岩手県立不来方高校バレーボール部員自殺事件

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岩手県矢巾町の岩手県立不来方高校のバレーボール部員だった男子生徒が2018年7月に自殺し、背景に顧問教諭からの暴言やパワハラがあったと指摘された問題。

事件の経過

同校3年の男子生徒は2018年7月3日、自宅で自殺した。

数日後に遺書が見つかった。遺書には、バレーボール部の顧問教諭・S(41)から「ミスをしたらいちばん怒られ、必要ない、使えないと言われました」などととして、「バレーボールも生きることも嫌になりました」などと記されていた。

保護者は「バレーボール部顧問教諭の指導が原因ではないか」と疑って学校に連絡した。

岩手県教委が部員や教員を対象に調査をおこなったところ、顧問教諭がこの生徒に対して、暴言や人格否定の言動を繰り返していたと指摘された。

顧問教諭は2018年2月頃から、部活動の主力選手だったこの生徒に対して、「おまえのせいで(対外試合に)負けた」「部活やめろ」「おまえはばかか」「脳みそ入っていないのか」「代表に選ばれているのにどうしてできないんだ」「背はいちばんでかいのに、プレーはいちばん下手だな」など、人格否定の暴言を日常的におこなっていた。また生徒が助言を求めても無視するなど、生徒を心理的に追い込む行為もあったとされる。

遺族は、第三者委員会を設置しての詳細な調査を求めた。

また生徒の父親は2018年10月19日に文部科学省を訪問し、文科省・スポーツ庁の担当者と面会した。「暴力・暴言によるスポーツ指導をなくすよう具体策を講じてほしい。実態調査をおこなってほしい」とする内容の、柴山昌彦文部科学大臣および鈴木大地スポーツ庁長官宛の要請書を手渡した。

刑事告訴

遺族は2018年11月16日、生徒の顔にボールを投げつける暴力行為をおこなったなどとして、顧問教諭を刑事告訴した。

岩手県警は2019年3月8日、顧問教諭を暴行容疑で書類送検した。

しかし盛岡地検は2020年4月9日付で「諸般の事情を考慮した」として、顧問教諭を不起訴処分にした。

第三者委員会

第三者委員会では生徒の自殺についての調査がおこなわれた。2020年7月22日、第三者委員会は「顧問の叱責などの対応によって生徒を追い詰め、絶望感を与えたことが自殺につながった」とする調査結果をまとめ、岩手県教育委員会に提出した。

教諭への処分

岩手県教育委員会は2022年6月24日付で、「少なくとも2015年度以降、自殺した生徒を含む複数の部員に対して不適切な言動を繰り返した」として、当時の顧問教諭(2022年度時点では岩手県立総合教育センター研修指導主事)を懲戒免職処分にした。

顧問教諭は以前にも部活動指導で事件を起こす

当該顧問教諭・Sは、岩手県立盛岡第一高校(盛岡市)に勤務していた2008年にも、バレーボール部で部員の生徒に暴力や暴言を繰り返し、当時の生徒から訴訟を起こされている。前任校での訴訟では、顧問教諭の暴力行為が認められる判決が確定している。

岩手県教育委員会は2023年3月24日、「県教委担当者として、顧問教諭の前任校での暴力に関する情報を把握していたにもかかわらず、不来方高校側への情報提供を怠っていた」として、2016年・17年当時の県教委担当者2人(2023年3月時点ではそれぞれ、中部教育事務所管内の県立高校教諭と、盛岡教育事務所管内の県立高校校長)を、それぞれ戒告処分にした。

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