熊本県立高校いじめ自殺事件(2018年)

スポンサーリンク

熊本県北部の熊本県立高校3年だった女子生徒が2018年5月、いじめ被害を訴えるメモを残して自殺した事件。いじめの事実関係、いじめと自殺との因果関係、学校側の対応の不適切さが、第三者委員会で認定された。

事件の経過

熊本県立高校3年だった女子生徒は2018年5月17日、午前中で学校を早退し、「同級生から『死ねばいい』などの暴言を受けた。誤解なのに。とても苦しかった。もう死にたい」などと記したメモを残し、自宅で自殺を図った。家族が気づいて病院に搬送したものの、翌5月18日に死亡した。

生徒は同級生から暴言・嫌がらせを受けていたという。

生徒はかねてから、「インスタグラム」のフォロワー数の多さを妬まれていたり、「LINE」での人間関係などについても悩んでいたとされる。

2018年5月、別の下級生男子生徒が「インスタグラム」に動画をアップした。その動画に女子生徒が映り込んでいたことに同級生が気づき、同級生数名からこの女子生徒へのいじめ・嫌がらせが起きた。

加害者は、被害者女子生徒と交際していたとされる3年男子生徒のところに行き、動画を見せて「これどう思う?」などとあしざまに言い立てた。また授業中には同級生5人が被害者女子生徒に対して、「死ねばいい」「視界から消えてほしい」「よく学校来れるね」「彼氏いるなら彼氏を大事にせなんやん」などと悪口を言い立てた。さらに加害者グループはこの女子生徒を、動画をアップした下級生男子生徒のところに連れて行き、「動画に映り込んだのは偶然なのか」と責め立てる行為もおこなった。

女子生徒は2018年5月17日、同級生から悪口を言われた直後、担任教員に早退届を出した。生徒は涙目になっていたというが、担任は深く事情を聴かず、また異変を家族に伝えることなどをせずにそのまま受理した。

生徒は帰宅後に自殺を図り、死亡した。

第三者委員会の調査

熊本県教育委員会は2018年5月28日に記者会見を開き、当該自殺事案を公表した。当時の発表では、生徒が2年時の2017年11月に学校がおこなったいじめ調査では当該女子生徒からのいじめ被害の訴えは確認できなかった・現時点ではいじめは把握していないとした上で、生徒の家族から「いじめが原因ではないか」という訴えを聞いたとした。

熊本県教育委員会では2018年6月に第三者委員会を設置し、調査にあたった。一方で第三者委員会では、委員6人中3人が「事案の関係者と関係があり中立性が保てない」「体調不良」などとして途中交代するなどの異例の状態となった。

第三者委員会では2018年12月20日に中間報告をまとめた。女子生徒の遺書の内容や家族の訴えは大筋で事実だと確認し、女子生徒に対する暴言など9件の行為を確認したと言及した。それらの行為がいじめに該当するかの評価はこの時点では保留し、引き続き検討するとした。

第三者委員会では2019年3月26日に最終報告書を答申し、女子生徒の受けた行為5件をいじめだと認定した上で、いじめと自殺との間に因果関係があると判断した。

家族側は、いじめ認定の部分についてはおおむね納得しているとした一方で、「学校側の対応については十分解明されていない」という指摘を出し、再調査を要請した。熊本県は2019年5月21日、知事部局で調査委員会を設置して再調査をおこなうことを発表した。

再調査に当たった熊本県の調査委員会は2020年4月30日、学校側の対応の不備があったとする報告書をまとめた。

生徒が自殺を図った当日の授業中に「死ねばいい」などの暴言があったことについて、授業担当の教諭は「発言は聞こえていたが、具体的な内容まで理解できなかった」と証言したという。このことについて調査委員会では、「授業担当教諭は、生徒の自殺後すぐに当時の状況を振り返り、記録に残す必要があった」と指摘した。

また早退届に対応した担任教諭については、生徒は普段は早退はほとんどなかったことや、生徒が涙目になっていることなど異変があったことをあげて、「普段とは異なった態度をもう一歩深く掘り下げ、迎えに来た親族に伝えることはできたのではないか」と指摘した。

学校の対応については、初動の対応が錯綜し遺族からの不信感を招いたなどとして、重大事態を想定した研修や外部専門家との連携など、対策の強化を提言した。

卒業アルバムでの対応

学校側は、当該女子生徒と同学年の生徒の卒業にあわせて卒業アルバムを作成した。しかしそのアルバムの編集の際、当該女子生徒の個人顔写真を掲載せず、行事などの写真についても当該女子生徒が写っていないものを選んで掲載したという。

学校側は「(この時点では報道などでは非公表扱いになっていた)当該女子生徒の氏名や顔写真が外部に流出することを不安視した」としている。

学校側は、「遺族との面談の日程が取れなかった」として卒業アルバムに関する遺族の意向を聞かないまま、2019年2月になって、できあがった卒業アルバムについて「当該女子生徒を掲載しない措置をとった」とする連絡をおこなった。しかし遺族は「掲載してほしい」という意向を示し、学校側は急きょ当該女子生徒の写真を掲載した卒業アルバムを作り直し、2019年3月1日の卒業式で配布した。