しなかった過失を指摘した。また事件後も学校側が隠蔽・責任逃れに動いたことも指摘した。

加害者生徒の責任については、加害生徒がかけた投げ技と生徒の後遺障害との因果関係は認めなかったものの、加害生徒の行為は「部活動の範囲を逸脱する暴行」と指摘された。

原告側・被告側双方とも控訴せず、一審判決が確定した。被害者の早期救済を図る目的で、須賀川市は判決確定直後、賠償金を全額市の予算から立て替えて被害者側に支払った。負担割合を算定したのち、相当額を加害者と福島県に求償することにした。

別の行政訴訟の影響

しかし、賠償金負担割合算定作業中に状況が変化した。

公立学校での事故での行政から被害者への賠償責任について、教員人事権のある県と、学校管理者の市との負担割合が争われた、福島県郡山市立中学校「体罰」事件賠償金訴訟

この訴訟に関して、市町村立学校の教師が学校で起こした不法行為での賠償責任は、教員人事権のある都道府県ではなく、学校管理者の市町村にあるとした最高裁判決が、2009年10月に確定した。

郡山市の事件での判決確定を受け、須賀川市は福島県への求償を断念した。

生徒のその後

被害生徒は事故直後より寝たきりの状態が続き、自宅などで介護を受けていた。しかし15年後の2018年9月に体調が急変し、同年9月12日に27歳で死去した。1週間後の9月20日は女子生徒の28歳の誕生日になるはずだった。

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