神戸市立東須磨小学校教諭暴力事件

神戸市立東須磨小学校(神戸市須磨区)の教諭4人が遅くとも2017年頃から(さらにそれ以前からという指摘もある)2019年までの数年間にわたり、同僚の若手教員4人に対して集団いじめ・暴力行為・パワハラ・セクハラ行為を繰り返し、うち1人を2019年に休職に追い込んだ事件。

関係教員

暴力・ハラスメントの被害者は、神戸市教委が確認した範囲では4人いるとされる。このほかにも被害を訴えた教員が複数いるとも指摘されている。

加害者は、40代女性教諭・長谷川雅代(以下「H」と表記)、30代半ばの男性教諭・蔀俊(以下「ST」と表記)、30代半ばの男性教諭・柴田祐介(以下「SB」と表記)、30代後半の男性教諭・佐志田英和(以下「SA」と表記)の4人とされる。また芝本力・2018年度校長(以下「SC」と表記)も、加害者に実質的に加勢するような形になり、ハラスメントの雰囲気を作ったのではないかと指摘されている。

加害者とされる4人の教諭は学校では中心的な役割を担い、校内でのいじめ窓口担当・学年主任・若手教員への指導役などを担っていた。

またSC校長は2016年度に同校教頭として着任し、2018年度に校長に昇進した。STでは前任校でも同じ学校に勤務していたことなど、加害者グループと近い関係にあったことが指摘された。

加害者グループのリーダー格は、自らもハラスメント行為をおこないほかの加害者教員をけしかけたとも指摘された最年長の女性教諭Hとする見方と、一番激しく暴力的行為を繰り返していた男性教諭STとする見方の2つが指摘されている。

加害教諭は職員室でも公然と暴言や暴行を繰り返していたという目撃証言もある。SC2018年度校長、また後任のN2019年度校長とも、同校の教頭から昇任したことで、教頭時代は職員室に自席があり異変に気づかないのはおかしいとも指摘された。

2017年に新採用で着任したX1教諭(男性)は、着任直後の2017年から加害者グループからいじめ・パワハラを受け、2年目の2018年より2019年1学期にかけて激化し、2019年2学期より体調を崩して休職に追い込まれた。

休職に追い込まれた被害者X1教諭は、加害者4人から「暴言を受ける」「ロール紙の芯で殴られる」「送迎を強要され、車を傷つけられる」「児童に対して、あの教師の言うことは聞くな・反抗してクラスをつぶせなどと悪口をけしかけられる」「家族や友人関係を中傷される」「性的な内容のLINE送信を強要される」など約50項目にわたって暴力・パワハラ被害を受けたと訴えている。

またX1教諭の着任以前から、同じ加害者グループがほかの複数の教員に対して「暴言を吐く」「不快なあだ名で呼ぶ」「運動会の教職員参加競技で故意に引きずり倒してケガをさせる」などのパワハラ行為やセクハラ行為をおこなっていたとも指摘されている。

東須磨小学校 事件相関図

事件相関図

事件の経過

2015年度、加害者STと加害者SBが着任した。

東須磨小学校は、2017年度に人権教育推進の研究指定校となっていた。このことを背景に、2015年当時、2年後の指定校での発表に向けて、人権教育の研究発表・実践体制を準備し強化することを構想した当時のF校長からの要請・要望があり、神戸市の小学校教員で作る「人権教育部会」セミナーに積極的に参加していたSTに白羽の矢が立ち、STの東須磨小学校への赴任が決まったと指摘された。

殴るなどの暴力行為はSTが中心となり、SBもそれを煽っていたとも指摘された。またST・SBについては、ほかの被害者教員へのセクハラ行為も指摘された。

STは被害者X1教諭に対して自宅への車での送迎を強要し、その際に被害者の車の屋根の上に乗ったり、ドアを開けずに窓から無理やり出るなど車を傷つける行為をおこなった。その様子をSTの妻が撮影したとされ、映像が公開された。

2017年度に加害者Hと被害者X1教諭が着任した。HとX1教諭は2017年度に同じ学年を担当し、Hが先輩教員として指導役となった。当初は関係は悪くなかったとされるものの、HがX1教諭のプライベートに関することをあげつらうなどしたことで関係が疎遠になって悪化したとされる。HはX1教諭に対して、暴力行為、家族を中傷する、「あの教師の言うことは聞くな。反抗してつぶせ」とけしかけるなどの行為をおこなった。報道によるとHは前任校でも、気に入らない同僚教員について「あの教師の言うことは聞くな」などと児童をけしかけていたと指摘された。

2018年度に加害者SAが着任した。当初は中立的な立場だったとされるが、いつしかいじめ加害者グループに加勢し、被害者を後ろから殴るなどの行為も加えた。

2018年9月に発生した「激辛カレー事件」では、加害者グループが被害者教員を家庭科室に呼び出し、加害者STがX1教諭を羽交い締めにして、加害者Hがスプーンを口に近づけて激辛カレーを無理やり食べさせた。その場には加害者SBも同席してはやしたてていた。さらに加害者は別の被害者教員も呼び出して、その様子の動画撮影を強要していた。

校長への被害訴え

X1教諭は2018年時点で、当時の校長SCにいじめ・ハラスメント被害を訴えていた。しかし対応されなかっただけでなく、校長は「(加害者に)お世話になっているんだろう」と威圧する発言をおこなったという。

また校長SCは、教頭時代(2016~17年度)も含めて在任中、被害教員に対して強い態度で叱責したり飲み会参加を強要する、別の教員にも「つぶしてやる」などと威圧的態度をとるなどパワハラがあったという。

同じ学校の複数の同僚教員は2018年の時点でX1教諭へのいじめ・ハラスメント行為に気づき、当時の校長に訴えていたものの、加害者グループが校長から指導力を評価されていることなどで、もみ消されるような形になっていた。

事件が発覚

2018年度、SC校長は高津橋小学校校長として転任し、後任校長にはそれまで同校で教頭を務めていた女性Nが昇任した。

校長交代の際、パワハラ被害訴えに関する引き継ぎはなかったとされる。

校長交代後の2019年6月末~7月初め頃、複数の同僚教員が「X1教員がハラスメントを受けている」と学校側に伝えた。N校長は2019年7月初旬、被害教員への聴き取りをおこなっていじめ・ハラスメントを把握した。

校長は加害者にも聴き取りをおこない、加害者の行為を確認した。加害者のうち男性教員3人は「悪ふざけだった」「面白かった」などとして被害者への行為を認めた。

一方で女性加害者教諭Hは「被害者との関係は良好だったと認識していた」などと話したという。

校長は加害者に口頭注意したというが、神戸市教育委員会には「人間関係のトラブルがあったが、解決した」と報告していた。校長は、被害者教員からの暴行被害訴えを把握しながら、市教委には報告していなかった。

事件発覚後、加害者は被害者に対して、事件発覚に逆恨みして被害者に以下のような暴言を吐き、威圧するような態度をとったという。

  • H「君たちに話しかけたらパワハラになるからな」
  • ST「クソやな。X1センパイの後ろには校長というエライ人がいるから」
  • SB「校長チルドレンや。ママによしよししてもらえ」
  • SA「謝るんやったら土下座でも何でもやったるわ」
  • (発言者不詳)「なんで自分が指導されなあかんねん」「おまえが全部言ったんやろ」「いじられてなんぼ。こんなんでいじめとは思わんでな」「あいつなめてるな、逆にこっちが訴えたろか」など。

被害者教諭が倒れる

X1教諭はハラスメント被害によって2019年4月頃から精神的に体調を崩し、嘔吐・睡眠障害・動悸などの症状が出るようになった。また2019年6月の校長の指導後に加害者が居直って暴言を吐いたことで体調を悪化させた。

2019年9月1日、X1教諭が遺書のようなメモを実家に残しているのが見つかった。またその直後、「X1教諭が呼吸困難状態になって意識朦朧としている」と教諭の友人から家族に連絡があり、家族が病院に連れて行った。医師は「自殺を図ったわけではないが、過呼吸がひどい状態。希死念慮もあり、自死行為の危険性がある」として入院治療させることにした。そのまま翌9月2日の2学期始業式より出勤できなくなり、病気休職を余儀なくされた。

X1教諭の関係者は2019年9月2日に神戸市役所を訪問し、一連の暴力・ハラスメント行為の被害を訴えた。神戸市教育委員会は調査をおこない、加害者教員の暴力行為があったことを確認した。

被害者側の代理人弁護士は加害者側に警告書を出そうとしたが、学校側は被害者側弁護士に加害者の自宅住所情報などを一切教えなかった。やむなく学校宛に警告書を郵送して「手渡してほしい」と校長に依頼した。

学校側は2019年10月1日付で加害者4人を学校現場から外した。「二度と当該校の子どもに接触させない」としている。

事件が報道される

事件は2019年10月4日にマスコミ報道された。神戸市教育委員会は同日に記者会見を開き、事件の概要を公表した。加害者教員による暴力行為やハラスメント行為があったことを認定した。

神戸市教育委員会と校長は2019年10月9日に記者会見を開き、事件の経過を改めて公表した。校長は「事件は引き続き調査中」としながら、この時点で把握している内容を説明した。校長は「被害教員が2018年時点で、当時の校長にパワハラ被害を訴えていたことは知らなかった。校長交代の際の引き継ぎなどはなかった」などと話した。

文部科学省は2019年10月15日、亀岡偉民文科副大臣、佐々木さやか文科政務官らが神戸市役所を訪れて教育長と面談し、早期の事実解明と加害者への厳正処分を求めた。

学校は2019年10月16日に保護者説明会を開いた。説明会では、事件によって児童4人がショックを受けて登校できない状態になっていると明らかにされた。事件のあった家庭科室は、映像をみて体調を崩す児童が出たことなどから改修を検討しているとも言及した。説明会では、加害者4人の「謝罪文」が代読されたが、加害者本人はいずれも「体調不良」として出てこなかった。

神戸市教育委員会は2019年10月17日、第三者委員会を設置した。

被害届を提出

被害者X1教諭の代理人弁護士は2019年10月11日、加害教諭らの行為は強要や暴行・器物損壊にあたるとして、警察に被害届を出した。「激辛カレーを無理やり食べさせられたこと」「殴る蹴るなどされたこと」「送迎を強要されたこと」「車を傷つけられたこと」「カバンに水を入れられたこと」など、約50件の行為を対象にしているという。

兵庫県警は2019年11月までに、加害者教員への任意での事情聴取を始めた。