栃木県鹿沼市立北犬飼中学校3年だった男子生徒が1999年に自殺し、背後に同級生からのいじめがあったと指摘された問題。訴訟では、いじめがあったことは認めたものの、いじめと自殺との因果関係を認めない判決が最高裁で確定した。
事件の経過
栃木県鹿沼市立北犬飼中学校3年の男子生徒は1999年11月26日、自宅で自殺した。遺書はなかったが、同級生の男子生徒2人からのいじめがあったと指摘された。
1999年4月、この生徒は男子生徒2人から、同級生の前でズボンを下げられるなどした。担任教諭はこの事実を把握しながら、対応を取らなかった。その後もいじめが続き、1999年9月には、同じ加害生徒から暴行を受けた。
生徒は1999年11月上旬以降登校できない状態になっていた。
鹿沼市教育委員会が設置した調査委員会では、「いじめが自殺の原因かどうかは不明」とする報告書を出した。
民事訴訟
生徒の家族は2001年11月までに、加害生徒2人とその保護者・鹿沼市・栃木県を相手取り、約1億1000万円の損害賠償を求める民事訴訟を宇都宮地裁に提訴した。「学校はいじめの事実を知りながら、防止措置をとらなかった」と訴えた。
被告側はいずれも、事実関係を争う方針を示した。
宇都宮地裁は2005年9月29日、いじめの事実と学校側の責任は認めて約240万円の損害賠償を命じる判決を出した。しかしその一方で、「いじめから自殺まで5ヶ月以上あった。進学に悩んでいた」などとしていじめと自殺との因果関係を認めなかった。
原告側は、いじめと自殺との因果関係が認められなかったことを不服として控訴した。
加害生徒側とは、2006年7月に、加害者側が和解金240万円を支払う内容で和解が成立した。
東京高裁は2007年3月28日、一審判決を変更して認定範囲を広げ、鹿沼市と栃木県に約860万円を支払うよう命じる判決を出した。高裁判決では、いじめが原因でうつ病を発症したことなども新たに認定した。損害賠償額は1100万円と算定した上で、加害生徒側との和解が成立したことを踏まえて和解金相当額を差し引き、860万円の損害賠償が相当とした。
高裁判決ではいじめの認定範囲が広がったものの、一審に引き続いていじめと自殺との因果関係を認定しなかった。またうつ病発症や自殺までは予見できなかったとも判断した。
原告側は、いじめと自殺との因果関係認定を求めて上告をおこなった。しかし最高裁は2008年9月30日付で上告を棄却し、二審東京高裁判決が確定した。