大阪府堺市立中学校に通っていた女子生徒が2021年度、いじめを受け、一時不登校になった事件。
経過
生徒は2021年、当該中学校に入学した。当該校は2つの小学校から進学するが、この生徒は別の小学校から入学していた。
生徒は入学直後より、同級生6人から暴言を受けるなどのいじめを受けた。
生徒は、「顔がキモい」「ブサイクが移る」などと日常的に暴言を受けたという。体育の時間には、「走り方がきもい」と言われた。また、生徒の弁当をのぞき込んだ加害生徒が「ごはんがまずそう、おばあちゃんみたい、冷凍食品ばっかり」などと中傷した。生徒が別小学校の出身であることで、加害生徒の一人は「受験失敗組が何言ってんねん、なんでこんな学校来てん」などと発言した。
消しゴムなどの文房具を取られる、授業のプリントをこの生徒に渡さないようにされるなどの行為もあったという。
少なくとも2021年5月頃から毎日のように、そのような行為が繰り返されたと訴えている。
学校では2021年7月に生徒アンケートが実施され、被害生徒はこのアンケート用紙にいじめ被害を訴えた。このことで、学校側はいじめだと認知した。
担任教員はこの生徒を個別に呼び出して話を聞いたが、被害生徒が「大ごとにしたくない」と答えたことなどで、詳細については深く確認しないままになったという。
教員が事情を聴いた翌日、生徒は早退し、その後2日ほど欠席した。学校側から連絡を取ったところ、保護者から「容姿をからかわれている」などのいじめを受けたという訴えがあった。
連絡を取った翌日、生徒は登校した。担任教員が生徒に改めて聴き取ったが、生徒は、「小学校時代に、教員の指導で悪化したトラウマがある」とうかがわせる形で、加害生徒への個別指導などは渋ったという。担任は小学校時代の話など生徒の訴えの背景については十分に受け止められないまま、関係生徒の名前を出さずにクラス全体に指導することにした。
生徒は1学期の終業式まで登校したが、精神的に限界に来ていたとされる。夏休み中もいじめのことを思い出すなどしていた。
不登校状態になる
2021年8月25日に2学期の始業式があり、生徒は出席した。夏休み中に髪が伸びていたので髪をくくるなどいつもと違う髪型でいたところ、加害生徒に取り囲まれ、「髪型が変、似合ってない、気持ち悪い、気持ち悪いから近づくな」などと罵倒された。生徒は「もうそこで何かが壊れた感じがした」と訴え、翌日から登校できなくなった。
担任は家庭訪問をおこなって改めていじめ被害の詳細を聴き取り、具体的な内容を把握した。加害生徒側への聴き取りをおこなったものの、加害生徒の行為はいじめであり許されないという指導にとどまり、加害生徒ら個々人の動機やいじめの背景については十分に対応できなかったともされる。
また2021年9月には、生徒の保護者からは「いじめを公表してほしい」という要望が学校に寄せられた。しかし学校側は、生徒が7月の時点で「大ごとににしてほしくない」と訴えていたことや、9月の時点では生徒本人の意向を確認できていなかったことで、「公表することで逆に、生徒が登校しにくい状況を作り出しかねない危険性もある」と判断し、学校としては生徒個人の名前を出しての公表などはしない方針を決めた。学校側はその意向を保護者に伝えたが、保護者側は引き続き公表の意向を要望し、わだかまりができたとされる。
学校は2021年9月21日、堺市教育委員会に対して、いじめ事案発生の第一報を入れた。
その後2021年9月下旬に、加害生徒からの謝罪の場が設定されるなどしたものの、生徒本人は「何も解決していないのに、話が先にどんどん進むことがしんどい。」との思いを抱えることになった。
学校側は、不登校状態になった生徒に対して、家庭への電話連絡や補充授業などのフォローをおこなっていたものの、生徒の気持ちに寄り添う支援にはつながらず、生徒は「死にたい」「私が生きている意味がない」などと訴えるなどして、メンタルクリニックを受診するなどした。
保護者は2021年10月28日、学校に対して、第三者委員会を設置しての調査を要望した。
生徒は2022年2月中旬より、再び登校できるようになったという。
第三者委員会
第三者委員会は2023年5月、調査報告書をまとめた。生徒が2021年1学期に加害生徒から受けた発現などの行為は、いずれも、いじめ防止対策推進法上の「いじめ」にあたるものだと認定した。また、いじめと不登校の間に因果関係があることも認定した。
学校側の対応についても不十分だったと指摘し、改善策を提言している。
調査報告書の内容は、生徒側との調整を経て、堺市教育委員会が2023年10月23日に記者会見をおこなって公表した。