「大阪維新の会」が大阪府・大阪市でしてきたこと。教育分野をはじめ、子育て・学術・文化などの分野でも深刻な影響を及ぼしています。
※以下、【府】は大阪府政での政策、【市】は大阪市政での政策を示す。【府・市】は府政・大阪市政両方に係る政策を示す。
教育行政・教育委員会
「教育基本条例」による学校現場締め付け強化
【府・市】「教育基本条例」(府・大阪市とも複数の条例に分けた上で、2012年成立)による学校現場の締め付け強化。
この影響で、大阪府や大阪市の教職員志願者が他県に流出する、教員養成課程担当の大学教員が教え子に対して大阪府・大阪市の受験を避けるように勧める、現職教員も条件のある人は他県や私学に移ったり早期退職などする、などの状況が加速し、教員不足が深刻になりました。
公募校長制度
【府】橋下徹大阪府知事特別秘書・河崎大樹氏(のち、大阪維新の会大阪市議を経て維新大阪府議)が2009年、府立高校の公募校長について「橋下の友人(中原徹)が応募する」と府教委に伝え、口利きと疑われるとして厳重注意を受ける。中原徹氏は2010年度に公募校長として採用。
【府】府立高校公募校長・中原徹氏(のち大阪府教育長)、2012年3月の卒業式で、教職員が君が代を斉唱しているかどうかの「口元チェック」。
- エリート教育ができないことなどが不満として3ヶ月で辞職(小学校長)
- 保護者へのセクハラ(小学校長)
- 公金の不適切管理、応募時の経歴詐称(小学校長)
- 教職員を怒鳴りつけるなどの言動、生徒への不適切言動(中学校長)
- 「面談」として教職員に対して、業務上の配慮を要する事項ではないにもかかわらず、私生活に不要に踏み込む質問を繰り返す(中学校長)
【市】2013年度に採用された市立中学校公募校長について、「修学旅行引率中の川下り体験の際、ふざけて生徒を川に突き落とす」「『授業が面白くなかったら1000円返せ、と先生に言え』など生徒への不適切発言」「授業記録などの必要もないのに特定の生徒の写真を大量に撮影し、当該生徒を不安がらせる」「校務で意見が対立した教頭を土下座させたパワハラ疑惑。教頭は事件後体調を崩して休職」などの問題が指摘された。当該校の保護者・関係者が校長更迭を求める署名運動にまで発展した。大阪市教育委員会事務局は、土下座をパワハラとまでは認定しなかったものの、署名活動や、定年退職した前校長に校務補佐を依頼するなどの異常事態になっていたことなどを踏まえて、2014年3月に更迭やむなしという判断を出した。
しかし大森不二雄教育委員長が、事務局の判断をひっくり返して、教育委員会会議で続投を決定する。当該校長のトラブルについては、「当該校では教職員の意向を反映して校内人事を作っていた。校長の人事権を侵害するもので違法」(※実際には違法とはいえず、教員への管理統制を強めたい勢力が一方的に難癖を付けているだけ)と無関係なことを持ち出した上、「校長はその慣習を拒否したから、教職員から逆恨みされるような形で嫌われて陥れられた」とねじ曲げる。校長は一度続投したものの、直後に保護者懇親会での「トラブル」があったとする信用失墜行為が指摘され、2014年7月に減給処分となり、自主退職。
【市】2019年5月、大阪市立小学校の公募校長が、「改元に伴う全校集会」として神話を一面的に扱った講話をおこない、極右的な歌を歌い「愛国の歌姫」とあだ名される歌手をサプライズゲストとして招いてのミニコンサートをしたことや、歌手から「皇紀2679」と記されたサイン色紙を贈られたことを学校ブログで紹介するなどして、疑問が呈される。当該校長は維新府政下で大阪府の公募校長として大東市立小学校に勤務したたのち、府での任期満了に伴って2015年に大阪市の公募校長として採用される。当該校長は、極右的な政治活動家(後年に参政党を結成し参議院議員になった神谷宗幣氏)が主宰するyoutube動画でインタビューを受け、極右的な視点からの「教育改革」を訴えていたことも指摘された。
パワハラ
【府】中原徹大阪府教育長、教育委員会事務局職員に対して、知事の看板を背景にして威圧的な言動を繰り返すなどのパワハラで、2015年3月に辞任。
教職員締め付け
【市】主務教諭制度の導入を2018年度より検討。主務教諭の職階を設け、37歳までに合格しない場合にはそれ以降37歳水準の給与に据え置く。
【市】吉村洋文大阪市長、全国学力テストの結果が低迷したとして、各学校に数値目標を立てさせ教職員評価をおこなう方針を検討(2018年8月)。その後、全国学力テストを使用しての評価こそ断念したものの、小学校の「学力経年調査」および中学校の「大阪府チャレンジテスト」での成績の伸び具合により小中学校校長の人事評価をおこなう方針を打ち出す(2019年1月)。
大阪府北部地震
【市】2018年6月の大阪府北部地震で、ツイッターで吉村洋文大阪市長の個人アカウントから「全市の市立学校が一斉に休校」とする不適切な情報発信をおこなって混乱を招く。
コロナ禍、新型コロナウイルス問題
【市】2020年2月27日、安倍首相の「新型コロナウイルスによる全国一斉休校」発表に先立つ数時間前、大阪市では市役所主導で独自に「一斉休校」を決める。学校や教育委員会の頭越しでおこなわれたため学校現場が混乱し、情報収集と教育計画組み替え・保護者向け連絡の段取りなどの対応に追われ、泊まり込む形になった校長もいたなどの弊害も出た。
【市】大阪市では大半の市立小学校と一部中学校で、感染対策などを十分にとった上で、2020年4月7日に入学式をおこなう予定になっていた(大半の中学校や一部小学校では4月6日以前に実施)。数日前から国で「緊急事態宣言発令の可能性」が俎上に上がったことで、大阪市教育委員会としては4月7日の入学式について、「当日朝7時の時点で発令されていなかった場合は予定通り実施、発令されていた場合は中止」という方向で準備を進めていた。しかし2020年4月6日の夜になり、松井一郎市長が市教委方針を独断でひっくり返し、「首相が緊急事態宣言発令の方針を固めたと報じられたことで、出されたものとみなす」という解釈を押しつけ、入学式を中止に追い込んだ。このため学校現場や新入生保護者は混乱し、教職員が朝一番で出勤して初めて事情を把握し新入生への電話連絡に追われた、新入生と保護者が事情を知らずに入学式会場に来て呆然とするなどの状況が少なからず発生した。
【市】2021年4月25日に出された3度目の「緊急事態宣言」では、松井一郎市長が教育委員会の頭越しに「発令された場合は市立小中学校での原則オンライン授業」を打ち出す。大阪市教委は全面切り替えは困難と判断し、「一部時間のみオンライン、その後登校して対面指導と給食」という1日の流れの標準モデルを示した上で、学校の状況によっては日程を組み替えることもできるとした「一部オンライン」形式での実施を決定し、発令後初の授業日となる4月26日より適用した。しかし実際は、市の回線ネットワーク容量が決定的に不足しオンライン授業実施時間は地域ごとの割り当てなどとなり、また現場での習熟状況も相まってほとんどオンライン授業ができずプリント学習などでしのぐ状況となった。一部学校では困難と判断して、短縮授業の形式で通常の授業に切り替えたところも。またオンライン授業が授業時数に算入されず不足分の授業をおこなう必要が生じたことも判明。緊急事態宣言解除を待たずに5月24日より通常授業を再開。
【市】オンライン授業で生じた混乱の実情を踏まえ、また学力保障・定着の問題を中心に大阪市での学校教育全般について改善を提言する文書を2021年5月17日付で市長宛に送付した市立小学校校長に対し、教育委員会が「職員基本条例違反の疑いがある」などと難癖を付けて処分を検討していると報じられる。大阪市会委員会では2021年5月20日、維新市議が校長の文書を問題視して攻撃する質疑をおこない、市教委事務局も問題視して調査していると答弁。また松井一郎大阪市長も「意見をあげること自体はかまわない」とは言及したものの、「組織として決定した方針に従わないならやめてもらってかまわない」などと攻撃。大阪市教委は2021年8月20日付で、校長の見解を「他校の状況等を斟酌することなく、独自の意見に基づき(中略)教育委員会の対応に懸念を生じさせた」と断じた上で、「提言書の内容を事前に知人らに閲覧させてインターネット上に流した」などとして、当該校長を文書訓告処分。