宮崎県立宮崎商業高校の柔道部顧問教諭が、長年にわたって部員に「体罰」・暴力を繰り返したとして、2013年に懲戒免職処分を受けた事件。
事件の経過
顧問教諭・Kはかつては千葉県柏市立柏高校に勤務し、柔道部の顧問をしていた。なお市立柏高校では、柔道部の指導中に「体罰」・暴行事件を起こして停職処分を受け、被害者から訴訟を起こされて損害賠償金を支払った経緯がある。
Kは宮崎県教育委員会が実施したスポーツ特別選考の教員採用試験を受験した。市立柏高校で女子柔道部を全国高校総体3連覇させた実績があることを評価されて採用され、2004年度より宮崎県の高校保健体育科教員として宮崎商業高校に赴任し、柔道部の顧問になった。
しかしKは宮崎商業高校でも「体罰」・暴力を繰り返した。2011年8月には、指導中に部員をたたき鼓膜損傷のケガを負わせた。また2012年9月には別の部員の足をたたいてケガを負わせた。
2012年の暴行では、被害者側が被害届を出し、Kは傷害容疑で書類送検されている。しかし暴行事件については、検察が2014年7月25日付で不起訴処分にした。
柔道部員の保護者らは2012年、日常的に「体罰」・暴行を繰り返していることを理由に、Kの懲戒免職を求める嘆願書を出した。宮崎県教委の調査では、少なくとも2010年以降の暴力・「体罰」を確認した、被害に遭った部員は少なくとも11人いたとしている。
また、宮崎市が生徒らに支給することになっている部活動奨励金を、生徒や保護者が知らない間に申請してKが受け取り生徒側に渡さなかったという、部活動経費上の不正も発覚した。
宮崎県教育委員会は2013年3月29日、常習的な「体罰」や部活動経理上の不正を理由に、K(当時54歳)を懲戒免職処分にした。
懲戒免職への不服申立
しかしKは2013年5月7日付で、懲戒免職を不服とする申立を、宮崎県人事委員会に対しておこなった。指摘されている事実は認めた上で、「選手を強くしたいという気持ちでおこなった指導が『体罰』と受け取られた。処分は県教委の一方的な見方によるもの」などと訴えている。
また2014年までに、同種の趣旨で懲戒免職処分取り消しを求める訴訟を提訴した。一審宮崎地裁、二審福岡高裁宮崎支部(2018年6月29日)とも、元教諭側の請求を棄却した。元教諭の行為は、生徒に身体的苦痛および精神的苦痛を与える悪質な「体罰」であり、また懲戒免職処分は社会通念上著しく妥当性を欠くものとはいえないと結論づけた。