大阪市平野区の大阪府立東住吉総合高校で2015年5月、当時1年の男子生徒が帰宅途中に自殺し、背後には直前の学校での不適切指導があったと指摘された事件。
遺族側は、不適切指導が原因の「指導死」として提訴したが、一審判決では請求を棄却した。
経過
大阪府立東住吉総合高校1年だった男子生徒は2015年5月15日午前、所属するクラスで英語の授業を受けていた際、別の男子生徒が授業中に立ち歩いて私語をしているのを見かねて注意した。
しかし相手の生徒が注意に逆上し、この生徒の方へ向かってきたことでもみ合いになった。この生徒は相手の生徒から胸ぐらをつかまれて押し倒されるなどの暴行を受けた。一方でこの生徒ももみ合いの際に殴り返すなどした。
しかし学校側は「この生徒が先に手を出した」として、同日午前10時頃に生徒を広さ3畳ほどの別室に連れて行き、午後6時頃まで約8時間にわたり事情聴取をおこない、反省文を書くように迫った。その際、教諭らが入れ替わりでこの生徒を監視していた。その間に学校側は、この生徒に対して停学5日の処分を決めていた。
生徒は帰宅を許されてから約30分後の同日午後6時30分頃、大阪市住吉区の南海高野線踏切で列車に飛び込み自殺した。
民事訴訟
生徒の家族は、「学級崩壊のような状態を見かねて注意したのに、悪いことをしたと決めつけられ、弁解の余地も与えられなかった」「監禁されて反省文などを強要されたのは、『体罰』に相当する」「教諭らの行為は指導とは呼べない。人格を否定されたことが自殺の原因」などとして、大阪府を相手取り約7800万円の損害賠償を求めて、2016年5月に大阪地裁に提訴した。
大阪府は、生徒に8時間別室指導したことは認めたものの「反省文を書かなかったための指導で、監禁ではない」と主張するなどして、請求棄却を求めて争った。
大阪地裁は2019年3月27日、原告側の請求を棄却する判決を出した。約8時間にわたって別室で事情聴取や指導などがおこなわれたことは「適切とは言いがたい」と指摘しながらも、「事実確認に時間がかかり、反省文の作成も進まなかったため」としてこの行為を正当化した。指導についても、「相手の生徒を注意したことはよいとしながら、暴力について指導した。非難や叱責をした形跡もない」と判断し、教員らの行為は通常の教育的指導の範囲だとして過失はないとした。また生徒の自殺予見可能性についても「予見は不可能」と判断した。