神戸市立東須磨小学校教諭暴力事件

神戸市立東須磨小学校(神戸市須磨区)の教諭4人が数年間にわたり、同僚の若手教員4人に対して集団いじめ・暴力行為・パワハラ・セクハラ行為を繰り返し、うち1人を2019年に休職に追い込んだ事件。

事件の経過

加害者とされる教員は、40代女性教諭H(2017年同校に着任)、30代男性教諭ST(2015年着任)、30代男性教諭SB(2015年着任)、30代男性教諭SS(2018年着任)の4人とされる。4人の教諭は学校では中心的な役割を担い、校内でのいじめ窓口担当・学年主任・若手教員への指導役などを担っていた。

被害に遭った男性教諭は、2017年度新規採用で同校に着任した。直後より加害教員グループによるいじめ・嫌がらせに類する行為があり、2年目の2018年より2019年1学期にかけて激化したとされる。

被害者によると、約50項目にわたって暴力・パワハラ被害を訴えている。

  • 2017年、新採用にもかかわらず十分な指導・援助もないまま、加害者グループから学校行事の準備をほぼ一人で担当させられる。
  • 教職員の飲み会の際、キムチ鍋の素の原液や焼肉のタレなどを大量に飲まされる。席を外した隙にソフトドリンクに酒を混ぜられ、酒が苦手な被害者は気づかずに飲んでしまう。
  • 2018年9月4日、加害者グループが被害者を校内の家庭科室に呼び出し、加害者男性教諭が被害者を羽交い締めにし、加害者女性教諭がスプーンを近づけて激辛カレーを無理やり食べさせ、被害者の顔にカレーを塗りつける。この際、加害者と指摘された4人とは別の教諭がその場にいたことも指摘された。
  • 加害者女性教諭と男性教諭1人はそれぞれ、被害者に激辛カレーを無理やり食べさせたことを笑い話にして、担任クラスの児童の前で話した。
  • 加害者グループは、障がいを持つ児童を笑いものにするような言動をおこない、それに同調しなかった被害者を攻撃した。
  • 日常的に「カス」「クズ」などと被害者に暴言を吐く。仕事上の打ち合わせの際、「クズがしゃべるな」と罵倒。
  • 暴力行為を日常的に繰り返す。被害者の足を故意に踏みつける、蹴りつける、プロレス技をかける、大型コピー機のロール紙の芯で被害者男性教員の尻をたたく、髪の毛や衣服に接着剤を付けるなど。
  • 被害者の出張前に加害者が土産購入を強要し、被害者が土産を渡すと「こんなんで好かれようとするな」と目の前で捨てる。
  • 器物損壊行為。被害者のカバンに氷を入れる、被害者の車の屋根に乗る、被害者の車に故意に飲み物をこぼす、被害者がダメージ加工のあるジーンズをはいていたことに因縁を付け「お前いちびってるから穴広げたる」とジーンズを破る、携帯電話を隠したり勝手にロックをかけるなど。
  • 被害者が児童に配布するために準備していたプリントにわざと水をかける。被害者が作成した指導案に落書きをする。
  • 被害者に対して自宅への送迎を強要する。
  • 教職員集合写真撮影の際、被害者の胸ぐらをつかみ「お前は写るな。しゃがめ」と強要する。
  • ほかの教員の前で、被害者の家族や親しい知人を揶揄するような発言を繰り返す。被害者の私生活情報を無断で言いふらす。
  • 第三者に宛てて性的な内容のLINEメッセージを送信するよう強要する。
  • 被害者に対して侮辱的なあだ名で呼ぶなどの行為を繰り返す。児童の前でも被害者を中傷し、「あの教師の言うことは聞くな」「反抗してクラスをつぶせ」などと発言。

また加害者グループは、被害教員のほかにも少なくとも3人の別の若手教員に対しても、暴力・暴言・ハラスメント行為を繰り返していたとも指摘された。

  • 別の教諭の頭を強くたたく、尻を蹴るなど。
  • 運動会の教職員参加競技中に、加害者グループの男性教諭の1人が、ペアを組んだ被害者女性教諭に必要以上につかみかかったり引きずり倒すなどしてケガをさせる。
  • 別の教諭にも侮辱的なあだ名を付け、児童の前で「この教師を(自分たちで付けたあだ名)と呼んで」と話す。
  • 女性教諭の体型をからかう、下着のことを執拗に話題にする、生理周期を探って笑い話にして言いふらすなどのセクハラ行為。

いじめ被害の訴え

被害教員は2018年6月時点で、当時の校長にいじめ・ハラスメント被害を訴えていた。しかし対応されなかっただけでなく、当時の校長は被害者に対して「(加害者に)お世話になっているんだろう」と威圧する発言をおこなったという。

また当時の校長は在任中、被害教員に対して強い態度で叱責する、別の教員にも「つぶしてやる」などと威圧的態度をとるなどパワハラがあったという。

当時の校長は2016年から教頭として同校に勤務し、2018年度に同校校長に昇任したのち、2019年度には神戸市立高津橋小学校(西区)校長として転任した。当時の校長は、加害者の教師4人のうち男性教諭2人と近い関係だったことが指摘されている。当時の校長は、加害者教諭の一人STと、前任校でも同じ小学校に勤務していたことがある。

また同校の教員からは、前校長について「教員の好き嫌いが激しい」などと評されていた。

同じ学校の複数の同僚教員は2018年の時点でいじめ・ハラスメント行為に気づき、当時の校長に訴えていたものの、加害者グループが校長から指導力を評価されていることなどで、もみ消されるような形になっていた。

校長交代後の2019年6月、複数の同僚教員が「当該教員がハラスメントを受けている」と学校側に伝えた。校長(2018年度同校教頭として着任、2019年度に校長に昇任)は2019年7月初旬、被害教員への聴き取りをおこなっていじめ・ハラスメントを把握した。被害教員は「ロール紙の芯で殴られた」「他の教員の前で、家族を侮辱する発言を大声でされた」「携帯電話を隠された」などと訴えた。

校長は加害者にも聴き取りをおこない、加害者の行為を確認した。加害者のうち男性教員3人は「悪ふざけだった」「面白かった」などとして被害者への行為を認めた。一方で女性加害者教員は「被害者との関係は良好だったと認識していた」などと話したという。

校長は加害者に口頭注意したというが、神戸市教育委員会には「人間関係のトラブルがあったが、解決した」と報告していた。校長は、「尻をたたかれてミミズ腫れができた」という被害者教員からの暴行被害訴えを把握しながら、市教委には報告していなかった。

事件発覚後、加害者は被害者に対して、事件発覚に逆恨みして「謝るくらいなら、いくらでも謝ったるわ」「なんで自分が指導されなあかんねん」「おまえが全部言ったんやろ」「いじられてなんぼ。こんなんでいじめとは思わんでな」などと被害者に暴言を吐き、威圧するような態度をとったという。

事件が報道される

被害教員はいじめ被害によって2019年4月頃から精神的に体調を崩し、また2019年6月の校長の指導後に加害者が居直って暴言を吐いたことで体調を悪化させ、2019年9月より病気休職を余儀なくされた。被害教員の関係者から連絡を受けた神戸市教育委員会は、加害教員の集団いじめ・ハラスメント行為について調査をおこない、いじめがあったことを確認した。

学校側は2019年10月1日付で加害者4人を学校現場から外した。「二度と当該校の子どもに接触させない」としている。

事件は2019年10月4日にマスコミ報道された。神戸市教育委員会は同日に記者会見を開き、事件の概要を公表した。加害者教員による暴力行為やハラスメント行為があったことを認定した。また2019年10月7日付で、市教委事務局や他校から人事異動で教員を着任させる措置をとった。

神戸市教育委員会と校長は2019年10月9日に記者会見を開き、事件の経過を改めて公表した。校長は「事件は引き続き調査中」としながら、この時点で把握している内容を説明した。

校長は「2018年度に教頭として赴任したときから、いじめ・パワハラに関与したとされる教員を含む複数の教員が、同僚教員を呼び捨てにする・ものを渡すときなどに乱暴な態度をとるなどの振る舞いをしていて、教職員の雰囲気が悪いと感じていた」と話した。「被害教員が2018年時点で、当時の校長にパワハラ被害を訴えていたことは知らなかった。校長交代の際の引き継ぎなどはなかった」ともした。

報道などでは最年長の女性教諭、もしくは若手教員への指導役の中心となっていた30代男性教諭が、いじめ・パワハラの首謀者格ではないかと指摘されている。その件について校長は「詳細は今後教育委員会が調査するが、現時点までの調査の範囲では、一連のパワハラの首謀者格・リーダー格は確認できず、加害者教員はそれぞれ個別にいじめ・パワハラ行為をおこなったと認識している」とした。

被害届を提出

被害に遭って休職を余儀なくされた男性教諭の代理人弁護士は2019年10月11日、加害教諭らの行為は強要や暴行・器物損壊にあたるとして、警察に被害届を出した。「激辛カレーを無理やり食べさせられたこと」「殴る蹴るなどされたこと」「送迎を強要されたこと」「車を傷つけられたこと」「カバンに水を入れられたこと」など、約50件の行為を対象にしているという。

加害者教員による児童への暴力行為

加害者教員は、児童への暴力行為をおこなったとも指摘されている。

加害者女性教諭は、担任クラスで児童に対して「嫌いだ」と発言したことや、児童の答案用紙を破り捨てたこと、2017年度には当時担任していた3年生のクラスで「音楽の授業で忘れ物をした」として児童の椅子を後ろから引き転倒させたうえに胸ぐらをつかんで立たせたことなどが指摘され、それぞれ学校側に苦情が出ていたという。

加害者男性教諭のうち1人は2016年度、当時担任していた6年のクラスで体育のバレーボールの授業中、「お前はコートに入ってくるな」などと男子児童の体を押し、その際に転倒させて骨折させたことがあった。この事件は「体罰」・暴力行為ではなく偶発的な事故として扱われ、処分などはおこなわれなかったという。