「大阪維新の会」が大阪府・大阪市でしてきたこと。教育分野をはじめ、子育て・学術・文化などの分野でも深刻な影響を及ぼしています。
※以下、【府】は大阪府政での政策、【市】は大阪市政での政策を示す。【府・市】は府政・大阪市政両方に係る政策を示す。
高等学校
府立高校統廃合
大阪府立学校条例(いわゆる教育基本条例)により、「3年連続定員割れの府立高校は統廃合を検討」と明記されました。
これに基づき、維新市政のもとで府立高校の統廃合が進められました。池田北高校、咲洲高校、西淀川高校、大正高校、長野北高校、勝山高校などが対象になりました。
対象となった学校では統廃合反対の声も上がったものの、維新府政はその声を無視しました。
松井一郎大阪府知事は2015年9月3日、西淀川高校について、「魅力のない学校で定員にも満たず、その学校に通うことは生徒にとって自身の成長につながらない」などと一方的な発言をおこない、生徒や卒業生・教職員・保護者・府民から大きな批判が出ました。
学校図書館への無理解
府立高校の専任図書館司書制度廃止
【府】橋下徹府政時代の2009年、府立高校に配置されていた専任図書館司書制度を廃止しました。
この影響で学校図書館体制の縮小を余儀なくされ、校務分掌で図書館担当になった教職員を中心に現場での努力が重ねられたものの限界があり、2割の学校で開館できなくなったと、2014年9月に報道されました。
学校図書館法の改正により、2015年度以降は学校図書館司書の配置が努力義務になりました。このことを受け、大阪府立高校での学校図書館体制の充実が必要だとする指摘がされ、また2009年当時の橋下府政の「学校図書館専任司書廃止」の施策についても疑念が出されました。
橋下徹元大阪府知事(2014年時点では大阪市長に転身)は報道を受けて、「図書館ショシ(司書の言い間違い?会見では終始、司書を“ショシ”と表現)がいなくても、8割の高校では学校図書館をちゃんと運営している」「高校にもなってショシを置くのは疑問。ショシよりも英語教育などに力を入れるべき」「高校にもなれば、図書館の鍵を開けておいて、生徒に本を管理させればいいんですよ」などと発言し、当時の措置を正当化しました。
国政では学校図書館司書増員を敵視
【国政】国会で2019年、2020年を「学校図書館年」と位置づけ、学校司書を増やすなどを求める決議を採択しようと、国会議員が超党派での折衝を重ねていました。他会派は賛同したものの、維新のみが唯一反対し、提出断念に追い込まれてしまいました。
維新は「学校司書は不要。AIに置き換わる」「公務員は無駄」「人を増やしても効果はない」などとする主張をおこないました。
大阪市立高校・特別支援学校全校を府立移管
【府・市】大阪維新の会の掲げる大阪市の廃止・解体、いわゆる「大阪都構想」に関連して、市立の高校や特別支援学校についても「二重行政」「一元化」と難癖を付けられ、府立移管構想が打ち出されました。
特別支援学校は、2016年度に府立移管しました。
特別支援教育・障害児教育については、大阪市の方が学校設置の歴史は古く、また市立盲学校・聾学校や、全国初の知的障がい児養護学校「思斉学校」(現在の思斉支援学校)、またそれらにつながる研究実践など、全国的にも教育実践をリードしてきた部分がありました。
特別支援学校では府立移管後、教育水準が府の基準にあわせられました。そのため旧大阪市立学校では、市独自に上乗せしていた部分がなくなり、教職員配置が減った、教材費が自費負担になったなどの教育条件低下が見られるようになりました。
高校については、橋下市政時代に一度府立移管構想が打ち出されたものの、途中で立ち消えとなっていました。
2019年になり再び、大阪市立高校全校を府立に移管する計画が浮上しました。そして2022年度には、市立高校22校を大阪府立高校として移管しました。(※22校のうち1校については、かねてから大阪市が開設を準備し、移管と同時に府立高校として開校)
大阪市立の高校では、職業科系・普通科系ともに個性化・特色化を図ってきたことで、平均的な普通科教育を中心におこなってきた府立高校と差別化を図ってきた歴史があります。
市立高校の校地・校舎を無償譲渡する方針も、大阪市の財産をただで渡すことになりおかしい。
私立高校無償化とその弊害
【府】私立高校を府独自で無償化。奨学の理念自体は一概には否定できないし、経済的負担の軽減は何らかの形でむしろ推進していくべきものではあります。
しかし大阪府の制度設計においては公立高校潰しと一体で、公教育の縮小策となっているのではないかと疑問が指摘されています。
私立高校の「無償化」は、「授業料」のみで、また一定の所得基準もあります。「無償化」として私立高校に進学しても、実際には制服や学用品、修学旅行などの積立金などの諸経費が、公立高校よりも相当高額になると指摘されています。
維新府政のもとで廃止を強行し2019年3月に閉校した西淀川高校では、一度私立高校に進学したものの、私学での諸経費が支払えずに同校へ転入した生徒がいたことが指摘されました。(朝日新聞2019年4月6日『大阪府公立校「切磋琢磨」の末 3人の校長が振り返る』)
桜宮高校事件
【市】2012年12月に発生し、2013年1月に事案が公表された桜宮高校「体罰」自殺事件を口実に、橋下徹市長が主導し「体育科廃止」など強権的な施策を打ち出して、不要な混乱を生みました。
橋下は「学校関係者というだけで全校生徒も教職員も共犯」扱いで「十字架を背負うべき」などと発言するなどしました。
サンフランシスコ市への高校生派遣事業を中止
【市】「従軍慰安婦像」問題の波及で、大阪市の高校生派遣事業を中止。
大阪市では2017年、「従軍慰安婦像」設置をめぐり、米国サンフランシスコ市との姉妹都市関係を解消する動きが、吉村洋文大阪市長や大阪市政与党の維新大阪市議団の主導でおこなわれました。
これについては他の市会会派や市民から、「個人の一方的な歴史観を持ち込むべきではない」(共産)、「像の設置には懸念しているが、国・外交レベルで解決すべき課題」(自民・公明)という出発点・立場の違いこそあったものの、「従軍慰安婦像と都市間の友好とは別問題。従軍慰安婦像を理由に姉妹都市関係を解消するのは筋違い」とする強い批判が起きました。しかし吉村市長が姉妹都市関係解消を通告しました。
大阪市とサンフランシスコ市との間では、吉村市長が2016年に発案し、大阪市の高校生代表5人をサンフランシスコ市に派遣する事業が具体化していました。2018年3月に派遣する予定でしたが、「従軍慰安婦像」問題勃発を受け、吉村市長の判断で2017年11月に派遣事業中止を決め、2017年12月に予定されていた参加者選考も直前に急きょ中止されました。