神戸市垂水区の神戸市立中学校で2016年、当時3年の女子生徒が自殺し、背景にいじめがあったと指摘された問題。教育委員会の不適切対応が問題になった。
事件の経過
神戸市立中学校3年だった女子生徒は2016年10月6日、登校途中に神戸市垂水区内で自殺した。
生徒は1年の頃からいじめを受け、学級内で暴言を受ける・無視される・ネットに中傷を書き込まれるなどの行為があったという。3年時には担任教諭の学級経営を背景にクラス内での序列が発生し、足をひっかけられる・体育祭の練習中に暴言を受けるなどの行為があったとされる。
これらの行為について、いじめと認識して対応した教員はいなかったとされる。
神戸市教育委員会が設置した第三者委員会では当初、いじめの存在を指摘したものの、いじめと自殺との因果関係を認めないという結論を出した。
2018年4月に遺族側が神戸市長に再調査を求め、再調査委員会が設置された。
再調査委員会は2019年4月、いじめと自殺との因果関係を認める報告書を出した。再調査委員会では、集団的ないじめがあったと認定し、またいじめと自殺との因果関係も認定した。担任の学級運営の問題についても指摘した。
メモ隠蔽問題
学校側は事件直後に同級生から聴き取りをおこない、「いじめがあった」とするメモを残していた。
その後、同級生からの聴き取りがあったことを知った遺族から聴き取り内容に関する問い合わせがあった。「メモの存在が明らかになることで、遺族からの反発を受ける」と懸念した校長が、2017年3月に市教委に相談した。首席指導主事は「すでに遺族への情報開示作業は終わっているので、いまさら出せない」「第三者委員会に情報はすべて伝達されているので出す必要もない」「遺族から情報開示請求を受けた場合、マスキング処理作業の手間などがかかる」などとして、校長に対して「メモは破棄した」として隠蔽するように指示した。
第三者委員会の調査では2017年8月、メモについて「破棄された」と記した。
しかし調査報告書の内容を知った同校の教師が、「メモは残っている。事件後に異動した当時の担当教員から引き継ぎを受けて保管している」と、事件後に着任した後任校長に申告した。それを受けて校長から市教委担当者に連絡した。しかし神戸市教育委員会は調査せずに放置していた。
2018年3月に後任校長が再び神戸市教委担当者に申告した。市教委担当者がメモの現物を確認した上で、2018年4月になってメモの存在を報道発表した。
メモに関する調査の中で、首席指導主事が隠蔽を指示していたことが発覚した。神戸市教委は2018年6月3日、隠蔽の事実関係を報道発表した。
神戸市教育委員会は2019年1月11日付で、メモ隠蔽問題について、関与した教育委員会幹部への処分をおこなった。隠蔽を指示した首席指導主事を停職3ヶ月の懲戒処分とした。また「消極的な調査にとどまった」として学校教育部長(処分時は別部署に異動)を減給処分、教育次長ら3人を戒告処分にした。担当課長(処分時は別部署に異動)は文書訓戒の行政処分とした。また退職者についても、当時の教育長は報酬月額3分の1を自主返納し、また当時の校長は減給10分の1・3ヶ月相当と指摘した。
裁判外で和解が成立
遺族側と神戸市は、訴訟外での解決を目指して話し合いを進めていた。話し合いがまとまり、神戸市が和解金約2000万円を支払う内容での和解が成立し、2020年2月25日の神戸市会で関連議案が全会一致で可決した。
神戸市教育委員会は2020年2月28日付で、当該校でのいじめの対応に不十分な点があったと指摘し、当時の校長を文書訓戒相当と指摘した。元校長についてはすでに2019年1月の時点で、メモへの不適切な対応で減給相当と指摘され、当該者が相当額を自主返納しているとして、2020年2月の処分相当とする指摘に対しては特段の対応は求めないとした。