福岡県城島町立城島中学校いじめ自殺事件

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福岡県三潴郡城島町(現在は久留米市に編入)の町立城島中学校で1996年1月、3年生の男子生徒がいじめを苦にして自殺した事件。

事件経過

生徒は小学生時代は大分県に住んでいたが、家業の工場の移転にあわせて中学校進学と同時に城島町に引っ越し、城島中学校に入学した。

入学直後から、生徒の大分訛りをからかうようないじめが始まった。いじめは暴力や恐喝にエスカレートした。1年の時には担任教諭(この教諭は3年でも再び担任になった)に相談したが、対策が取られることはなかった。保護者が相談したものの「しばらくすれば変わるでしょう」などと話して放置した。

生徒は1996年1月23日朝、自宅近くで自殺しているのを発見された。同級生の実名をあげ、暴力や恐喝を受けたとする遺書が残されていた。

地域ぐるみの中傷

学校側はいじめを否定した。さらに地域住民は、いじめ自殺の原因については棚に上げ、報道で自分たちが被害を受けているかのような態度を取った。被害者一家が悪いかのような中傷に加えて、町議会議員が「マスコミによる町全体へのいじめ」と公然と質問するなどの異常事態もあった。

被害者の遺族は、いじめ自殺事件で精神的ショックを受けたことで家業の経営が手に付かない状態になった上、地域住民の対応で「この町には住みたくない」ということになり、家業の工場を閉鎖して県外へ転居することを余儀なくされた。

刑事処分

福岡県警は1996年4月11日、いじめ加害者のうち2人を「恐喝に関与した」として福岡家裁久留米支部に送致した。加害者は保護観察処分を受けた。

民事訴訟

遺族は1996年11月12日、城島町と福岡県を相手取り、約9400万円の損害賠償を求めて福岡地裁に民事提訴した。学校側はいじめを否定し、自殺の原因についても「家族の財布から金を持ち出した責任を感じて自殺した」と中傷した。

訴訟審理が進行中の1999年8月、警察が教諭らに参考人聴取をおこなった際、この生徒へのいじめを目撃したとする証言が複数の教諭から出されたとする供述調書の存在が明らかになった。遺族側は証拠申請をおこない、民事訴訟の証拠として認められた。

しかし供述調書を受け、調書で証言した教諭が民事訴訟で証人尋問を受けた際、この教諭は供述調書の内容を否定した。

福岡地裁は2001年12月18日、いじめの存在を認め、また学校側のいじめ対策が不十分だったことも認め、城島町と福岡県に1000万円の損害賠償を 命じる判決を下した。判決では「いじめはなかった」と証言した教師について「ウソを述べてまで責任を回避しようとした」と指摘している。その一方で、いじめの予見可能性を否定した。

遺族は福岡高裁に控訴した。福岡高裁では第1回口頭弁論で和解を打診されたが、遺族側は「いじめの予見可能性を認めてほしい」と訴えて即日結審した。福岡高裁は2002年8月30日、一審判決を支持して控訴を棄却した。

両親は最高裁に上告したが、最高裁は2004年11月30日付で上告を棄却し、一審・二審判決が確定した。

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