福井県池田中学校生徒自殺事件

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福井県池田町立池田中学校2年だった男子生徒が2017年3月に自殺し、背景に教師からの強い叱責があったとされている問題。

事件の経過

池田中学校2年の男子生徒は2017年3月14日朝、校舎から飛び降りて自殺した。

生徒は当日朝8時頃に登校し、朝学習に取り組んでいた。しかしその直後に姿が見えなくなっていた。午前8時30分頃、校舎下で倒れている生徒が発見され、救急搬送されたが死亡した。校舎3階の窓が開いていて、生徒はそこから飛び降りたとみられている。生徒は、遺書とみられる内容を記したノートを残していた。

調査委員会の報告書

学校・町教委は調査委員会を設置し、事件の原因を調査していた。2017年10月15日に調査委員会の報告書が公表された。

調査の中で、担任の男性教諭(30代)と、副担任の女性臨時講師(30代)がそれぞれ、この生徒に対して強く怒鳴りつけるなどの指導をおこなっていたことが明らかになった。その上で生徒の自殺は、「強い叱責で追い詰められたことが原因」だと結論づけた。

同級生に対して実施したアンケートでは、この生徒が「死にたいと訴えていた」などの書き込みがあった。また生徒は2年進級後、欠席や保健室利用の回数が増加し、何度か登校をしぶっていたこともあったという。

担任の行為

この生徒は2016年度後期、生徒会役員に就任した。2016年10月には「マラソン大会の準備が遅れた」として、担任は校門前でこの生徒を大声で怒鳴りつけた。また2017年1月頃には、「生徒会役員を辞めてもいいよ」などと言った。2017年2月上旬にも、生徒会行事で忘れ物があったとして生徒を怒鳴りつけている。

担任の行為は他の生徒の前や職員室でもおこなわれていた。目撃した他の生徒は「目撃するだけでも怖かった」「言い方がひどいと感じた」などと話していたという。

同僚教員が担任教諭の行為を見かねて「そんな強い口調で言わなければならないのか」「生徒に伝わっていない」と諫めても、担任教諭は「それだけしないとわからない」などと返答したとされている。「指導方法を考えなければいけない」というアドバイスに対しても、担任教諭は「手加減している」と答えたという。

副担任の行為

副担任の女性講師も2016年5月頃、この生徒が宿題を忘れたとして生徒を執拗に問い詰めた。生徒が理由を説明しても「言い訳だとして聞いてくれない」という状況になったとして、生徒は保護者に不満を訴えていた。

また2016年11月、2017年2月にもそれぞれ、宿題の件で叱責している。

副担任の講師は、生徒が小学校6年生だった頃、生徒の通っていた小学校で家庭科の臨時講師として勤務し、小学生時代の生徒の授業を受け持っていた。当時、ミシンがけの課題で講師がこの生徒に居残りをさせたことで、生徒が帰宅のバスに乗り遅れたことがあったという。生徒は「あの教師は嫌だ」と漏らしていた。

教職員のその後

担任教諭は事件直後の2017年4月より、町外の中学校へ異動した。2018年度には学校現場を離れ、福井県の関連施設で勤務していると報じられた。

副担任講師は2017年4月からも池田中学校に引き続き勤務したものの、事件のあった学年(新3年)の担当から外れ、1年の副担任を受け持つことになった。報告書が発表された2017年10月以降、体調不良として出勤を見合わせた。

校長は、報告書が発表された直後の2017年10月に辞表を提出し、辞職した。

副担任、別の生徒も不登校に追い込む

副担任の講師は2017年度、担当していた1年のクラスでも、女子生徒に対して強い叱責を繰り返し不登校に追い込んだことが指摘された。

刑事告発

福井市の市民団体は2017年12月、担任・副担任・校長の3人について、業務上過失致死容疑での告発状を提出した。担任と副担任については、「叱責を繰り返したことで自殺に追い込んだ」「自殺可能性は予見できた」とした。また校長については「当該教員の担任を外すなどの対応策を怠った過失がある」と指摘した。

福井地検は2019年2月27日、いずれも不起訴処分にした。

告発した市民団体は2019年3月1日、福井地検の不起訴処分を不服として、福井検察審査会に審査を申し立てた。

福井検察審査会は2020年1月までに、担任について「不起訴不当」を議決した。一方て副担任・校長については不起訴相当とした。

福井地検は再捜査をおこなったが、2021年3月29日付で担任を再び不起訴処分とした。

国家賠償請求、民事訴訟

遺族側は2019年12月、池田町と福井県に対し、損害賠償と、事実関係の詳細な解明と具体的な再発防止策の策定を求め、国家賠償請求の文書を送付した。賠償金の請求金額は非公表としている。

事故から3年を目前とした2020年3月12日、文書送付の事実関係を公表した。遺族側代理人弁護士は、訴訟を提訴するかどうかについては「今後の町・県との交渉次第になる」とする見解を示していた。

しかし交渉に対して町や県は、「自殺の原因の4割は町や県に原因はない」として、遺族側が求めた損害賠償額について、大幅に減らすとした回答をおこなった。また具体的な再発防止策について遺族側が問い合わせても「きちんとやっている」など抽象的な回答にとどまり、再発防止策をまとめた資料などの提示はなかったとされる。

遺族は2020年6月15日、池田町と福井県を相手取り、約5400万円の損害賠償を求めて福井地裁に提訴した。

福井地裁で2022年3月25日、担任と副担任の行為を不適切だと認め、町と県は生徒の自殺を深刻に受け止めて再発防止を図ること、町が遺族側に約5000万円を支払うなどの内容で、和解が成立した。

教員らへの処分

訴訟の経過を受け、福井県教育委員会は2022年4月22日付で、当時の担任教諭を停職1ヶ月の懲戒処分にした。また当時の教頭についても、減給10分の1・3ヶ月の懲戒処分とした。校長と副担任教諭については、すでに退職しているとして処分を見送っている。

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