大津市立皇子山中学校いじめ自殺事件

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事件関連の派生騒ぎ

加害者やその家族の情報割り出し

事件報道では、一部テレビ局が関連文書を入手してその文書を放映した。文書中の個人名にはマスキングをかけて放送したが、マスク漏れやマスクが不十分な箇所があり、加害生徒の実名が読み取れる状態になっていた。さらに、加害生徒の顔写真とされるものや、加害生徒の家族構成、加害生徒の保護者が経営するとされる会社の名前や所在地などの情報なども割り出される騒ぎになった。

脅迫状などが送付される

事件が大きく報じられた直後の2012年7月9日以降、皇子山中学校・滋賀県庁・大津市役所などに、「加害者や教師はカメラの前で謝罪しろ。謝罪しなければ、学校と教育委員会と警察を爆破する」「学校に爆発物を仕掛けた」「加害者を殺す」「加害者の氏名や調査状況を公表しなければ生徒を無差別に射殺する」などとした脅迫状が次々に郵送される騒ぎも発生した。中には、カッターナイフの刃・包丁・小瓶に入った液体などが同封されたものも複数あったという。消印などから、別々の人物がそれぞれ別の場所から投函したとみられる。

これらの脅迫状事件では、愛知県の60代男性や埼玉県の高校生ら複数の人物が検挙された。

無関係な人が巻き込まれる

ネット上で加害者やその関係者の割り出しが加熱し、全く無関係な人を「加害者の関係者」と一方的に決めつけて中傷し、無関係な人の勤め先などに抗議電話などをかける嫌がらせも相次いだ。

今までに、加害者とされた生徒とたまたま同姓だっただけなどの事情で、無関係であるにもかかわらず「加害者の関係者」と決めつけられて、実名と勤務先などがインターネット上に書き込まれ、勤務先に抗議電話が殺到した事例として、少なくとも3件が明らかになっている。しかしいずれも事実無根であり、実名や勤務先が名指しされる被害にあった人は、加害者とされた生徒とは一切関係ないことが明らかになっている。

滋賀県警は2012年10月までに、無関係の人物を「加害者の親族」呼ばわりする虚偽書き込みに関与したとして東京都の30代男性と兵庫県の30代男性を割り出し、名誉毀損容疑で書類送検した。東京都の男性は不起訴処分、兵庫県の男性は罰金の略式命令を受けた。

澤村教育長が襲撃される

2012年8月15日午前8時頃、大津市役所内の教育長室で、澤村賢次教育長が暴漢からハンマーで頭を殴られて負傷する事件が発生した。市役所は開庁時間外だったが、警備員などは配置されておらず、職員に紛れて構内に入れる状態だったという。また犯行直前の暴漢を目撃した市職員は「不審者とは認識できなかった」としている。

澤村教育長は出勤直後に教育長室に入ったところで、乱入した男に殴られ、目の奥の頭蓋底骨折や眼球打撲などのケガを負った。騒ぎに気づいて駆けつけた教育委員会職員が暴漢を取り押さえ、警察が殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。調べによると被疑者は埼玉県在住の19歳男子大学生で、動機について 「いじめ問題に関し真実を隠していると思い殺してやろうと思った」と供述したという。

澤村教育長は約3週間後の2012年9月4日より職場復帰したのち、2012年12月24日に任期満了で退任した。

被害者への中傷

加害者側の関係者や学校・教育委員会の筋から、DV・虐待など被害生徒の家庭に問題があったことを苦にして自殺したかのような噂が振りまかれた。一部週刊誌報道では、加害者側がそういう主張をおこなったと報じられた。また澤村賢次教育長も具体的な内容には踏み込まなかったものの、自殺の原因を「家庭の事情」かのようににおわせる発言を記者会見の場で公然とおこなった。

定年退職した公務員を名乗るブログ主によって、「被害者の家族が警察に被害届を出して受理拒否されたと聞くが、嘘の被害届を出すことは虚偽告訴にあたる」「被害者の家族がマスコミにリークして騒ぎをたきつけた」と読めるような、被害者や遺族を中傷する内容が記されたブログが発見され、コメント欄に抗議コメントが殺到して炎上する騒ぎになった。このブログ主は、ブログの内容から元警察幹部の可能性があり、さらには加害者の親族や関係者ではないかという噂が流れたが、ブログ主の正体は明らかになっておらず、真偽は不明である。

教育委員会の処分

滋賀県教育委員会は2013年2月26日、いじめ事件の不適切対応を理由に、校長を減給の懲戒処分にした。校長は同日付で依願退職した。

また大津市教育委員会は同日付で、いじめ事件での不適切対応を認め、教頭に文書訓告、当時の2年学年主任の教諭を厳重注意の行政処分とした。不適切言動が指摘された担任教諭については「休職中で本人への調査ができなかった」として、この時点では処分を見送っている。

担任教諭は2013年4月より復職したという。滋賀県教育委員会は2013年5月17日付で、担任教諭を減給処分にした。

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年表

2011年
  • 夏頃 いじめが始まる
  • 10月11日 生徒が自殺
  • 11月2日 大津市教委、いじめがあったことを認める。この時点で公表された内容は一部にとどまり、報道も最小限の事実関係を報じる短文のものにとどまった。
2012年
  • 1月 大津市長選挙で越直美氏が現職を破って当選し、大津市長就任
  • 2月24日 遺族が加害者と大津市を相手取り民事提訴
  • 3月13日 越直美市長が同校の卒業式で「全力でいじめのない社会に取り組む」とあいさつ。
  • 7月4日 このいじめ事件について、大津市教委がいじめ調査の内容を隠蔽していたことが、マスコミで大きく報じられる。
  • 7月10日 越直美市長が記者会見。いじめ事件の全容を知ったのは、マスコミ報道を受けて教育長に事情を聴いた7月9日だとし、遺族との訴訟では和解に転じる方針を示した。
  • 7月11日 いじめ事件について警察が捜査を始める。
  • 7月~ 事件に関連して、加害生徒や保護者の実名割り出しなどがネット上でおこなわれる。中には無関係の人物を犯人呼ばわりするケースも続出。
  • 7月~ いじめ事件に関連し、皇子山中学校や大津市役所などに脅迫が相次ぐ。
  • 8月15日 澤村憲次教育長が大津市役所庁舎内で暴漢に襲われる。
  • 12月27日 滋賀県警、加害生徒のうち2人を暴行容疑で書類送検、残る1人を暴行などの非行事実で児童相談所に通告。
2013年
  • 1月31日 大津市が設置した第三者委員会、調査結果をまとめる。
  • 2月26日 いじめ事件に関連して、滋賀県教委と大津市教委が関係教職員の処分を発表。
  • 5月17日 滋賀県教委、いじめ事件の不適切対応で担任教諭を減給処分。2月の時点では休職中で事情を詳しく聴けなかったとして、担任教諭のみ処分時期が遅れている。
  • 5月25日 大津地検、いじめに関与したとされる同級生2人を、生徒に「死ね」と暴言を浴びせたとする脅迫などの非行事実で大津家裁に送致。
2014年
  • 3月 保護観察処分にされた加害者が、処分不服として抗告していたことが発覚。
2015年
  • 3月 民事訴訟で大津地裁が和解勧告を出したことが判明。3月中に原告側と大津市との和解が成立。加害者との訴訟は継続。
2017年
  • 9月~12月 民事訴訟の口頭弁論で、3回に分けて、加害者とされる同級生やその保護者、担任教諭への尋問が実施される。
2018年
  • 5月8日 民事訴訟、一審大津地裁の最終弁論で結審。同年11月6日に判決予定とした。
  • 10月 大津地裁、判決期日を2019年2月19日に延期。
2019年
  • 2月19日 民事訴訟、一審大津地裁判決。加害者3人のうち2人に対して、計約3700万円の損害賠償を命じる判決。
  • 3月6日 一審で賠償を命じられた加害者のうち1人が、一審判決を不服として大阪高裁に控訴。
  • 3月7日 一審で賠償を命じられたもう一人の加害者も、一審判決を不服として同日付で大阪高裁に控訴。
  • 8月23日 大阪高裁で控訴審の第1回口頭弁論がおこなわれた。加害者の元生徒はいずれも「男子生徒に対しておこなった行為はいじめではない」「自殺との因果関係もない」などとして、一審判決の変更を求めた。
  • 10月30日 大阪高裁で控訴審の第2回口頭弁論がおこなわれ、結審。
  • 11月14日 越直美大津市長、2020年1月の大津市長選挙に不出馬の意向を表明。

2020年

  • 2月27日 二審大阪高裁判決。被害者側の過失相殺を指摘して賠償額を大幅に減らす不当判決。
  • 3月12日 遺族側、大阪高裁判決を不服として最高裁に上告。

2021年

  • 1月21日 最高裁が遺族側の上告を棄却、二審大阪高裁判決が確定。
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