愛媛県今治市立中学校1年の男子生徒が2006年に自殺し、背景にいじめが指摘された事件。
経過
愛媛県今治市立中学校1年の男子生徒は2006年8月17日、自宅近くの道路の電柱にローブを掛けて自殺した。当日は登校日の前日だったという。
生徒は遺書を残していた。遺書には「最近生きていくことが嫌になってきました。クラスでは『貧乏』や『泥棒』と言う声がたえず響いていて、その時は悲しい気持ちになります。それがもう3年間も続いていて、もうあきれています。それに、毎日おもしろおかしくそいつらは笑っているのです。」などと、いじめを受けていたことを示唆する内容が記されていた。いじめ加害者についての記載はなかった。
生徒の通っていた学校は島嶼部にあり、1学年1クラス・小中学校通じて9年間同じ顔ぶれの小規模校だという。
生徒は小学生の頃からいじめを受けていた。中学校進学後の2006年4月に校内で実施された無記名アンケートでは「いじめられている子がいる」という匿名の指摘があり、学校側は生徒の動向に注意を払っていた。しかし学校側は、いじめの具体的な兆候は発見できなかったとされる。
災害共済給付制度の改正へ
遺族と今治市教育委員会は、学校共済の死亡給付金を申請した。独立行政法人「日本スポーツ振興センター」は2007年6月までに、当時の基準にのっとり、自殺場所が学校管理外として給付金不支給の決定を出した。
今治市教委が不服審査をおこなった。また当時いじめ問題が社会的に問題化した時期で、同時期に発生した福岡県筑前町立三輪中学校いじめ自殺事件(2006年10月)でも同様の理由で不支給決定をしたことなどが重なり、「いじめ自殺とされた場合でも、自殺場所が学校外だと死亡給付金が支給されないという規定は不備ではないか」とする指摘がされた。
文部科学省は2007年7月6日付で、学校災害に対して支払われる共済給付制度の運用を改善する内容の省令改正をおこなった。学校の教育活動に起因する自殺の場合は、自殺場所が学校外でも死亡見舞金を給付できるように改正する内容。省令改正時点から2年前までに発生した事件についても遡及して適用できるとした。このことにより、今治市の事件にも死亡給付金が支給された。